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G-SHOCK 5周年間隔で発表される5000系のスペシャルモデル。

5周年間隔で製造される、“初号機”ことDW-5000Cを想起させるアニバーサリーモデルだ。リクリスタライズドシリーズ(RECRYSTALLIZED SERIES)と名付けられた今作は、35周年に発表されたGMW-B5000シリーズをさらに進化させたフルメタルモデル2本を含む、全3型で展開。G-SHOCKの誕生月である来月、4月21日(金)に発売を予定している。

左から、DW-5040PG、GMW-B5000PS、GMW-B5000PG。
 リクリスタライズドシリーズでは、ベースとなるSS材に複数の加工を施している。まずは、数百度もの高温で熱処理を加えることによる再結晶化処理。これにより、滑らかだった素材の表面に不規則に破片を散りばめたような結晶模様が浮かび上がる。さらに、そこへ炭素ガスを浸透させる深層硬化処理を行うことで、素材の外側に硬化層を創出。この技術は通常、産業用マシンや車のギア、およびシャフトなど強度を求められる内部パーツに用いられるものだ。そして、最後にシルバーパーツにはTIC、ゴールドパーツにはIPの表面処理をオン。最終的に今作では、元のSS素材の3倍ほどになる表面硬度を実現したという。見た目上の質感はざらついているが、実際にはスムースで滑らかな質感が楽しめる。

シルバー、ゴールドモデルのベゼルとストラップ。それぞれ、左から順に再結晶化処理に深層硬化処理、TIC/IP加工がかけられている。
 再結晶化処理によるテクスチャの恩恵を分かりやすく受けているGMW-B5000PS、GMW-B5000PGに対し、DW-5040PGではバックルと遊環、ケースバック(ブラックIP)にのみ同加工を使用した。加えて、35周年モデル(DW-5035D-1BJR)まで樹脂(レジン)製であったケースとストラップは、直近でプロトレックやG-SQUADでも採用実績があるバイオマスプラスチック製に変更がなされている。また、DW-5040PGのみの仕様として、あいだにメッシュを挟み込んだゴールド液晶を搭載。液晶周りのレンガパターンもフルメタルモデルと比較して初号機(DW-5000C)に近しいものとなっており、PROJECT TEAM "Tough”のロゴと合わせて特別感を演出している。

左下(40分位置)のボタンに刻まれたスターマークは、3型共通のディテールだ。

ケースとストラップはバイオマスプラスチック製。
 サイズはDW-5040PGが48.9×42.8×13.8mm、フルメタルモデル2型が49.3×43.2×13.0mmと、DW-5000Cに近しい数値をキープ。価格はDW-5040PGが3万8500円、メタルモデル2型が12万1000円(すべて税込)となっている。

ファースト・インプレッション
 リクリスタライズドシリーズで施されたメタルパーツへの加工について。今回、僕たちはその工程について詳細をうかがう機会に恵まれた。SSの再結晶化処理に、深層硬化処理。テキストで書くと20文字にも満たない内容をクリアして生産ラインに乗せるために、カシオは足かけ3年の開発期間を必要としたのだ。聞けば、その大半が微調整に次ぐ微調整であった。

 実は以前から、ほかのモデルで再結晶化処理は行われていた。例えば、2022年に発売された通称“勝色”モデルもそれにあたる。このときは素材はチタンで、ベゼル部分のみに同技術が使用されていた。しかし、開発チームによると、熱処理による結晶化の条件はチタンと比較してSSのほうが格段に難しかったという。加えて、チタンで実現できていたものが、熱処理の温度から、使用する治具にいたるまで何から何まで違ってくる。今回のシリーズのために、カシオは大量生産に備えた専用の治具をいちから開発する必要があった。

再結晶化による模様の出方は、1本1本異なる。
 そして、当たり前のことだが、製品化にあたっては再結晶化した粒子のサイズは全パーツで揃っていることが望ましい。ベゼル、ケース、バックルに加え、微妙にサイズが異なるメタルブレスのコマひとつひとつまで、開発チームは個別に加工条件の検証を繰り返してきた。こうして書いているだけでも気が遠くなってくるが……、カシオは40周年の4月に間に合わせるべく、地道な開発を続けたのだ。シンプルに、敬意を示したい。

 元々は樹脂で製造されていたG-SHOCKの複雑な形状をメタルで表現する。その無謀さは多くの人が繰り返し語ってきたところなので、今回は割愛する。しかし、リクリスタライズドシリーズにかけられたのは、そこから+αもβもγもするような手間だ。GMW-B5000D-1JF(シルバー)が6万6000円(税込)なのに、今回のフルメタルモデルはその倍近くもするのか、と僕も最初は思った。だが、上記の話を聞いたうえで改めて見ると、割安ささえ感じてしまう。そして、初号機のルックスでこの質感を手にできるのは(おそらく)今回のみだ。モノトーンを基調としたコンサバティブな着こなしを好む僕は十中八九、ネガ液晶のシルバーモデルを手にするべく4月は奮闘していると思う。


 本コレクションにおいて、輝かしいPROJECT TEAM ”Tough”の刻印はDW-5040PGにのみ許された。ゴールド液晶を含めてデザイン的には当然でもあり、オメガ スピードマスターのごとくオリジナルに敬意を払ってブランディングを徹底するさまには好感が持てる。発売を迎えるまで確かなことは言えないが、周年の5000系を心待ちにしていたファンを中心として、DW-5040PGは瞬殺となるはずだ。

最もファーストモデルに近いDW-5040PGにのみ、PROJECT TEAM "Tough”のロゴを使用。
 だが、僕はそのフルメタルモデルにこそ価値を見出したい。2018年のG-SHOCKのフルメタル化は、当時まだファッションメディアに在籍していた僕にとってもセンセーショナルなものであった(会社のあった恵比寿界隈では、男女の別を問わず感度が高い人々がこぞって着用していた!)。今回はカシオ側もそこまで声高ではないものの、技術開発の面で着実な進化を遂げている。実物の質感は、今記事でアップした画像とは正直大きく異なる。皆さんが今モデルを実際に手に取り、その質感の高さに驚く顔が、今から楽しみである。

基本情報
ブランド: G-SHOCK
モデル名: リクリスタライズドシリーズ(RECRYSTALLIZED SERIES)
型番: DW-5040PG(ブラック)、GMW-B5000PS(シルバー)、GMW-B5000PG(ゴールド)

直径: 48.9×42.8mm(DW-5040PG)、49.3×43.2mm(GMW-B5000PS、GMW-B5000PG)
厚さ: 13.8mm(DW-5040PG)、13mm(GMW-B5000PS、GMW-B5000PG)
ケース素材: バイオマスプラスチック(DW-5040PG)、ステンレススティール(GMW-B5000PS、GMW-B5000PG)
文字盤色: ブラック
インデックス: アプライド
夜光: あり、LEDライト
防水性能: 20気圧
ストラップ/ブレスレット:バイオマスプラスチック(DW-5040PG)、樹脂モデルのディンプルデザインを用いた、ステンレススティールブレスレット(GMW-B5000PS、GMW-B5000PG)

ムーブメント情報
キャリバー: 電池式クォーツ(DW-5040PG)、タフソーラー クォーツ(GMW-B5000PS、GMW-B5000PG)
機能: フルオートカレンダー、12/24時間制表示切替、ELバックライト(残照機能付き)、報音フラッシュ機能(アラーム/時報/タイマー連動発光)以上DW-5040PG、●アプリ「CASIO WATCHES」連携/自動時刻修正、簡単時計設定、ワールドタイム約300都市+オリジナルポイント、タイム&プレイス、リマインダー、携帯電話探索●バッテリー充電警告機能、パワーセービング機能、フルオートカレンダー、12/24時間制表示切替、操作音ON/OFF切替機能、日付表示(月/日表示入替)、曜日表示(英・西・仏・独・伊・露の6ヵ国語切替)、LEDバックライト(フルオートライト、スーパーイルミネーター、フェードイン・フェードアウト、残照機能、残照時間切替:2秒/4秒)以上GMW-B5000PS、GMW-B5000PG
パワーリザーブ: 約2年(DW-5040PG)、フル充電時からソーラー発電無しの状態で機能使用の場合 約10ヵ月、パワーセービング状態の場合 約22ヵ月(GMW-B5000PS、GMW-B5000PG)
追加情報:再生紙、再生プラスチックを使用したスペシャルボックス(全モデル共通)、アプリとのBluetooth連携(GMW-B5000PS、GMW-B5000PGのみ)

GW-5040PG用スペシャルボックス。

GMW-B5000PS、GMW-B5000PG用スペシャルボックス。

価格 & 発売時期
価格: DW-5040PG 3万8500円(税込)、GMW-B5000PS、GMW-B5000PG 12万1000円(税込)

オメガ「プラネットオーシャン」第4世代を発表~

新たなプラネットオーシャンの誕生

オメガは「プラネットオーシャン」第4世代を発表。コレクションを全体的に刷新し、3種類のウォッチヘッドと、それぞれに組み合わせ可能なブレスレットやストラップを備えた、全7モデルの新作が登場します。

 

プラネットオーシャンの進化
初代プラネットオーシャンの登場からちょうど20年。オメガの時計職人たちは、この象徴的なコレクションに再び立ち返り、現代にふさわしい全面的な刷新を施しました。
第4世代となる今回のモデルでは、ケースとブレスレットの構造に目を引く変化が加えられ、外観のデザインも一新されました。さらに、技術面でもアップデートが施され、性能と品質は最高水準に引き上げられています。

 

一方でプラネットオーシャン本来の魅力は失われていません。オメガと”オーシャン”との歴史的繋がりというDNAを受け継ぎ、ダイバーズウォッチのアイコンとなった数々の特徴的な要素も健在です。
今回の新章は、オメガのダイビングの歴史を象徴するオレンジカラーを含む、7種類の新しいコーアクシャル マスター クロノメーターモデルの発表とともに幕を開けます。

 関連商品:https://www.yokowatch.com/Omega-Watch.html

オレンジモデル– ダイアルには、マットオレンジのアラビア数字がニス仕上げで施され、新しいオレンジセラミックベゼル(ZrO2)リングには、ホワイトのハイブリッドセラミックで施されたダイビングスケールが。 ステンレススティール製ブレスレット、ブラックラバーストラップもしくは、オレンジラバーストラップバリエーション。

 

ブルーモデル– ダイアルには、マットホワイトのアラビア数字がニス仕上げで施され、ブルーセラミックベゼル(ZrO2)リングにはホワイトエナメルのダイビングスケールが。ステンレススティール製ブレスレットまたはブラックラバーストラップのバリエーション。

 

ブラックモデル– ダイアルには、ロジウム仕上げのアラビア数字が配され、ブラックセラミックベゼル(ZrO2)リングにはホワイトエナメルのダイビングスケールが。ステンレスティール製ブレスレットまたはブラックラバーストラップのバリエーション。

 

パイオニアとしての歴史
初代「シーマスター プラネットオーシャン」が誕生したのは2005年。
それから20年にわたり、このコレクションはラグジュアリー ダイバーズウォッチの象徴として、スタイルと機能性の完璧なバランスを体現し、進化するアートとパイオニア精神を示し続けてきました。


プラネットオーシャン誕生前 1932
オメガのダイビングにおける伝統は、1932年に発表された“マリーン”から始まりました。世界初の民間ダイバー向け腕時計として知られる“マリーン”は、オメガの水中での伝説の幕開けとなり、1950年代、60年代、70年代へと続いていきます。
その間に登場した「シーマスター300」、「シーマスター1000」、「プロプロフ」などの革新的なモデルは、いずれも深海での技術革新と信頼性において高く評価されました。

 

マリーンの広告(1937年)

1990年代もオメガは、ダイバーズウォッチの限界に挑み続け、「シーマスター ダイバー300M」を発表します。このモデルは、今なおブランドを代表するコレクションのひとつとして愛されています。新たなモデルを生み出すた
びに、オメガはダイビングウォッチの“マスター”としての評価を高め、世代を超えた海洋探検家、開拓者、科学者たちの信頼を獲得してきました。

左から、オメガ シーマスター(1932)、マリーン(1936)


インスピレーション  S I N C E 1957
初代プラネットオーシャンは、1950年代後半から1960年代初頭の「シーマスター300」にインスピレーションを得て誕生しました。



上からシーマスター(1963)とシーマスター広告(1965)

これにより、オメガの特徴であるダイバーズウォッチのDNAを2005年のデザインの中心に残すことができました。視認性の高いブラックダイアル、15分ごとのアラビア数字、アロー針、そしてインナーリングを備えたダイビングスケールベゼルなど、オメガならではの特徴がいかされています。


オメガ シーマスター(1976)


オメガ オートマチック シーマスター(1978)


THE 1st GENERAT ION  2005
深海での卓越性
プラネットオーシャンは、オメガのダイバーズウォッチの歴史において、もうひとつの重要な節目となりました。最大600mの深海に対応する設計は、「シーマスター ダイバー 300M」の2倍の防水性能を誇り、過酷な水中探査にも応える革新性を備えています。

リキッドメタルTMの革新
2009年、スイス製腕時計として初めてリキッドメタル™が採用されました。ブラックセラミックベゼルのダイビングスケールに使用されたこの技術は、美しさに加え、優れた耐傷性と長期的な安定性をもたらしました。長年にわたる試行錯誤の末に実現したこの革新的なアップデートは、ケースのデザインの新時代を告げるものでした。


リキッドメタル


THE 2nd GENERAT ION  2011
2011年には、プラネットオーシャン第2世代が登場します。セラミックベゼル、光沢のあるダイアル、サファイアクリスタルケースバック、そしてキャリバー8500など、注目すべきアップデートが続々と加えられました。キャリバー8500自体数年前から製造されていましたが、2011年のプラネットオーシャンに搭載されたものには、革新的なシリコン製Si14ヒゲゼンマイが採用され、耐磁性が向上しました。


オレンジセラミックの実現  2014
セラミックで理想的なオレンジ色を再現することは、技術的に非常に困難だったため、2014年まで、プラネットオーシャンのオレンジベゼルはすべてアルミニウム製でした。しかしオメガは2014年、プラチナ製「プラネットオーシャン GMT」において、ついにオレンジ セラミックベゼルの採用に成功しました。
ケースバックには“World Premiere“の文字が刻まれ、つねに革新を続けるオメガを体現する、象徴的な成果のひとつといえます。


THE 3rd GENERAT ION 2016
2016年に登場した第3世代は、コーアクシャル マスター クロノメータームーブメントを搭載し、精度・性能・耐磁性においてスイス時計業界の最高基準を満たすコレクションへと進化しました。新たなサイズ展開やスリムなケースに加え、18Kセドナ™ゴールドの初採用や、ラバーをあしらったダイビングスケール付きセラミックベゼルリングなど、外観面でも多くの革新が加えられました。同年には「プラネットオーシャン ディープ ブラック」も発表され、すべてセラミック製4モデルが登場。深海600m(60気圧)に耐える設計で、海の過酷な環境にも対応する性能を備えています。


THE ULTRA DEEP 2019
2019年に地球上で最も深い場所に到達した、革新的なウルトラディープは、2022年に新たな「プラネットオーシャン」コレクションとして、一般向けに再構築されました。実際の海洋環境でテストされたこの驚異的なダイバーズウォッチは、6,000メートルの防水性能を備え、飽和潜水用のISO 6425基準を満たしています。
また、オメガの革新精神を象徴する本モデル6本は、新素材である「O-MEGAスティール」使用しています。これは高性能なステンレススティール合金で、優れた強度、より白みのある色合い、比類なき光沢が特徴です。耐食性にも優れ、長期にわたり美しい外観を維持することができます。


新たなプラネットオーシャン
「プラネットオーシャン」第4世代が、独特の美的進化を遂げたことは明らかです。
ここからは、クラシックなデザインに、現代的なエッジさを加え、一部のモデルには2005年以来、コレクションに欠かせないオレンジカラーを採用するなど、アップデートされた第4世代の個性についてご紹介します。


THE  4th GENERATION  E V O L U T I ON
インスピレーション
2005年に登場した「プラネットオーシャン」は、1960年代の「シーマスター300」モデルからインスピレーションを受け継いでいます。第4世代では、オメガは再びシーマスターの歴史に立ち返り、1980年代~90年代のモデルを見直し、その構造コンセプトの一部を取り入れています。その結果、シャープで角ばった面を持つ、新しい“フィット感“のあるデザインに生まれ変わりました。

サイズ
新しい「プラネットオーシャン」はすべて42mmで、これは2005年の初代モデルと同じサイズです。
ケースはよりスリムになり、前面のフラットなサファイアクリスタルや、ケース全体とベゼルの洗練された設計により、従来モデルよりも平らな印象に仕上がっています。

 


第3世代の標準モデルが16.1mmの厚さだったのに対し、新モデルは13.79mmまで薄型化されています。


ブレスレット
ケース形状の変化に伴い、ブレスレットも刷新されました。ケースに美しく一体化されたデザインとなっており、フラットなリンクが連なる構造が特徴です。外側にはブラッシュ仕上げの2列、中央にはポリッシュ仕上げの1列が配置されています。

 

シーマスターの伝統を尊重しつつ、これまでよりもスリムで快適性に優れた設計となっています。6段階の調整が可能で、オメガ独自のダイバーエクステンションも搭載。ラバーストラップにはフォールディング クラスプが採用されています。

ダイアル
新しい「プラネットオーシャン」のダイアルは、すべてマットブラックとなります。アロー針や、スーパールミノヴァを充填した力強いインデックスといった象徴的な要素を継承しつつ、アラビア数字の書体に新たな変化を加えました。

 

微細な違いではありますが、数字はオープンワークで角ばった形状となり、ケースやブレスレットのシャープな印象と調和しています。これは、初代「プラネットオーシャン」にも見られたインデックスへのオマージュでもあります。
また、ダイアル上のオメガロゴはロジウム仕上げで、転写された文字はすべてホワイトです。

ケースデザイン
第4世代「プラネットオーシャン」は、構造的な視点から見ても劇的な変化を遂げています。
メインボディと内側のチタンリングからなる2パーツ構造で、全体のラインはよりシャープに、エッジはより明確に表現されています。また、新しいデザインに合わせて、20年間コレクションの特徴だったヘリウムエスケープバルブが廃止されました。

 


チタン製ケースバック
新しい「プラネットオーシャン」は、サファイアクリスタルの代わりにグレード5チタン製のねじ込み式ケースバックを採用。これにより、時計のサイズ感が洗練され、軽量化と強度向上も実現しています。ケースバックには波模様の縁取りが施され、“PLANET OCEAN” と “SEAMASTER”の刻印、防水性能の表記、そして中央にはオメガの象徴であるシーホースのエンブレムがエングレーブされています。

技術的な成功
革新とパイオニア精神を受け継ぐプラネットオーシャンの伝統は、第4世代においても揺るぎなく息づいています。随所に、オメガの先進的なデザイン哲学を物語る新たなディテールが散りばめられています。

 


チタン製インナー リング
2019年に「プラネットオーシャン ウルトラディープ」を発表した際、オメガはダイバーズウォッチ技術に関する理解を大きく深めました。
この知見は、今年の新しい「プラネットオーシャン」を含む、今後のタイムピース設計にも活かされます。
すべてのモデルのケース内側には、チタン製インナーリングが備わっており、深海での使用に耐えるために必要な素材強度を確保しています。

 

オメガは、2005年の初代「プラネットオーシャン」(および1960年代の「シーマスター300」) と同じ美的スタイルを再現したいと考えていました。これらのモデルには、ケースデザインの一部としてインナーリングが採用されていたのです。今回の技術的なデザインは、初代と同じ外観を保ちつつ、600mの防水性能に対応する機能的な役割も持たせることに成功しています。


アイコニックなオレンジカラー
オレンジは「プラネットオーシャン」のコレクションにおいて初期から象徴的なカラーとして親しまれてきました。オメガは、今年の新作を開発するにあたり、この鮮やかな色合いを引き続き、提供したいと考えました。
しかし、セラミック製ベゼルリングにオレンジを再現するのは特に難しく、化学的な特性や製造工程の複雑さから、美しく映えるオレンジを作りだすことは容易ではありませんでした。

 

オメガは特にこのコレクションのために、セラミック加工技術の完成度を高めるために時間を費やし、最終的にいくつかのモデルのベゼルに、鮮やかなオレンジの新色を施すことに成功しました。

 


マスター クロノメーター キャリバー 8912
すべてのモデルには、ウルトラディープにも搭載されているオメガ コーアクシャル マスター クロノメーター キャリバー8912が採用されています。この自動巻きムーブメントは、60時間のパワーリザーブを備え、スイス連邦計量研究所(METAS)が 認定する、精度、性能、耐磁性の最高基準を満たしています。

 

新しいシーマスター プラネットオーシャン コレクションの発売を記念し、オメガは、グレン・パウエルとアーロン・テイラー=ジョンソンをキャンペーンアンバサダーとして起用し、グローバルで展開します。

カルティエの「タンク アメリカン」が登場した。

カルティエは、1917年に誕生した同社の代表的な時計をよりモダンに、さらに斬新にアレンジさせた「タンク アメリカン」を、1988年に発表している。そして2023年、カルティエは「タンク アメリカン」にさらにアップデートを加え、少し薄く、よりスリムで曲線的なデザインとした。カルティエの多くのデザインアップデートと同様、これらの小さな変更はクラシカルなデザインに若干の、そして際立った改良をもたらすものだ。 それが「タンク」を「タンク」たらしめているのであり、1世紀以上も同じ姿であり続けている理由なのだ。

 新しい「タンク アメリカン」は、ミニ、スモール、ラージの3サイズ、素材はピンクゴールドとスティール、ダイヤモンドをあしらったホワイトゴールドの3つの金属で展開する。お好みであれば、ミニとスモールのPG製「タンク アメリカン」には、ダイヤモンド入りやブレスレットタイプもある。なお同僚のマライカがすでに取材した、ブレスレットとたくさんのダイヤモンドをあしらったミニのWGもある。

カルティエ「タンク アメリカン」のRGモデルとSSモデル
 私は44.4×24.4mm(ほかのサイズはスモールが35.4×19.4mm、ミニが28×15.2mmだ)という大きさの、SS製とPG製の「タンク アメリカン」にたくさんの時間を費やした。スモールとミニの小振りサイズはクォーツとなるが、カルティエはラージモデルに自動巻きムーブメントを搭載している。従来のアメリカンと比較した際、最も異なる違いは厚みである。新しいラージモデルの厚みは8.6mmと、先代モデルから1mm以上薄くなっている。80年代に登場したアメリカンは「タンク サントレ」を参考にしており、新しいアメリカンを薄くすることで、この歴史的なリファレンスにより寄せているのだ(たとえ100周年記念のサントレが厚さわずか6.4mmだったとしても)。

 カルティエが「タンク アメリカン」のラージモデルに自動巻きムーブメントを搭載しているのは素晴らしいことだが(そしてターゲットとなる消費者は、おそらく自動巻きの実用性を重視しているだろう)、私は手巻きの「タンク」についロマンを感じてしまうため、「実用性なんて二の次でいいからラージとスモールどちらのアメリカンにも手巻きムーブメントを搭載しよう」とカルティエに言われたら最高だっただろう。これが実現したらケースもさらに薄くなったかもしれないが、今となっては「タンク アメリカン」の服を着た「タンク サントレ」を求めるだけになってしまうかもしれない。

 そのほか、ケースやブランカード(フランス語で“担架”を意味し、タンクのケース側面が担架のハンドルに似ていることからその名がついた)の変更により、新しい「タンク アメリカン」のすべてがわずかにスリムで薄く、洗練されたものとなっている。そしてこれにより、「タンク アメリカン」は「タンク サントレ」にほんの少し近づきつつも、独自のアイデンティティを保っているのだ。以前のラージモデルは私の手首には少し大きかったのだが、今回ケースが変更されたことでより着用しやすくなった。スモールも手首にフィットしたが、ラージで「タンク アメリカン」があるべき付け方、すなわち、大き目でフィットしつつも手首もたれかかるような付け方しか考えられなかったのだ。

カルティエ「タンク アメリカン」のRGモデル
カルティエ「タンク アメリカン」のケースサイド
カルティエ「タンク アメリカン」のバックル
 新しいラージ「タンク アメリカン」のもうひとつの特筆すべき変更点は、縦にブラッシュ仕上げされた文字盤だ。スモールバージョンにはサンレイ仕上げを施しているのだが、カルティエはラージバージョンに別の文字盤処理を選んでいる。これはカルティエが今年アップデートした「タンク フランセーズ」にも取り入れたものなのだが、アメリカンの大きく長い面のほうがより効果的に表れている。時計のフォルムを際立たせる仕上げは、ここ数年のカルティエ限定モデル(例えばシンガポール ウォッチ クラブのためのコレクションのように)を彷彿とさせるようなとても素敵なデザインだ。

2019年に登場した、カルティエ「タンク サントレ」
「タンク アメリカン」のフラットな裏蓋に対し、2019年の「タンク サントレ」のケースサイドはラグが裏蓋からはみ出るように薄く、曲線的になっている

 奇しくもカルティエは今回、2017年の発売当時にA Week on the Wristの記事でも取り上げた、ミディアムモデルを展開から外している。ミディアムの縦サイズは41.6mmで、現在は35.4mm(スモール)から44mm(ラージ)までの差があり、多くの人にとってのゴルディロックス(黄金比)に当たる時計に、ちょっとした穴が空いてしまったのだ。少なくとも私はそのあいだに、少し引っかかるような感覚が残った。私の場合スモールのほうが快適で、ラージは少し手首に大きすぎるものの、「タンク アメリカン」のイメージにはぴったりだったのだ。とはいえケースがスリムになったことで、ラージサイズの「タンク アメリカン」は、従来のものよりもずっと身につけやすくなっている。それでもその中間的なサイズが欲しいという思いが残っていた。しかし多くの人にとって、ラージサイズはとても素晴らしいものであることには違いない。

 またサイジングに歴史的な正当性がないとも言い切れない。「タンク アメリカン」のラージサイズは、同じくラージのヴィンテージ「タンク サントレ」に相当し、小振りなスモールはミディアムのヴィンテージモデルとほぼ同じ大きさである。もし「タンク アメリカン」がヴィンテージの「タンク サントレ」を意識しているのであれば、カルティエのサイジングも文字どおりの意味を持たせているようで、その点についてはあまり非難はできない。

カルティエ「タンク アメリカン」のリストショット
 1921年、カルティエは「タンク」初のカーブしたケースとなる「タンク サントレ」(フランス語で曲がったという意)を発表。これは1920年代らしい時計で、その後このスタイルはすぐに廃れるもののやがて復活し、それ以来カルティエのカタログの主役として君臨し続けている。現在では記念モデルや限定モデルといった、入手困難なほどに美しいモデルとして登場を果たしており、「タンク」コレクションの最高級品のような存在になっている。その大きさゆえに、現代の嗜好に最も適切な「タンク」でもあるのだ。

カルティエ「タンク アメリカン」のRGモデルのイメージ
 しかし「タンク サントレ」は、我々がInstagramを通じて垂涎するようなコレクションとしてほぼ限定しており、そのほかの人たちにとって、湾曲した「タンク」は「タンク アメリカン」なのだ。1988年にYGのみで登場したが、2017年にSS製が発表されると、“入門用”タンクとしてのベストセラーのひとつとなった。SS製ラージ「タンク アメリカン」は90万7500円(税込予価)で販売される。ロレックス オイスターパーペチュアル 36と基本的に同じ価格のため、すぐにわかるデザインでありながら素敵でスタイリッシュな時計が欲しい、また毎日でも身につけられる時計が欲しいという人は、自然と買いに赴くかもしれない(なお「タンク アメリカン」は30m防水仕様)。「タンク アメリカン」はアリゲーターストラップがセットになっているが、もっとカジュアルなタイプでも違和感はないと思う。

 今年行われた「タンク アメリカン」のアップデートは、そのすべてがカルティエらしくなった。ほんの少しスリムかつエレガントであり、そしてつけやすくなったが、多くの人にとってその変化はほとんど感じられないだろう。そしてそれこそが重要なポイントなのだ。

関連商品:https://www.hicopy.jp/brand-copy-IP-19.html

今年最も話題になった時計にビバーウォッチ カリヨン トゥールビヨン ビバー。

「どうぞ撮ってください。私たちは準備ができていますから」

第1弾となるビバーウォッチの発表からちょうど1週間半が経過したとき、同ブランドの共同創設者のひとりであるピエール・ビバー(Pierre Biver)氏と、3度目となる対面で話をしたときのことだ。1年あまり前にローンチしたこのブランドが入門機として選んだのは、ポリッシュ仕上げを施したチタン製のカリヨン・トゥールビヨンだ。それはとてつもなく複雑で鮮烈な印象を放ちつつも、優美でモダンな存在感を示している。スーパーコピー時計代引き直前、スイス・ジヴランにある、ファームハウスの本社で行われた発売記念パーティには、業界のトッププレーヤーらが参列した。しかしイベント外にいた多くの(ネット上の)ウォッチコミュニティからの反応は、まるで報復を考えているような殺伐としたものだった。わずか23歳にして、これまで以上にいろいろなスポットライトを浴びることになったピエール・ビバー氏は、その事実から逃げなかった。

Pierre and Jean-Claude Biver on stage at the announcement of their watch.
時計の発表会に登壇した、ピエール&ジャン-クロード・ビバー親子。

 ピエールは「人々が批判していることはよく理解していますし、私たちもそれに値すると思っています」と言う。「例えば、短期間のスケジュールとプレスからの画像の期待に応えて、3Dレンダリング画像を多用しましたが、これは時計を正当に評価するものではありません。また必ずしも時計についてきちんと時間をかけて伝えていたわけではなく、言いっぱなしにしていて、説明不足な部分もありました。もっと違ったやり方があっただろうと思うことはいくつかありますし、正直なところ、私たちが受けている批判や論評のなかには、実際には非常に建設的なものもあると思います。しかしノイズが多いのも事実です」

 57万ドル(日本円で約7665万円)の腕時計を購入する対象ではなかったと思われる視聴者たちから、すぐさまInstagramにミームや苦情が流れてきた(そのうちの何人かは認めるだろう)。その議論の中心はまさにこれだった。高価な時計はどうあるべきなのか? 新ブランドがその価格でスタートするということは、どういうことなのだろうか? このブランドは時計業界で最も重要な人物であり、このブランドを支えるもうひとりの共同創業者でもあるレジェンド、ジャン-クロード・ビバーという名に便乗しただけなのだろうか? この時計を実際に買う人はいるのだろうか?

The Biver Carillon Tourbillon
 私は少し機転を利かせて、ふたりにこんな質問を投げかけてみた。彼らは動じず、すんなりとそれを受け入れてくれた。特に、かつてはブランパン、オメガ、タグ・ホイヤー、ウブロ、そして最終的にはLVMHのすべての時計を率いたマーケティングの天才と呼ばれる人物として、またトップブランドのCEOとして、ときに“やあ”と言うだけでインタビューとして成立するこの世界において、ジャン-クロード・ビバー氏はとても率直な意見を述べてくれた。

Jean-Claude Biver and Pierre Biver
フォーシーズンズ内にて、ジャン-クロード&ピエール・ビバー。

「もし私が疑問に思うことがあるとすれば、最も複雑な時計を最初に発売するという判断が正しかったのかどうかということです」。2週間前、ニューヨークで開催されたアメリカのリテーラー、マテリアル・グッド(Material Good)のイベントで年配のほうのビバー氏は私にこう言った。「今後、3針時計とクロノグラフモデルの両方が数カ月のうちに登場しますが、こちらはきっと感動してもらえると思います。ですがみなさんは私たちが何をできるか、実力を見たかったのでしょう。1年経って最初にやったことがシンプルなことでしたから、がっかりしてしまったんだと思うんです」

 この時計に対する衝撃的な反応は、私を含めて少なからず多くの人が予想外の決断をしたことに原因があると思われる。ハイパーモダンなデザイン(極限まで磨き上げられたチタンにストーンダイヤル、鋭い角度、驚くほどユニークなファセットを施したブレスレットなど)は私をはじめ、おそらく多くの人が伝統的なブランパンらしいデザインを期待していたために驚きを隠せなかったのだろう。

The Biver Carillon Tourbillon
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 その代わりにビバー氏たちは、2008年のジャガー・ルクルト レベルソ・ジャイロトゥールビヨン2や最近のハイブリス・メカニカのように複雑機構を組み合わせることにこだわった、ある種グランドコンプリケーションのウブロ(ほかのハイパーモダンな印象とは異なり、フューチャリスティックでありながら、ひと目で時計とわかるデザイン)に近い雰囲気のものをつくりあげた。複雑機構を実現する能力は確かに重要でありトレンドでもあるが、一方市場では、リーズナブルな価格に抑えつつも、ひとつの優れた複雑機構を備えたものを求める需要に落ち着いたようである。このように市場があっちこっちに動くなか、彼らもあっちこっちに動いたのだ。

 これは若いピエール氏が描く現代に沿ったビジョンなのか、はたまたアートディレクターが自分(とそのブランド)を軌道に乗せようとする“ガードレール”からようやく脱却するように、ジャン-クロード氏の個人的な好みの奥底にあるものがようやく表に出てきたのか、ずっと気になっていた。これは彼自身が言うようにジャン-クロード・ビバー氏による“最後の作品”である。

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「それは、私の父について本当に理解している人があまりいないということです。彼をコントロールすることはできません」とピエール・ビバー氏。「彼がこれまで働いてきたブランドでも、安全策を取ってきたと思われたかもしれないですが、いつもそうでした。彼はどのブランドでも自分の気持ちをたくさん注ぎ込んでいたのです。彼がいた頃のゼニス、あるいはタグ・ホイヤーを例にとれば、彼の役割を感じることができるはずです」

「彼はそれを持ち込んで、そして今、私たちは人々の予想や期待とあまりにも違うことをしています」と彼は認めている。「みなさんは非常にクラシックか、あるいは非常にモダンなもののどちらかを期待していたと思います。父と一緒に仕事をしたり、私の父との関係や仕事のやり方では区別をするのが難しいですね。誰のアイデアがどうだったかは、もう言えません。しかし今日、私たちはシンボリックかつ伝統的な時計が、今の時代でつくられたらどのように見えるかという最高の状況のなかに実際いるのです」

The Biver Carillon Tourbillon movement
 理論上このムーブメントは、ジャン-クロード・ビバー氏がキャリア初期に受けたジャック・ピゲによる助言からインスピレーションを得たものである。ジャック・ピゲの始祖、ルイ=エリゼ・ピゲは歴史上最も偉大な時計職人のひとりであり、複雑時計の名手でもあった人物だ。実際、ブランパンは後にL.E.ピゲの屋根裏部屋でミニッツリピーター用のベルを見つけている。ビバーウォッチは“音・記憶・動き”の3つの項目こそ実現したいことの本質であるといっている。カリヨン・トゥールビヨンは“音”をチェックし、今後は日付を“記憶”する永久カレンダーや、“動き”を追いかけるクロノグラフというのを計画してるようだ。またプレス資料のなかには、相互のつながりや文字盤に選んだストーンの魅力について語っているなど、非常に“ニューエイジ”的な表現が数多く見受けられる。

The Biver Carillon Tourbillon
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 実際にこのムーブメントはヌーシャテル近郊のレ・ゾー=ジュヌヴェにあるセルクル・デ・オルロジェ(Cercle des Horloger)とデュボア・デプラ(Dubois Dépraz)が開発、そこから発展したほかのムーブメントを使用している。さらにミオドラグ・ミヤトヴィッチ(Miodrag Mijatovic)氏が設立したM-Design社および、ジャン-クロード氏がブランパン時代から一緒に仕事をしてきたプロダクトデザインマネージャーのフィリップ・ジラール(Philippe Girard)氏との共同によりデザインは誕生した。

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 しかし発表されたとはいえ、これらの要素は決まっているわけではなかった。ピエール・ビバー氏によると、最高の音色を奏でるためにリピーターに最適なゴングを調達して、ハンマーとその軌道を微調整している最中だという。5月中旬にはこの調整を終えて、9月にはフル稼働で生産にこぎつけたいとのことだった(当初は年産12本だけだが、人員を増やせば20本まで増やせるそう)。

 カリヨンリピーター“のみ”ならず(ゴングがふたつしかない“シンプルな”リピーターより1歩前進しているのだ)チタンを使ったトゥールビヨン(この機構は時計を複雑化させるためだけの単なる付属品と化している)を搭載しており、巻き上げ用のマイクロローターの搭載を差し引いても、今日でほとんどのブランドが行っていない複雑機構の組み合わせを実現している。これに対しカール F. ブヘラは、38万スイスフラン(日本円で約5740万円)でトリプルペリフェラル・トゥールビヨン・ミニッツリピーター(カリヨンは搭載していない)を製造している。さらにパテックも60万スイスフラン(日本円で約9070万円)を超えるRef.3939や5303J(これもカリヨンの搭載はなし)のように、長年にわたっていくつかのモデルを製造している。

 “音、記憶、動き”とともに、ビバー氏たちはプレス資料で“愛、記憶、進化”も伝え、加えてこの時計のシンボリズムについても語り尽くしている。実際、ジャン-クロード氏はこの時計の核を伝えるプレゼンテーションの冒頭で、業界における自分の過去を振り返り、これまで築いてきた50年のキャリアのうち、このブランドが“最後の5分間”になることを述べたのである。

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ジャン-クロード・ビバー所有のプロトタイプモデル。

 もう少し温かみのある時計がいいだとか、難解な哲学的思考を重視した時計がいいだとかそういう好みの問題は、この時計が目指しているものを実現できているかどうかには関係ないのだ。あくまでもこれはビバー家の時計づくりに対する愛情とそれを推し進めるビジョンを超絶技術で表現したものに過ぎない。マイクロローターの搭載によって、彼らが約束する“日常使い”を想像するのは少し極端だとは思うが、私はその可能性はあると想定している。そのため、私はこの時計のどこが優れているのかについて反論することも、この時計が目的を達成できていない点を指摘することもできなかった。

 またこの時点で私が何を伝えたとしても、これは嫌だと決めつけている人たちの心を変えることはできないと理解しているが、この時計を何度も(本当に何度も何度も複数の場面で)見たり身につけてみてほしい。そして、ネット上の感想や個人的な会話から切り離された状態で考えるのに十分な時間があるのであれば、実際の着用感のよさや仕上げについて、手に取って正直に考えてみる価値があると思うのだ。

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 実際に時計を装着してみると着用感のよさは否定できない。ピエール・ビバー氏はパテックのヴィンテージモデル、Ref.2499のラグからインスピレーションを得たと語ってくれた。ラグを下側に設けていることで、13.7mmという厚さにもかかわらず、フラットなサファイアケースバックとともに手首をより包み込むようになっているのだ。しかも50m防水を実現しながらも、一般的に市販されているクロノグラフと比較しても、それほど厚いわけではない。また裏蓋、ベゼル、ケースの側面が凹んでいるため、少し時計のテーパーが効いた仕様に仕上がっている。このブレスレットを構成する5つのリンクは、それぞれファセットカットで傾斜したおもしろいデザインで、長辺が次のリンクに接続するより前に急な傾斜があるような、一種の不等辺三角形のようなものだ。これらの計算されたデザインにより、視覚的なおもしろさと快適なつけ心地を兼ね備えた時計に仕上がっている。

The Biver Carillon Tourbillon
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 光による視覚的な演出もデザインのカギを握っている。ケース表面は、ハイポリッシュのチタン(ツートーンのピンクゴールドと)からサテンポリッシュへと移行して、視覚的なコントラストを強調している。決して中途半端な時計ではない。特にケースから放たれる光は議論にすらならない。

The Biver Carillon Tourbillon
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 また完璧に仕上がっていないことを、真面目に議論することもできないのだ。裏側にはホワイトゴールドのブリッジにブラックポリッシュとグレイン加工を施し、その下にブラスト加工を施したものがある。ローズゴールドとチタンのツートンカラーの時計はムーブメントの動きの一部をよりハッキリと見ることができ、そこから見えない部分を含むすべてのパーツが信じられないほどに完成されていることがわかる。ストーンダイヤルは厚さ0.6mmのソーダライトや銀黒曜石が層でできた硬質石でできている。またヴィンテージのボンベ(ドーム型)ダイヤルからインスピレーションを受けており、同モデルもボンベダイヤルを採用。文字盤の裏側まで丁寧に仕上げている。

The Biver Carillon Tourbillon dial
 文字盤に配されたロゴは“ブランパン”ぽいフォントであり、ひとつのグループとしてではなく一文字一文字を手作業で植字している。カーブしたインデックスと鋭いドフィーヌ針もモダンな印象で、さらに頂上部を削り、エッジな斜面にはポリッシュ仕上げ、サテン仕上げを施しているのもポイントだ。今回撮影はかなわなかったが宝石をセットしたモデルもあり、それはミニッツリピーターのスライド下部も含めて、ほぼ全体がダイヤモンドで覆われている。131万5000ドル(日本円で約1億7700万円)の時計で、カリヨンのチャイムを聞くときにダイヤモンドがなくても困らないということだ。

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フィリップスのオークションに出品される、ビバー プロトタイプ。

 ジャン-クロード・ビバー氏による個人的なプロトタイプはチタン製でダークストーンの文字盤を備えているが、こちらはフィリップス・オークションに出品される予定となっている(微調整をしたあと)。フィリップスアメリカ地区の時計部門責任者であるポール・ブトロス(Paul Boutros)氏も、オフィスで1時間以上かけてこの時計の仕上げを吟味したあと、その仕上げを高く評価している。ジャン-クロード氏は、今後ローンチされるビバーウォッチでも、このレベルの仕上げをを期待すべきだと発言している。しかしもし誰かが彼らはフィードバックに耳を傾けていないと思っているとしたら、それは大きな間違いだ。

The Biver Carillon Tourbillon
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“プロトタイプ プール JCB“

「時計の分野で多くの経験を積み、実際に時計を手にした人たちから素晴らしい建設的なフィードバックが得られたからこそ、それをもとに実際に改善していくことができるのです」とピエール氏は話す。「実際にすでに取り組んでいる意見として、地板をサンドブラストから手作業による梨地加工に変更したことで、もう少し輝きを演出すことができました。アンクルではアングラージュ(面取り)をもっと頑張ります。そしてガンギ車では同様に角度をつけてみます。また今後もブレスレットの一体感やケースのシャープさなどを改良していく予定です。ただ全体的に見ると、私たちはクライアントの評判に大変満足していますし、そのフィードバックを参考にすることで最高の時計をつくりあげることができるのです」

 とはいえ、ピエール氏が価格に対して気にしているというわけではない。

 ピエール氏は、「理由を説明せずに価格を批判することはできません」と言う。「もしも“ムーブメントのつくりが甘くて、文字盤の出来が求める価格の水準に合っていない”という声があれば、そう、それはすでに実際会話で貢献したことになるのです。もしかしたらそのなかには、不当なものもあればすべて正しいものもあるかもしれない。私たちはそれも踏まえているのです」

 しかし実際に購入した人からの評判では、価格は気にならないということを証明している。私は確かに50万ドルの時計を買う気はないが、そういう人たちは確実に存在する。実際その数は十分で、最初のビバーウォッチが発表された4日後には、年間わずか12本の生産にもかかわらず2年分の生産量を売り切ってしまったのだ。マテリアル・グッドの時計部門責任者であるヨニ・ベン・ヤフダ(Yoni Ben Yahuda)氏によると、割り当てた分のかなりの部分が売れてしまったいうのだ。

エルメスが新しくエルメスH08 コレクションを初めて発表すると、それはたちまちヒットした。

確かにスティール製スポーツウォッチであり、ほかのブランドに挑んだものだったが、それは非常に真摯で、完璧にエルメスのものであると感じられた。形状は異なり、(インデックスの)数字は社内でデザイン、さらにエルメスが(株式を)一部保有するフルリエのメーカー、ヴォーシェ社の自動巻きムーブメントを搭載していた。

エルメスはこのコレクション初のコンプリケーションモデルである、エルメスH08 クロノグラフ モノプッシャーを発表した。新作はエルメスH08の3針で確立されたデザインコードを巧みに取り入れて、より複雑な時計へとうまく統合している。ケースにはカーボンファイバーと熱硬化性エポキシ樹脂、グラフェンパウダーという新しい複合素材を採用。41mmの形状に多層状の質感を与え、また軽量で手首に快適にフィットするよう仕上げている。ワイドなベゼルはサンバーストパターンにサテン仕上げを施したチタン製だ。ベゼルとミドルケースを区切るよう、わずかに磨かれた面取りがあるのがわかる。100mの防水性能を備え、スポーツウォッチとしての機能も健在である。

モノプッシャーのクロノを見るのはいつも楽しいが、エルメスのようなデザイン重視のブランドでは特に効果的だ。エルメスH08の基本設計はほとんどそのままに、クロノグラフのスタート、ストップ、リセット3つの機能をすべて3時位置にあるリューズに組み込んでいる。またリューズも細部にまでこだわっており、PVD加工のオレンジ色のリングが機能性をアピールしている。
ほんの少し押すだけでクロノグラフが作動し、ギアなどがうまく噛み合っていて感触は良好だ。これはエルメスの自動巻きムーブメントH1837(ヴォーシェ製)の上に、デュボア・デプラ製の垂直クラッチクロノグラフモジュールを搭載しているためである。サファイア製のシースルーバックからは、ブリッジとローターにエルメスの“H”モチーフが繰り返し装飾されているのがわかる。私はいつもこのディテールが少し陳腐だと感じている。ムーブメントは2万8800振動/時(4Hz)で、約46時間のパワーリザーブを確保している。

今となってはモノプッシャークロノグラフは時代錯誤であり、(現代にあると)意図的に採用していることになる。ただ繰り返しになるが、それは機械式時計全体に当てはまることだ。しかし1934年に、ウィリー・ブライトリング(Willy Breitling)が2ボタン機構を発明するまではモノプッシャーが唯一の選択肢だった。今ではどちらが使いやすいかというと、ある事象のタイミングを止めてから再開することができる2ボタン機構のほうが、モノプッシャーのそれを大きく上回っている。それでもモノプッシャーは楽観的に物事を考える私たちにとって、ある種古めかしい魅力を持っていると思う。エルメスH08クロノグラフのモノプッシャーはデザインのシンメトリーを維持したいという願望によってそれを選択したように感じられる。しかしこの時計はモダンでありながら、ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。

ダイヤルは既存のエルメスH08コレクションから多くのヒントを得ているが、30分積算計を9時位置に配置することでクロノグラフに応用しているようだ。現在は文字盤のアワートラックとインダイヤルのみに、よりインダストリアルな外観にしたグレイン仕上げが残っている。またフォントもおなじみのもので、0と8はエルメスH08のケースそのものからインスピレーションを得たものだ。また4時30分位置の日付窓は常に論争の的だが、文字盤と同じマットなグレーで描かれた日付窓にはエルメスのフォントを使用し、違和感なく溶け込んでいる。常に色使いで遊ぶエルメスは、針とアワーマーカーのアクセントにエルメスのシグネチャーであるオレンジを採用し、快適なラバーストラップとマッチ。そのストラップの真ん中には風合いのあるテクスチャーが入っており、エルメスのクラフトマンシップの歴史に思いを馳せることができる。高級ラバーストラップはそれだけで世界が広がるが、エルメスH08ストラップはアクアノートのグレネードストラップを除けば、おそらく最高の出来栄えだと思う。

さらにエルメスはクロノグラフと並行して、グラスファイバー複合素材の新型ケースを採用した3針の4色(ブルー、オレンジ、グリーン、イエロー)も新たに発表している。クロノグラフと比較すると、これらの39mmの時計はサイズや機能、装着感においてより私のスタイルに合っていたと思う(新しい複合素材は既存モデルよりもさらに軽く感じられたのだ)。私の場合、エルメスH08ケースの形状は39mmサイズのほうが効果的で、クロノグラフでは少し幅が広く感じられた。またクロノグラフのモジュール構造により、厳密にこれは薄い時計ではない。エルメスから測定値を聞いたわけではないが、少し装着してみると13mm前後ぐらいだったように思う(標準モデルは10.6mm)。しかし軽量なケース素材とラバーストラップの組み合わせのため非常につけやすい。エルメスがスポーツウォッチのコレクションを充実させたことには感謝しているし、よくできたクロノグラフから始めるのは確かに理にかなっていると思う。

残念ながら新しいエルメスH08クロノグラフを手に入れたい方に、2024年のある時期でなければ入手できないことをお伝えしておこう。希望小売価格は214万5000円(税込、予価)前後になる予定だ。新型デイトナと同じぐらいパンチの効いた価格だが、内部はヴォーシェ社、外部はエルメスと個性がはっきりと分かれており、ほかの市場との違和感は感じられない。またトレンドに敏感でファッション性の高いメゾンであることを考えると、これが従来のクロノグラフと競合しているかといわれれば、必ずしも掛け合わされているとは思えない。それでもオリジナルのエルメスH08コレクションはスポーツウォッチと比較したときに独自の価値の提案があったから支持されたのだと思う。(オリジナルが)80万円弱、しかもチタン製で気軽に手に入る? すぐ売れてしまうわけだ。
新しいエルメスH08 クロノグラフは、まったく同じ価値提案をしているとはいえないかもしれないが、過去数年のなかでも数少ない純粋な新しいスポーツウォッチコレクションのひとつとして加える価値はある。

関連商品:https://www.jpan007.com/brands-category-b-65.html

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