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2025年05月

同ブランドは特に人気の高いふたつのコレクションを融合させ、

ローラン・フェリエ クラシック オート サンドストーンでふたつのコレクションが融合。

ローラン・フェリエほど、クラシカルでありながらモダンなテイストをあわせ持つブランドはほかにない。同ブランドは特に人気の高いふたつのコレクションを融合させ、ブランドらしさを余すところなく表現した新モデルをGeneva Watch Days 2024を皮切りに発表した。ローラン・フェリエを知っている人ならクラシック マイクロローターもよくご存じのはずだ。これは革新的な時計技術と最高級の仕上げを兼ね備えている。過去数年間におけるブランドのリリースを振り返ると、一体型ブレスレットを備えたスポーツ オートに明確な重点が置かれており、ブランドのデザイン言語を新たな時計カテゴリーへと見事に拡大している。

本日発表されたローラン・フェリエのクラシック オートは、クラシック マイクロローターとスポーツ オートを見事に融合させたモデルだ。人気のスーパーコピー時計 代引き専門店その結果は驚くほど調和している。ケースのシェイプ、針、ダイヤルのインデックスはクラシック マイクロローターからインスピレーションを受けており、一方でムーブメントや十字ダイヤルのディテール、そして日付表示窓はスポーツ オートから受け継がれている。すべてが一体となって、ブランドが理想とする日常使いに最適な時計が完成したのだ。


初代クラシック オートにおいて、ローラン・フェリエはヴィンテージウォッチの温かみあるトーンを意識したサーモンカラーダイヤルを採用した。中央部分はバーティカルサテン仕上げが施され、外周のミニッツトラックには円形のサテン仕上げを採用。絶妙なツートンの外観が特徴だ。細長く緩やかに傾斜した日付表示窓は、視線を自然に引き寄せるとともに、細長いインデックスとの対称性を保つ役割を果たしている。アセガイ型の針とドロップ型のインデックスはどちらも18Kホワイトゴールドで仕上げられ、手首の印象を引き締めてくれる。ケースはステンレススティール製で、直径40mm、厚さ11.94mmとバランスの取れたプロポーションを持つ。

クラシック オートにはローラン・フェリエの自動巻きCal.LF270.01が搭載されている。同ムーブメントは以前スポーツケースにのみ搭載されていたもので、設計、装飾、組み立て、調整はすべてブランドの工房で行われている。なおローラン・フェリエの特徴であるナチュラル脱進機ではなく、耐衝撃性を考慮してスイスレバー脱進機が採用。Cal.LF270.01は、139もの手作業による仕上げ工程を経てひとつのムーブメントが完成する。これらの精緻な仕上げはシースルーバック越しに鑑賞可能だ。プラチナ製のマイクロローターは、フルに巻き上げると約72時間のパワーリザーブを確保できる。


クラシック オート サンドストーンは、ローラン・フェリエの“セリエ アトリエ”プログラムの一環として提供されている。このプログラムは限定20本のナンバリングされたモデルが、5万スイスフラン(日本円で約855万円)の価格でブランドから直接販売される。これにより、コレクターは通常よりも短い納期で手に入れることができるのだ。このセリエ アトリエプログラムは2020年から実施されており、これまでの限定生産品はすべて完売している。

我々の考え
2009年の創業直後、ローラン・フェリエは時計業界の寵児となった。若いブランドでありながら、2010年にはクラシック トゥールビヨン ダブルスパイラルでGPHG(ジュネーブ時計グランプリ)のベストメンズウォッチ賞を受賞し、一躍注目を浴びた。その後、ローラン・フェリエはクラシックなシェイプをもとに、さまざまな複雑機構やダイヤルカラーを取り入れたモデルを発表し、ファンを獲得していった。しかしある時期から時計業界はほかに目を向けるようになり、ローラン・フェリエにスポットライトが当たることはなくなった。それでもローラン・フェリエは歩みを止めなかった。ブランドは卓越した仕上げと伝統的なデザインを追求し続けたのである。

現実として、クラシックなデザインと仕上げを持つ腕時計がこの価格帯で提供されると、やがて飽和状態に達することがある。ローラン・フェリエにも同様の状況が起きたのだ。洗練されたクラシックなデザインを守り続ける姿勢は、一体型ブレスレットのスポーツウォッチといったトレンドへの挑戦に際して、注目を集めることもあれば逆に関心が薄れることもある。コレクターの好みがそのブランドのデザインに合っているときは順調だが、スポーツウォッチが流行しているときにはローラン・フェリエのようなブランドが優先されないこともある。これは当然のことだ。
 私はこのブランドの大ファンであり、ローラン・フェリエへの注目が再び高まっているのを実感している。全体的な流れで見ると、時代の流れがローラン・フェリエに向かっており、タイムレスなデザインや全体的な“ドレス”の美学に焦点が当たっているようだ。もしブランドが今日のクラシック オート サンドストーンやWatches & Wonders 2024で発表したクラシック ムーンのような素晴らしい製品を作り続けることができれば、ローラン・フェリエは“復活”への道を順調に進むだろう。新作は美しく魅力的であり、ローラン・フェリエのデザインを少しアレンジしながらも、コレクターが期待する要素をしっかりと提供している。


現在のローラン・フェリエにはまさに、“まず先につくれば、そのあとで客が来るだろう”という状況が訪れている。注目に値する瞬間だ。

基本情報
ブランド: ローラン・フェリエ(Laurent Ferrier)
モデル名: クラシック オート サンドストーン(Classic Auto Sandstone)
型番: LCF046.AC.B2G1

直径: 40mm
厚さ: 11.94mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: 銅色調のラッカー仕上げ
インデックス: 18Kホワイトゴールド
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ダークブラウンのカーフレザー、同色系のアルカンターラライニング


ムーブメント情報
キャリバー: LF270.01
機能: 時・分・スモールセコンド、日付表示
直径: 31.6mm
厚さ: 4.85mm
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 31
部品点数: 215

価格 & 発売時期
価格: 5万スイスフラン(日本円で約855万円)
発売時期: すぐに
限定: あり、世界限定20本

オメガ スピードマスター X-33 レガッタ

  • 2025/05/07 09:56

第35回アメリカズカップとエミレーツ・チーム・ニュージーランド(ETNZ)のために特別に作られたオメガ スピードマスター X-33 レガッタは、オメガの革新的なスピードマスター X-33の進化版にあたるモデルだ。専門性の高い特殊進化は昆虫に特徴的なものだといわれているが、それが真実ならばX-33 レガッタはスピードマスターにおけるカマキリにほかならない。高度に専門化された、比較的異質な存在だ。特に神聖な“ムーンウォッチ”ラインナップのなかではひと際異彩を放っている。

オメガスーパーコピー代引き 激安の僕はスピーディのファンのなかでもはみ出し者に違いないが、現在のX-33を理解するにはその歴史を簡潔に振り返ることが重要だと考えている。オリジナルのスピードマスター プロフェッショナル X-33は1998年3月、ヒューストンのジョンソン宇宙センターで多くの観客を前に発表され、そのイベントではミール宇宙ステーションからの初の公開テレビ生中継も行われた。X-33はとにかく大胆なデザインだったが、その機能性の基礎は1980年代半ばのオメガ シーマスター マルチファンクションに見られる。

(左)1986年製のオメガ シーマスター マルチファンクション。Photo: Omega Museum、(右)2016年にクリスティーズのオークションに出品された初期のスピードマスターX-33。Photo: Christies
 1998年にこの斬新なミッションタイマーが一般に公開されたころには、同モデルはすでに軍用や宇宙空間での使用が進んでいた。1990年代半ばにフライトマスター X-33として初登場したこの時計は、いくつかの試作機やプレプロダクションモデルがオメガによって製作されており、その開発には数名の宇宙飛行士やブルーエンジェルス、サンダーバーズといったジェットチームの選抜パイロットたちが関与していた。一般販売される前にこれらの試作機は国際宇宙ステーション(ISS)やミール、さらには航空分野でも使用され、ある個体はMiG-15の墜落事故においてもパイロットとともに生還したというエピソードもある。
 
 当初からX-33はミッションでの使用を想定したツールとして設計されており、ケースはアラーム音ができる限り大きく響くように設計されていた。オメガはそのアラーム音の出力が80dBに達すると主張している。またこの時計は999日までの“ミッションタイム”を計測でき、その値をカウントダウンまたは経過時間として表示することが可能であった。

X-33はその外観や触り心地からして、まさに高級技術の結晶のように感じられる。
 2001年にはサテン仕上げのベゼルと新しいリューズが追加され、X-33はその後2006年に一般向けの販売が終了した。時は進み、2014年12月にオメガは第3世代のX-33、オメガ スピードマスター スカイウォーカー X-33を発表する。この新しいモデルは前世代の円形ディスプレイを廃止し、3つのセグメントを持ったよりシンプルな横型ディスプレイを採用していた。基本的に上部に追加データ、文字盤の9時位置にモードや機能、下部に時間やアクティブな計測データが表示されている。X-33の細かい仕様についてはジャックが2015年に類似したモデルのHands-On記事を書いているのでここでは詳述しない。

X-33はほとんどの状況で非常に高い視認性を約束しているが、さらに針を“隠す”機能も備えている。バックライトボタンを2回押すと、針がデジタル表示を遮らない位置に回転する仕組みになっている。
 3世代のX-33すべてに共通するように、レガッタモデルも直径45mm、厚さ15.1mmというサイズで、グレード2のチタンを使用した精巧なケースとセラミックベゼル、サファイアクリスタル風防、そして30mの防水性能を備えている。防水性能の上限に対して疑問を持つ人がいるのも理解できるが、X-33はこの深さまでのテストがしっかり行われておる。それに航行や航空、宇宙飛行といった活動は基本的に水面やそれ以上の高度で行われることが多い。
 X-33 レガッタは2017本限定生産で、エミレーツ・チーム・ニュージーランドのセーリングチームとの関係を示す青と赤のカラーが施されている点や、アメリカズカップレースのためにオメガが機能を巧妙にカスタマイズした点が標準的なX-33との主な違いとなっている。既存のX-33はミッション経過タイマーや、特定のミッションステージを知らせるための経過時間に基づくカスタマイズ可能なアラームシステム(フェーズ経過時間)を提供していたが、X-33 レガッタはレガッタのさまざまなステージを特定して計測し、記録できる。

カウントダウンが終わると、自動的にレースモードに切り替わる。

“A06”はレースの第6ステージを示しており、ボートが各ブイを通過する際にスプリットタイムを計測するために使用される。
 10時位置の“レース”ボタンを押すとX-33 レガッタはカウントダウン(CTD)モードに切り替わり、あらかじめ設定されたカウントダウン時間(最大1時間)でレースの開始時間を知らせる。レガッタではスタートの段階で勝敗が決まることが多く、ボートはレース開始までの正確な時間を示す音声信号と同期させるために、何らかのタイマー(時計など)を使用する。ボートは単に列を作ってスタートを待つわけではなく、レースが始まる瞬間に速度を落とさずスタートラインを超えるために、動きのパターンや位置を調整する必要がある。

X-33は非常に軽快で、快適に着用できる。
 
 カウントダウンモードではアナログの分針が秒を刻み、カウントダウンの進行に合わせて反時計回りに進む。同様に時針はレース開始までの残りの分数(12分から0分まで)を知らせ、下部のディスプレイには全体の計測時間が表示される。セイラーが途中で音声信号と同期させたい場合は、レースボタンを押すだけで30秒単位で最も近い時間に同期する(45秒なら繰り上げ、15秒なら繰り下げ)。毎分の経過ごとにX-33が大きなチャイムを鳴らし、最後の1分間は15秒ごとに、そして最後の10秒間にアラームが鳴る。

X-33の裏蓋は、アラーム音ができる限り大きく響くように設計されている。
 カウントダウンが終了してレースが始まると、X-33 レガッタは自動的にレース(RAC)モードに切り替わり、時計はレースの各ステージを計測して記録する。セイラーはボタンを押すだけで最大12ステージまでのレースのフェーズ(各ブイ間のスプリットタイムなど)を簡単に切り替えることができる。ブイを通過するたびにレースボタンを1回押して時間を記録し、次の計測に移行する(9時位置の円形ディスプレイにA01〜A12として記録が表示される)。レース終了時にはレースボタンを2回押して計測を終了し、さらにボタンを押し続けるとデータがX-33のログブックに保存される。視覚的に理解したい人のために、オメガはX-33 レガッタのユーザーマニュアルにわかりやすい図解を記している。

オメガのユーザーマニュアルに記載されている、X-33 レガッタの活用方法を示すレースの図解。
 既存のX-33には温度補正型クォーツキャリバーである5619が搭載されていたが、X-33 レガッタにはレガッタ計時専用のプログラムを備えてさらに特化したCal.5620が使用された。また同機能に加えて、UTC、T1(ホームタイム)、T2という3つのタイムゾーン、さらにタイマー、クロノグラフ、アラーム、そして永久カレンダーを搭載。これらすべてが標準的な3針のアナログ表示と、明るく視認性が高くバックライト付きの3つのデジタルディスプレイで表示される。正確な計測はしていないがアラーム音は非常に大きく、もしコーヒーショップの列に並んでいるときに鳴らせば、周囲の注目を集めることは間違いないだろう。
 
 レガッタ計時は時計の機能のなかでもとりわけ特殊な部類に入るだろう。この機能の有用性はボートレースに参加する人々に限定され、特にアメリカズカップやそれに近い形式のレースでないとX-33の真価は発揮されない。それを踏まえても、X-33全体を俯瞰して見るとこの時計に対する愛着が湧いてくる。軽量なチタンケースと厚みのあるデザインのおかげで、X-33は45mmというサイズにもかかわらず、実際には小振りに感じられる。付属するチタン製フォールディングバックル搭載のナイロンコーティングストラップを装着した状態でわずか78gしかなく、45mm径のスポーツウォッチとしては特に快適な装着感を有しているといえる。

アナログ表示とデジタル表示の両方が光る。デジタル表示のバックライトは、8時位置のボタンで作動する。
 90万2000円(税込)という価格のX-33 レガッタは、オメガのラインナップのなかでもとりわけ興味深く、奇妙な存在だ。お買い得感があるわけでも大衆向けの時計というでもなく、レガッタレースに必須のツールというわけでもない。ETNZ(エミレーツ・チーム・ニュージーランド)と第35回アメリカズカップとの協力で製作されたこの限定モデルはチームへのスポンサーシップを促進するための特別なエディションであり、クルーも着用していたが購入するのはETNZの熱烈なファンに限られるだろう。
 これほどニッチな存在であるにもかかわらずオメガがX-33を製作し、さらにレガッタに特化した限定版のためにムーブメントをカスタマイズしてより高い専門性を追求したことは非常に注目に値し、かつクールだと思う。僕はアナログとデジタルを組み合わせた時計に対する興味が高まってきているところで、X-33(レガッタモデルであろうとなかろうと)はそのスタイルのなかでも楽しく素晴らしい専門性を体現しているように感じられる。
オメガ X-33 レガッタの詳細については、オメガのウェブサイトをチェック。

日本と時計をテーマにした史上初めてのテーマオークション“TOKI(刻)”が

  • 2025/05/05 10:22
  • カテゴリー:ROLEX

世界的に見てもユニークなインディペンデントブランドが花開き始めた日本のマーケット。その中心にいる作り手たちはどのような思いを持ち、時計づくりに向き合っているのだろうか。今回のテーマオークション開催に伴い、彼らの声を聞くことができた。
佐藤杏輔
時計づくりを始めようと思ったきっかけは何ですか?
中島正晴
私は1990年の創業以来、アンティーク時計のレストアに携わってきました。部品供給の閉ざされたアンティークウォッチのレストアにおいては当時と同じ手法、質で部品を製作することが求められ、気がつけば、ほぼすべての部品を作るようになっていました。この技術を活かして、私たち独自の時計製作に着手しはじめたのが2013年ごろ、しかし紆余曲折ののち、最初の時計が完成したのは2024年の4月でした。
佐藤杏輔
口コミ第1位のロレックススーパーコピー代引き専門店!時計づくりを始めた当時と現在の時計市場を比べて、大きく変わったところ、変わらないところは何ですか?
中島正晴
時計の製作に着手し始めた2013年当時は、完成した時計のリリースにはバーゼルワールドなど世界的な展示会への出品が必要で、業界に新規に参入するのにはかなりのハードルがありました。しかし現在はこうした展示会へ出品しなくともInstagramなどのSNSを使い、独自に商品をリリースして受注することが可能になっており、この点が一番大きな違いだと思います。一方で、時計自体の独自性や質が大事である点においては、今も昔も変わりがないと考えています。

マサズパスタイムが手がけるカスタムウォッチの最初の1本(自社製ムーブメントを搭載するオリジナルウォッチではない)。

シルバー製ケースにレディスの懐中時計ムーブメントが採用されている。
佐藤杏輔
日本の時計師として、あるいは日本の時計ブランドとして、時計づくりで大切にしていることは何ですか?
中島正晴
ご存じのとおり、機械式時計の歴史はヨーロッパや英国が中心になっており、我が国発祥ではありませんでした。そういう意味では時計の構造や形態は必然的に西洋的なものにならざるを得ませんが、内外装の仕上げやデザイン、商品的なコンセプトといった部分には日本的な文化をフィードバックすることができます。一方で、安易に日本的なモチーフを導入すると“外国人向けのお土産時計”になる懸念がありますが、私のところではその点に留意しながら、時計の設計から製造に至るまですべて自社内の工房で完結させ、設計概念のブレない時計づくりを目指しています。

佐藤杏輔
海外の時計市場と比べて、日本の市場ならではの特徴や強みはなんですか?
中島正晴
現在のところ、弊社の顧客は海外のコレクターが中心です。そのため“日本の市場ならではの強み”とは少し違いますが、日本の市場ならではの特徴は総じて商品に対する要求が非常に細かい点だと感じます。
佐藤杏輔
日本の時計や時計ブランドが、今後世界でさらなるプレゼンスを発揮するには何が大切になると考えていますか?
中島正晴
現在、ヨーロッパをはじめ北米からも多くの独立時計師、インディペンデントメーカーが登場し、非常にユニークな時計、完成度の高い時計をリリースして市場で鎬を削っています。そうした状況において、決して奇をてらわず、奥ゆかしくも質の高い独自のコンセプトを持った時計づくりへのこだわりは、今後さらに大切になってくると感じています。

TOKI(刻)ウォッチオークション出品作品
BY MASAHARU WADA
オークションに出品されるマサズパスタイムの時計は2本あります。ひとつは同社が販売するオリジナルウォッチ、そしてもうひとつは19世紀後半の懐中時計のムーブメントをベースに腕時計化したリピーターウォッチです。
那由他モデル A 刻
マサズパスタイムでは、懐中時計のムーブメントを腕時計のケースに収めたカスタムウォッチを製作している一方、正真正銘のオリジナルウォッチも手がけています。現在、5種類のオリジナルウォッチがあり、那由他モデルA(スモールセコンド)と那由他モデルB-1(2針)、那由多モデルB-2(スモールセコンド)、そして完全自社ムーブメントを搭載する凪(なぎ)と蒼黒(そうこく)です。今回オークションのために製作されたのは那由他モデル Aをベースに特別な仕様が盛り込まれたものです。

那由他モデルは、時計師である篠原那由他氏を中心に、チームで製作された時計です。篠原氏は東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジ在籍中、第10回ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワードで最優秀賞を受賞した人物としても知られています。2021年からマサズパスタイムに所属する彼について、店主の中島氏はこう振り返ります。「3年前のある朝、スタッフが集まって賑やかに話していたので、何事かと思ったら、時計の雑誌にヒコ・みづのの研究生が自身で作った時計を出品し、ランゲ主催のコンクールで金賞を取ったというニュースだったんです。日本にこんな若者がいるんだと驚き、うちに来てくれたらおもしろいことができるかもね、なんて話していました」。

当時、篠原氏はマサズパスタイムでオリジナルの時計を作っていることは知らなかったそうですが、「一般的な会社では(自分の進路として)違うのかもしれないと感じ、マサズパスタイムなら自身の時計をつくる力を身につけられるのではないか」と考え、入社を決意したと語っています。入社後の篠原氏に対して、中島氏は「もちろんほかのスタッフの協力も必要ですが、彼には自由に時計をつくらせようと考えました。私が口を出すのは費用や完成品が使い捨てのような時計になることを避ける点だけで、それ以外は一切干渉しませんでした」と、その方針を述べています。こうして完成し、2023年に発表されたのが、2種類の那由他モデルなのです。モデル名のロゴは12時位置に配置され、“10^60”(10の60乗)と記された文字が那由他を象徴しています。

TOKI(刻)オークションに登場する那由他モデル A 刻は、38.6mmのステンレススティール製ケースを採用している点は通常生産モデルと共通ですが、ダイヤルの装飾が異なります。中央部分は、通常生産モデルに見られるストレートエンジンで彫られたギヨシェ装飾ではなく、彫金師の辻本啓氏によるハンドエングレービングの唐草模様に置き換えられています。また、アワーサークルの書体もヒゲが足され、全体的により華やかな印象を与えます。ブルースティールの針は篠原氏自身のオリジナルデザインです。

ケースバックからは、篠原氏が設計と製造を手がけたムーブメントを鑑賞することができます。ムーブメントの装飾も通常生産モデルに見られるより伝統的なコート・ド・ジュネーブやペルラージュではなく、奥の位置にエングレービングが施されているなど、その特別さが際立ちます。また、本オークションのために作られたユニークピースであることを示す“Nayuta A 刻 1/1”の刻印も確認できます。本作について篠原氏は「従来のものよりもブリッジによってエングレービングなどの装飾が異なるため、より歯車やテンプが浮き上がったような立体感のあるデザインにできた点が気に入っています」と語ってくれました。「ドレスウォッチなので剛性が高いわけではないですが、長く使える腕時計としてつくったものなので、ぜひたくさん使っていただけたらうれしいですね」

本作は、通常の那由他モデル同様に篠原氏という新時代の時計師の感性とマサズパスタイムのチームワークによって誕生しました。同モデル初のユニークピースであるという点が日本の時計界において極めて重要な時計であることを際立たせます。


LOT 112: Nayuta Model A 刻のエスティメートは、15万〜30万香港ドル(約290万〜589万円)。そのほかの詳細はこちらから。
マサズパスタイム カスタムリピーターウォッチ by マーク・チョー

Photo Courtesy: Phillips
今回のオークションで販売されるマサズパスタイムのもうひとつの作品は、マーク・チョー(Mark Cho)氏が特注したリピーターウォッチです。チョー氏は、クラシックメンズウェアショップ アーモリー(The Armoury)の共同設立者であり、英国のタイメーカー ドレイクス(Drake's)の共同オーナーとしても知られる人物で、熱心な時計愛好家でもあります。幸運にも僕はこのプロジェクトの進行中にチョー氏とともにマサズ パスタイムを訪れ、彼に話を聞くことができました。

チョー氏はこのプロジェクトの始まりについてこう述べています。「いつもリピーターウォッチが欲しいと思っていました。リピーターというのはすべての時計コレクターの夢です。でも腕時計サイズのものだと、なかなか理想の音を見つけられませんでした。マサ(中島正晴氏)はその夢を実現する最初の時計師でした」

チョー氏と中島氏によって、100年以上前の“A. Golay Leresche & Fils”の婦人用の懐中時計に使用されていたファイブミニッツ・リピータームーブメントが特別に選ばれました。「懐中時計として完璧な状態で残っていたムーブメントは、その音色の素晴らしさが際立っていました」と彼は語ります。本プロジェクトにおける最大のチャレンジは、現代の腕時計のサイズに合わせてスライダーを90°調整することだったと言います。ケースサイズは37mmで、新たに真鍮で作られました。真鍮製のケースはマサズパスタイムでしばしばプロトタイプに使われるものですが、驚くほどよい音色を奏でるという理由で採用されました。

 「私たちは数カ月かけて一緒にケースをデザインして、懐中時計のようなボリューム感と小石のような丸みのある形状に辿り着きました」とチョー氏は語ります。実際、最終的な製品として完成する前に別のケースも設計・製作されましたが、彼がベゼルプロポーションの変更を求めたことで、より丸みを帯びたデザインに仕上げられたのです。本モデルに名前があるか質問したところ「この時計には名前がありません。でも、もし名付けるとしたらリバーペブル・リピーター(川の小石)と名付けると思います(チョー氏)」と答えてくれました。

今回のオークションで販売される際には、オリジナルの18Kピンクゴールド製の懐中時計ケースと、当初デザインされた真鍮製のケースも付属します。さらにオリジナルの注文書、手書きのメモやスケッチも含まれており、マーク・チョー氏とマサズパスタイムがどのようにこの時計を作り上げていったかを物語る貴重な証となっています。

マサズパスタイムに向かうマーク・チョー氏。
 「実を言うとこのケースは真鍮製ですが、最終的にはホワイトゴールド製にし、ベゼルにシェブロン装飾をエングレーブした形で完成させることを望んでいました。もし未来の所有者が興味を持ってくれたら、私のもともとの計画に基づき、完成形に導くお手伝いを喜んでさせていただきたいと思います」。この作品は、時計コレクターであるマーク・チョー氏とマサズパスタイムの特別な作品を手に入れる機会となるだけでなく、彼らが思い描いた理想の形へと仕上げるためのバトンを次の所有者へ託すような意味も含まれているのかもしれません。
 LOT 113: ミニッツリピーターウォッチのエスティメートは、20万〜40万香港ドル(約390万〜785万円)。そのほかの詳細はこちらから。マサズパスタイムの詳細は公式サイトへ。

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