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2025年05月

クロノグラフの「フライバック」と「12時間積算計」について取り上げる。

パイロットウォッチがもたらしたふたつの新機能「フライバック」と「12時間積算計」
航空機の性能が劇的に向上した1930年代、パイロットウォッチもその姿を大きく変えた。この時代に採用された新機構の中で、後に大きな影響を与えたものがふたつある。それが12時間積算計とフライバック機構だ。

「フライバック」とブランド時計コピー n級品「12時間積算計」の誕生の経緯とは?

Photograph by Universal History Archive / Getty Images
1935年のボーイング「B-17 フライングフォートレス」は、高高度を長距離飛行できる革新的な爆撃機だった。延べ8680機が製造された。実用上昇限度約1万850m。重武装時の航続距離は約2977km(スペックはB17G型)。
ジュネーブ時計学校で教授を務めたフランソワ・ルクルトは1940年代当時、12時間のような長時間積算計が生まれた理由を次のように記した。

「スポーツが人気を得るにつれて、またおそらくは戦争の影響により、こういった計測機器(筆者注:クロノグラフのこと)への需要は大きく高まった。そして多くの生産者が、分積算計といったメカニズムの生産を始めたのは事実であった(後略)」(“A GUIDE TO COMPILICATED WTACHES”)

戦争の影響とは、より正しく言うと、長距離爆撃機の誕生である。1935年には、ボーイングが約3000㎞(非武装時は約6000㎞)もの「長い脚」を持つ爆撃機「B-17フライングフォートレス」を開発。以降、各国は長距離飛行が可能な航空機の開発に取り組むことになる。

1936年もしくは1937年に完成したのが12時間積算計付きのバルジュー72VZHだ。プレスの技術を持つバルジューは、1942年に、本作を含むクロノグラフを、年に6万本も製造した。
ムーブメントの直径を拡大することで、無理なくフライバック機構を載せたUROFA59。最も成功したフライバック機のひとつ。
世界で初めて12時間積算計を開発したメーカーがどこかは不明である。しかし、1930年代半ばから1940年代にかけて、マーテル、エベラール、バルジュー、ヴィーナス、そしてレマニアなどが続々と12時間積算計付きのクロノグラフムーブメントをリリースするようになった。その恩恵を最も受けたのは、アメリカ軍だろう。例えば、1942年6月の東京大空襲を指揮したジェームズ・ドゥーリットル大佐は、当時最新鋭だった12時間積算計付きのJARDURクロノグラフを巻いてB-24に搭乗した。この個体は、スミソニアンにある国立航空宇宙博物館に展示されている。

一方、クロノグラフを止めずに再起動ができるフライバックを必要としたのは、航続距離が短い戦闘機のパイロットたちだった。1936年のロンジン13ZNを皮切りに、1941年にはドイツのUROFAがフライバッククロノグラフの傑作59を完成させた。この複雑で高価なクロノグラフが約4万本も製造されたのは、何よりもルフトヴァッフェが必要としたためである。後に、フランス空軍はフライバックの有用性を認め、これを空軍のパイロットウォッチ規格に加えた。なお、ロンジンはさらにセンター60分積算計を加えた新しい13ZNを開発したが、これはまったく普及しなかった。

フライバックのUROFA59を搭載した、チュチマのクロノグラフ。約4万本が製造された。


多くのパイロットたちに望まれたにもかかわらず、12時間積算計とフライバック機構を載せたクロノグラフは、かなり高価であった。これらの機構を備えたパイロットウォッチが少ない理由だ。12時間積算計とフライバック機構が本格的に普及するのは、1980年代半ば以降を待たねばならない。

2024年新作の「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号」を着用レビューする。

アポロ8号の偉業をたたえる数々のディティールに触れながら、リニューアルされたダーク サイド オブ ザ ムーンの魅力を探る。

 

2024年に進化を遂げた「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号」
オメガスーパーコピー 代引き専門店の「スピードマスター」は、オメガのみならず、名作がひしめくクロノグラフウォッチにおいても代表作として親しまれているモデルだ。1957年に「シーマスター」や「レイルマスター」とともにデビューを飾り、レーシングドライバーやパイロット、エンジニアに愛用されたスピードマスターは、やがてNASA(アメリカ航空宇宙局)の制式装備として認定され、人類初の月面着陸にも同行することとなった。この偉業はスピードマスターに“ムーンウォッチ”の異名を与え、時計史に残る伝説として語り継がれていく。

 手巻きクロノグラフとして誕生したスピードマスターだが、その後多くの派生モデルを生み出したことでも知られる。流線形のケースを備えた「マークシリーズ」、デジタルディスプレイを備えた「X-33」、スポーティなデザインの「レーシング」をはじめ、個性豊かなスピードマスターが登場していった。

 今回レビューを行うのは、2024年に発表された「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号」だ。1968年に発射されたアポロ8号は、有人で初めて月を周回し地球へと帰還した宇宙船である。本作は2018年に登場した同名のモデルをアップデートしたものであり、一見して大きな違いはないものの、ダイアルのレーザーエングレービングの仕上がりや搭載するムーブメントなど、クォリティーが全体的に底上げされている。それらひとつひとつに触れつつ、本作の魅力を探ってみたい。

 


 

オメガ「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン アポロ8号」Ref.310.92.44.50.01.001
2024年にリニューアルを遂げた、“ダーク サイド オブ ザ ムーン”。太陽光の下では、ダイアルの月面パターンがくっきりと浮かび上がる。手巻き(Cal.3869)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。セラミックケース(直径44.25mm、厚さ13mm)。5気圧防水。220万円(税込み)。

 

リアルな月面パターンダイアル
 見どころ満載の本作だが、まずはダイアルから見ていきたい。基本的なレイアウトは「スピードマスター プロフェッショナル」と同じだ。3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドを配し、センターにはペンシル型の時分針とクロノグラフ秒針を取り付けている。そのような中で、本作のユニークさを印象付けている要素が大きく3つある。まずは月面をあしらったダイアル、ふたつ目がイエローを取り入れたカラーリング、そして精密に仕上げられたサターンV ロケット型の秒針だ。

 多層構造によるスケルトンダイアルは、ブラックの陽極酸化処理を施したアルミニウム製。レーザー加工によって、月の表面をモチーフとしたパターンが施されている。フラットな部分のマットな仕上げと艶のあるザラついた部分とのコントラストが立体感を生み、キズミを通して見ると、クレーターのひとつひとつまでがリアルに再現されていることが分かる。6時から9時位置にかけては、内部のムーブメントが露出しており、クロノグラフ起動時にレバーが動く様子を楽しむことができる。

 ダークトーンの本作にアクセントを加えているのが、随所にあしらわれたイエローだ。12時位置に配された“Speedmaster”の文字に加え、クロノグラフ機能で使用する3本の針とインダイアル、インデックスの外端が、鮮やかなイエローに彩られている。針とインダイアルに関しては、時刻表示用のものとクロノグラフ用のものを判別しやすくなるという実用的なメリットもある。

 イエローがもたらすスポーティーさを増幅させているのが、いわゆるグランプリタイプのミニッツマーカーだ。チェッカーフラッグのようなデザインが遊び心を添え、さらにダイアルに凝縮感をもたらしている。

 

立体的な構造のダイアル。最大の見どころは、9時位置のロケット型のチタン製秒針だ。キズミを使ってよく見ると、“USA”の文字まで精密に再現されていることが分かる。
 前作のダーク サイド オブ ザ ムーンとの外見上の大きな違いとなっているが、スモールセコンドのデザインだ。一見するとただのホワイトの針のようにも見えるが、よくよく目を凝らすとロケットの形になっていることが分かる。これは、アポロ計画で使用され、宇宙船を月軌道へと送り届けたサターンV ロケットを模したものである。筆者はロケットを正確に識別できる知見を持ち合わせていないが、実物のサターンV ロケットの写真と見比べる限り、ほぼ忠実に再現されているように思えた。また、一般的な針は平面的なつくりだが、この秒針は完全な円筒型である。斜めから見てもハリボテ感はなく、まるで月面にロケットが浮かんでいるような様子を楽しむことができる。もっとも、あまりにも小さいため、じっくりと鑑賞するためにはキズミが必須である。

 


ブラックセラミックス製ケース
 本作のケースは、ブラックセラミックス製である。近年、高級時計に使われることの多いセラミックスは、高い硬度と耐食性、抗アレルギー性を備えた素材だ。しかしながら製造や加工には高度な技術が要求される。セラミックスは、ジルコニウムなどの材料と結合剤を混ぜ合わせて成形し焼成することで製造されるが、焼成の際に体積が縮んでしまうため、わずかな寸法誤差も許されない部品に関しては、焼成時の環境や温度、時間を精密にコントロールしなければならない。さらに出来上がったセラミックスは非常に硬いため、仕上げを与えるにも一苦労だ。

 その点、本作ではクロノグラフウォッチとしての複雑なケース構造を持つにも関わらず5気圧防水を達成し、さらにポリッシュとヘアラインで仕上げ分けている。エッジもシャープに立っており、スピードマスター特有の精悍な印象が保たれている。同じくブラックセラミックス製のベゼルには、レーザーで彫り込んだ後にホワイトエナメルを流し込んだタキメータースケールが配されている。

 


 

ケースサイズは直径44.25mm。ポリッシュとヘアラインを使い分けたスピードマスターらしいデザインと仕上げをそのままに、耐傷性に優れるブラックセラミックスを採用している。
 ラバー製のストラップは、内部にイエローの層を挟んだ上でパンチング加工を施している。イエローのステッチとともに、ダイアルのカラーリングにマッチしたデザインだ。フォールディングバックルはチタンとセラミックスによって構成されている。

 ケースバックはスナップバック式のように見える。スピードマスターの多くはスクリューバック式であるが、セラミックスでは直接ネジを切ることが難しく、このような仕様になったのだろう。中央にはサファイアクリスタルが取り付けられ、内部のムーブメントを鑑賞することが可能だ。

 

プッシュボタンで簡単に開閉できるフォールディングバックル。剣先が飛び出ないため、見た目にもすっきりしている。

 

クロノグラフ特有のギミックを楽しめる手巻きムーブメント
 本作が搭載するCal.3869は、ざっくりと言えば現行のムーンウォッチが搭載するCal.3861にダーク サイド オブ ザ ムーン用の仕上げを施したものとして差し支えないだろう。メンテナンススパンを飛躍的に向上させたコーアクシャル脱進機と耐磁性に優れるシリコン製ヒゲゼンマイを搭載し、マスター クロノメーター認定を取得している。ルーツをたどればレマニア社製の古典的なクロノグラフムーブメントだが、そのスペックは現代におけるトップレベルだ。

 手巻き式であるため、ローターに阻まれることなく仕上げや動きを楽しむことができる。受けには月の裏側をモチーフとしたエングレービングが施され、ダイアルとの対比を成している。歯車やテンプにはグレー調のコーティングが与えられ、受けとの統一感のあるカラーリングだ。

 

月の裏側をモチーフとした仕上げを施したムーブメント。クロノグラフ特有の動きを楽しむことができるのも魅力。
 クロノグラフ機構の一連の動作をシースルーバックから鑑賞することができるのは、本作の大きな魅力だ。2時位置のボタンを押下すると、その動きがレバーを介してカムに伝わる。そのカムがキャリングアームをスライドさせることで、4番車とクロノグラフ輪列が中間車で連結され、クロノグラフが始動する。もう一度2時位置のボタンを押すと、今度は中間車による連結が解かれ、さらに4時位置のボタンを押下するとリセットハンマーが積算計の歯車を叩き、帰零させる。

 


直径44.25mmのケースは過大か?
 手巻きのスピードマスターについて、ケースサイズを懸念する声をよく聞くように思う。すなわち少し大きいのではないか、ということだ。カタログ値であれば、プロフェッショナルは直径42mm、ダーク サイド オブ ザ ムーンは44.25mm。確かに、決して小ぶりとは言えないサイズである。では、実際に大きいのだろうか.筆者は過去にプロフェッショナルを所有していたことがあるが、腕回り16.5cmの手首でさえ持て余している感覚はなかった。それは、今回レビューを行ったダーク サイド オブ ザ ムーンでも同じだ。本作のケースはプロフェッショナルに比べて大型だが、引き締まって見えるダークトーンで統一されているため、視覚的にコンパクトに見えるのだろう。しかしそれだけではない。

 

直径44.25mmという数値に対し、意外にも実際の腕乗りは良い。ちなみに筆者の腕回りは約16.5cmである。視認性は優れていると言いにくいが、本作のキャラクターを考えれば十分なレベルだろう。
 サイズを見る際に気を付けなければならないことがある。そのひとつは、ラグからラグまのケースの縦の長さである。プロフェッショナルであれば47.5mm、ダーク サイド オブ ザ ムーンでは50mmと、ケース径の割に比較的短い。ケースの縦が短ければ着用時に手首から飛び出るような印象にはなりにくく、細腕にも自然に溶け込みやすい。また、第4世代以降のスピードマスターが左右非対称のケースを採用していることも注目すべきだ。これは、NASAの要請によってリュウズガードを追加する際、ケースの側面を膨らませることで、ケースのデザインに一体化したリュウズガードを与えたためである。ブランドによって定義はまちまちだが、一般的な時計のケース径がリュウズガードを省いた数値で示されるのに対し、ミドルケースとリュウズガードの明確な境目が存在しないスピードマスターでは、それらを含んだ数値をケース径としている。ベゼル径で測れば、プロフェッショナルは約40mm、ダーク サイド オブ ザ ムーンでは約42mmであり、実態はカタログ値よりもやや控えめなサイズ感であることを留意しておきたい。細腕だからといって、スピードマスターを諦める必要はないのだ。

 サイズ感だけではなく、腕乗りも良い。ローターがないため裏蓋が薄く重心が低いことと、肉厚のラバーストラップがしっかりと手首に密着するからだろう。オメガの現行のフォールディングバックルは閉じた際に剣先が外側に出ないため、見た目にもすっきりとしている。

 

重心が低いことに加え、肉厚のラバーストラップがしっかりとヘッドを支えているため、長時間着用しても疲れにくい。強い衝撃が加わると割れる恐れがあるものの、傷が付きにくいのはセラミックスのメリットだ。
 視認性に関しては、残念ながら優れているとは言いにくい。インデックスは見やすいものの、複雑な構成のダイアルでは時分針がどこにあるのかを見つけるまでに少し時間がかかってしまう。とはいえ、リアルな月面をあしらったダイアルこそ本作の最大の魅力であり、視認性に重きを置くのであれば別のモデルを選ぶべきだろう。本作について視認性の点でケチをつけるのは野暮だ。

 


趣味性の高い、異色のスピードマスター
 手巻きクロノグラフというニッチなジャンルでありながら、高級時計の定番機として支持を得るスピードマスター。高級時計に興味を持ったばかりの方からマニアに至るまで、その実力を否定できる者はそういないだろう。一方、あまりにもメジャーであるということで入手することにためらいを感じる人や、飽きを感じる人も少なくないはずだ。ダーク サイド オブ ザ ムーンは、そんな人にこそふさわしいチョイスと言える。

 アポロ8号の偉業をたたえる月面モチーフのダイアルに、スモールセコンドとして機能する精密な仕上げのロケット、さらに艶やかで深みのあるブラックセラミックス製ケースは、プロフェッショナルでは決して味わうことのできない魅力を備えている。マスタークロノメーター認定を取得したムーブメントは、高い精度と耐磁性を発揮し、デイリーユースにも十分な性能を持つ。本作は、趣味性と実用性を高次元で両立させたモデルなのだ。

一部の時計愛好家たちは、大手ブランドではなくマイクロブランドに注目し始めている。

これまでの時計界では見られなかった発想に満ちたタイムピースが次々と登場し、主流ブランドに飽き足りないコレクターたちの好奇心を、大いに刺激しているのである。ボナムズ香港で時計部門ディレクターを務めるシャロン・チャンが、独立性と革新性にあふれた、マイクロブランドの魅力を紹介する。

大手に飽きたコレクターが注目、小さくとも強いマイクロブランド
腕時計ブランドが大手資本に買収されると、業績の安定を図るために新作の投入サイクルを短縮し、販売数の増加を狙うことが多い。しかしその結果、似たり寄ったりの腕時計が市場にあふれ、消費者はメインストリームのブランドに対して次第に飽きを感じるようになっている。こうした流れに反発する一部のコレクターは、個性ある小規模な独立系ブランド、いわゆる「マイクロブランド」へと関心を向け始めた。

カルティエ コピー販売おすすめ優良サイトマイクロブランドは目の肥えたコレクターも魅了
マイクロブランドは通常、生産本数が少なく、独立性と革新性を重視する。ラグジュアリーさを誇示せず、複雑機構を追求するわけではない。さらに、流行に迎合するということもない。筆者が最近参加した時計愛好家の集まりで、複数の参加者がマイクロブランドの腕時計を披露していた。その中でも、ジャンピングアワー機構とマラカイトの文字盤を備えたゼンティアの「ソテー」が特に注目を集めていた。

この集まりに参加したコレクターは、グランソヌリ、スプリットセコンドクロノグラフ、トゥールビヨンなど複雑機構を搭載した名品を数多く所有しており、普段はなかなか目にする機会の少ない独立時計師の作品すら買い集めている。そうした猛者たちが、価格にして8000香港ドル(約14万9120円、1香港ドル=18.64円、2025年5月17日現在、以下同)ほどで発売されていたゼンティアのソテーに対しても、名だたる高級腕時計に劣らぬ愛着を示していたのだ。

魅力的な価格の手頃さ
マイクロブランドがここ数年で時計界において急速に人気を高めたのには、いくつかの理由がある。まず挙げられるのは、価格の手頃さだ。経済的に余裕のある時計愛好家であっても、購入にはやはり慎重になる。マイクロブランドは比較的低価格で、十分に他ブランドにはない新鮮な感覚を楽しめる点が魅力だ。

また、コロナ禍明けで人々が旅行に出かけるようになり、旅先で気に入った腕時計を見つけた際、マイクロブランドであれば入手しやすく、持ち歩く際の安全面でも主流ブランドほど気を使わなくて済む。さらに、転売時の損失をあまり心配せずに済むという安心感もあるだろう。

コレクターの好奇心をかき立てる自由な発想
価格面以外にも、マイクロブランドのデザインは、時として独立時計師の作品以上に突き抜けた独創性を持つことがある。独立時計師が尻込みするか、もしくは軽視するような奔放な意匠や機構の組み合わせも、マイクロブランドであれば思いのままに表現することが可能だ。この自由さこそが、主流ブランドに飽きたコレクターの好奇心をかき立てるのである。

加えて、こうしたハイエンド層の多くは、人と被らない腕時計を求める傾向にあり、限定生産を基本とするマイクロブランドは、そのニーズにぴたりと合致する。

高級時計市場でも「個性」を重視か

ミン「20.11 モザイク」Ref.2011M
自動巻き(Cal.ASE200.2)。2万1600振動/時。パワーリザーブ約86時間。Tiケース(直径41.5mm、厚さ14mm)。50m防水。6万1440香港ドル(約114万4282円、バイヤーズプレミアム含む)にて落札された。
この新たな潮流は、腕時計のオークション市場にもすでに表れている。たとえば香港のボナムズでは、昨年開催された腕時計オークションでマイクロブランドの姿が確認された。マレーシア・クアラルンプールとスイスのラ・ショー・ド・フォンを拠点とするブランド、ミンの「20.11 モザイク」と、日本のクロノブンキョウトウキョウの「カランドリエ Type 1」である。この2本はいずれも事前の予想を上回る価格で落札され、いまや高級時計市場が単なる資産価値だけでなく、「個性」を重視するようになってきたことを物語っている。

クロノブンキョウトウキョウ「カランドリエ Type 1」
自動巻き(MIYOTA Cal.9122)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径38mm)。5気圧防水。数量限定。2万4320香港ドル(約45万3713円、バイヤーズプレミアム含む)にて落札された。
きめ細かなオーダーが可能なブランドも
「個性」という観点からすると、マイクロブランドはもうひとつの強みを持つ。それは、定型や伝統に縛られることがなく、極めて自由なオーダーが可能であるという点だ。インデックスや針の形状から、文字盤やケース素材に至るまで、きめ細かくカスタマイズでき、文字の刻印まで対応することも珍しくない。

このようなデザインの柔軟性は、ブランドと購入者との直接的な対話とつながりを生み、結果としてブランドに対するロイヤルティーを高めている。

SNSがマイクロブランドの追い風に
さらに、SNSの普及もマイクロブランドの成長を後押ししている。ユーザー自身の発信によって、潤沢なマーケティング予算を持たなくとも、ブランドの理念や個性を効率的にターゲット層に届けることが可能となった。

マイクロブランドに注目すべし
世界経済が減速する中にあって、マイクロブランドは新たな時代の波に乗る存在として頭角を現しつつある。手頃でありながら個性あふれるその魅力は、今後も決して見過ごすことはできないだろう。

著者「シャロン・チャン」プロフィール
シャロン・チャンは、アジアにおけるボナムズ時計部門のディレクターである。香港を拠点に、アジア太平洋地域の事務所と密接に連携し、同部門が年に10回開催するオークションの監督を務めている。

シャロン・チャン/ボナムズ香港 時計部門ディレクター
シャロン・チャンは、ボナムズに入社し、オークションビジネスに復帰する前の2017年から18年の間に、個人でウォッチディーラーとクライアントコンサルタントを行い、専門家としてのキャリアを築いた。その豊富な経験から、世界中のコレクターとの間に強力なコネクションを持ち、アジアにおける腕時計市場拡大において重要な役割を担っている。


これまで多くの国際的なオークションハウスでのジュエリーと時計のオークションビジネスにおいて、17年以上の経験を積み、2011年から16年にかけては、香港で時計オークションを指揮。売り上げを年々拡大し、13年にはアジアでの時計販売で最高額を達成した。また、世界最大級のプライベートウォッチコレクションの監督責任者を務め、15年のオークションで600万USドルという新記録を打ち立てた。

ローヌブルー(Rhône Blue)ダイヤルを備えたXLクロノは、

ショパールのもっともスポーティなモデル、アルパイン イーグルに新たなバリエーションが加わった。直径44mmのチタンケースに“ローヌブルー”のイーグルアイダイヤルを備えた大胆なモデルだ。また、アルプスの環境保護に対するブランドのコミットメントの一環として、売上の一部はアルパイン イーグル・ファウンデーションに寄付されるということだ。

口コミ第1位のスーパーコピー 代引き専門店!新作アルパイン イーグル XL クロノは、ピンバックル留めのラバーストラップにフライバッククロノグラフ、4時半位置に配されたデイト表示、30分積算計、12時間積算計を備えたショパール製のクロノメーター認定自動巻きムーブメント03.05-Cを搭載する。しかし、ブルーダイヤル(ダイヤル外周のブラックタキメータースケールとのコントラストが際立つ)に加えてグレード5 チタン製のケースを採用したことで、これまでルーセントスティール™とエシカルゴールドに限られていたラインナップに新たな金属素材が加わったことになる。また、スティールよりもケースの色は濃く、耐食性を向上させるアルミニウムとバナジウムの合金は既存のモデルよりも軽量であることを約束してくれる。


この時計はショパールのブティックでのみ販売される予定だ。価格は369万6000円(税込)となっている。

我々の考え
完璧に仕上がったショパール アルパイン イーグルは、私のお気に入りの時計のひとつであり、今もっとも過小評価されているブレスレット一体型スポーツウォッチかもしれないと考えている時計である。昨年発表されたサーモンダイヤル(デイト表示なし)のXPSのように、このブランドのコレクションのなかでも最高級のものは画面では素晴らしく見えるが、実物を見つけるのはまだ本当に難しい。この時計は、ややスリムな兄弟機に匹敵する仕上がりなのだろうか? どちらも実際に見てみないとわからない。

13.15mmの厚みとラバーストラップは、ブレスレットのルーセントスティール™モデルとは明らかに異なる装着感をもたらすだろう。しかし、“ローヌブルー”ダイヤルは印象的で、グレード5のチタンを採用しているため、軽くてつけやすいスポーツウォッチが欲しい人には最適な選択肢となるはずだ。私はXLクロノを実際に扱ったことがないので、新作のスペックからどれだけのことが読み取れるか分からない。だが、もしもっと語るべきことがあれば間違いなく今後続報をお届けすることになるだろう。

基本情報
ブランド: ショパール(Chopard)
モデル名: アルパイン イーグル(Alpine Eagle XL Chrono)

直径: 44mm
厚さ: 13.15mm
ケース素材: グレード5 チタン
文字盤色: 鷲の虹彩をイメージしたサンバーストパターンを型押しした真鍮製ダイヤルに、PVD加工で“ローヌブルー”を施した
インデックス: ロジウムメッキの数字とアワーマーカー植字
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: チタン製インサートを内蔵したブラックラバーストラップ、チタン製ピンバックル

ムーブメント情報
キャリバー: ショパール03.05-C
機能: 時、分、センターセコンド、クロノグラフ秒針、3時位置に30分積算計(針はセミインスタントジャンプ)、4時30分位置にデイト表示、フライバック機能付きクロノグラフ、ストップセコンド針
直径: 28.8mm
厚さ: 7.6mm
パワーリザーブ: 60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 28,800振動/時
石数: 45
クロノメーター認定: あり(COSC認定)
追加情報: 垂直クラッチ、タングステン合金製透かし彫りローター

価格 & 発売時期
価格: 369万6000円(税込)
発売場所: ショパールブティック限定

最も広く普及しているのは24時間表示の副時針が備わるGMTウォッチである。

1884年10月1日から11月1日の期間、ワシントンD.C.で開かれた「国際子午線会議」の決議により、世界は24のタイムゾーンに分けられた。そのとき、イギリス・グリニッジ天文台の時刻を世界標準時=GMT(Greenwich Mean Time)とすると定めた。GMTウォッチは24のタイムゾーンのうちのひとつを24時間表示の副時針=GMT針で示す。原初的なメカニズムでは、主時針とGMT針が同じ時刻を指し、24時間インデックスが備わる回転ベゼルを時差分まわしてGMT針で第2の時刻を知る仕組みであった。そしてGMT針もしくは主時針が単独で操作でき、ダイヤルの24時間インデックスでも異なる時間帯が読み取れるように進化した。

Caller GMT

ベル&ロス スーパーコピー BR 05 GMT ホワイト、78万1000円

チューダー ブラックベイ GMT S&G、86万200円
 GMTウォッチのなかで、GMT針を単独操作できるモデルを、HODINKEEではCaller(コーラー、発信者)GMTと呼ぶ。主時針が示すホームタイムが主役であり、自国にいながら海外に住む家族や友人、取引先の現在時刻をGMT針で知り、連絡するタイミングを計るのに便利だからだ。海外渡航時にGMT針を現地時間に合わせることができるが、日付は主時針と連動するためしばしば現地に合わない。そこで現地に到着したら主時針を現地時間に合わせ、日付も再設定したあと、GMT針をホームタイムに合わせるユーザーも少なくない。そして帰国後は同様に、主時針と日付をホームタイムに合わせ直す。少々煩わしいが、Caller GMTはモデル数が多く、比較的手ごろな価格帯からも選ぶことができる。その理由はETA 2893とそのクローンであるセリタのSW330という汎用ムーブメントが存在するからだ。ここで取り上げたCaller GMTウォッチのほとんどが、これらいずれかのキャリバーをモディファイしている。唯一の例外がセイコー5 スポーツ SKX Sports Style GMTで、自社製Cal.4R34を搭載する。

Cal.7はタグ・ホイヤーの日付表示付き3針ムーブメントであるCal.5にGMT機構を加えたものだ。同社のようにETAやセリタといった汎用ムーブメントをベースにするメリットは大きい。数多くのブランドに採用され改良され続けることでムーブメントの信頼性が高まり、また大量生産によってコストを抑えることが可能だ。そのぶんを外装や装飾などほかの部分に予算をかけながらも良心的なプライスで提供できるのだ。
 セイコーも含め操作方法はどれも同じ。リューズをひとつ引いたポジションで右に回せば、GMT針が1時間刻みで前に進む。そして同じポジションで左に回すと、通常の日付調整ができる。操作方法が共通しているのは、いずれもデイト付きのセンターセコンド自動巻きに、GMTモジュールを追加しているから。ETA2893-2のベースはETA2892A2(SW300)、セイコーのCal.4R34は4R系がベースだ。ゆえに日付は主時針と連動し、日付の単独調整もできる。

ブライトリング クロノマット オートマチック GMT 40、79万2000円(左)。タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300 キャリバー7 GMT、47万8500円(中)。バルチック アクアスカーフ GMT、17万500円(右)
 またセイコー 5スポーツやバルチック アクアスカーフ GMTのように、原初的GMTウォッチから両方向回転の24時間ベゼルを受け継ぎ、3タイムゾーンとしたモデルも数多い。幅広の回転ベゼルが備わる姿はダイバーズウォッチに似て、スポーティな印象となる。タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300 キャリバー7 GMTは、まさにダイバーズウォッチのコレクションからの一本で、ベゼルは両方向回転に改められている。そのベゼルを昼夜でツートンに色分けするのは、もはやお約束である。ブライトリングのクロノマット オートマチックGMT 40も回転ベゼルが備わるが、分単位の経過時間を計る航空用として、コレクションのDNAを守った。一方でベル&ロスは、都会的なブレスレットウォッチ「BR 05」にGMT機構を与え、ビジネスシーンでも使いやすく仕立てた。それぞれのモデルは主時針とGMT針とをいかにして視覚的に切り分け、視認性を高めるのかを考察しており、針形状や色に各社の工夫がくみ取れる。

Flyer GMT
 セイコー 5スポーツのCal.4R34は、2022年に登場したCaller GMTキャリバーという点において異例の存在である。理由は2010年代半ば以降開発される自社製GMTキャリバーの大半が、主時針を単独操作できる設計を採っているから。海外渡航時に主時針を現地時間に合わせ、ホームタイムをGMT針で知るため、これをHODINKEEはFlyer(フライヤー、渡航者)GMTと呼んでいる。その先駆けとなったのが、1982年に誕生したロレックスのGMTマスター IIだ。Caller GMTウォッチがセイコーを除き、汎用ムーブメント搭載だったのに対し、Flyer GMTウォッチの大半は、自社製ムーブメントが採用されている。冒頭に登場したグランドセイコーは独自のスプリングドライブによるクロノグラフにGMTを搭載。さらに言えばセイコーは、自社製の機械式とクォーツにもFlyer GMTキャリバーをラインナップしている。チューダーもFlyer GMTのマニュファクチュールキャリバーを持つ。パネライのルミノール ビテンポが搭載するCal.P.9012は少し異例で、GMT針は12時間運針となっている。これも主時針側が現地時間に合わせられる設計で、第2時間帯表示が不要な自国に居る際は、2本の時針を重ねておけば、ダイヤルが見やすく整理される。

Cal.9R86は機械式とクォーツ式のハイブリッドなメカニズムを備えたグランドセイコー独自のスプリングドライブに、クロノグラフとGMT機構を備えたムーブメント。本機のように追加の機構によってさらに複雑になる場合は、初めから自社製ムーブメントとして設計されるものも多い。Caller GMTよりも高価になりがちなのはそのためだ。
 これらFlyer GMTキャリバーは、Caller GMTキャリバーと基本的な操作方法は同じだ。リューズを一段引いた状態が、主時針の単独操作位置。1時間刻みで進めることも戻すこともでき、日付も連動する。このローカルジャンピングアワー機構は、時差がプラスとマイナスどちらの国に出かけても針調整がたやすく、帰国後にホームタイムに戻すのも楽。一方で日付の単独調整はできず、ローカルジャンピングアワー機構で日付を進めるか戻すしかない。

 ではFlyer GMTキャリバーは、どのような設計となっているのか?

パネライ ルミノール ビテンポ、149万6000円(左)。カール F. ブヘラ パトラビ トラベルテック カラーエディション、206万8000円(右)
 前述したとおりCaller GMTキャリバーは、既存ムーブメントに24時間GMTモジュールを追加している。一方Flyer GMTキャリバーは、既存ムーブメントの時針を24時間運針に改良し、あるいは24時間運針のキャリバーを新開発し、これに12時間運針のジャンピングアワー機構モジュールと、それに連動するデイトモジュールを載せている。すなわちムーブメントが直接駆動しているのは、GMT針側。チューダーが、「GMT機能を内蔵した一体型」とアナウンスしている理由だ。そのブラックベイGMT S&Gは、両方向回転の24時間ベゼルが備わる3タイムゾーンウォッチとなっている。ブラウン×ブラックのツートンベゼルを、愛好家はルートビアと称する。グランドセイコーのSBGC251も両方回転の24時間ベゼルが備わるが、ブラックのワントーンとしているのがかえって新鮮である。カール F. ブヘラのパトラビ トラベルテックは、機械式のクロノグラフGMT。ダイヤル外周に備わる2重の24時間インデックスの内側が回転式のインナーベゼルで、10時位置のボタンを押すたびに1時間刻みで回転する。その際ボタンを回せば、右回りと左回りが切り替えられ、地球の東西どちらの方向に移動しても、設定が容易となっている。

アクセシブルなFlyer GMTの登場
 操作性に優れるFlyer GMTウォッチは長く自社製ムーブメントにしかなかった。それゆえ多くが高額モデルである。それがここ数年来でミドルレンジの価格帯にもFlyer GMTウォッチが数こそ少ないが登場しはじめている。ロンジン スピリット Zulu Timeとノルケインのフリーダム 60 GMTがその代表例である。日付の単独調整機構を持たないローカルジャンピングアワー搭載である点は、前出の自社製Flyer GMTキャリバーと同じ。では、なぜ価格を下げられたのか? 理由は、汎用ムーブメントの存在にある。
 以前、ロンジンのマティアス・ブレシャンCEOにインタビューした際、「Zulu Timeのモジュールは、自社製」だと語っていた。それを載せるベースムーブメントは、ETA A31.L01の時針を24時間運針とした改良版であり、さらにそのETA A31.L01はETA 2892-A2をロービート化し、ヒゲゼンマイをシリコン製とした進化系である。ロンジン スピリットZulu Timeが搭載するCal.L844.4は、前述したCaller GMTキャリバーETA 2893-2を進化させたロンジン仕様だと言える。ロービート化などによる65時間の長時間駆動とシリコン製ヒゲゼンマイの高耐磁性能を併せ持ち、さらにCOSCも取得可能なほど高性能な汎用ムーブメントをベースとすることで、ミドルレンジの価格で魅力的なFlyer GMTが実現された。両方回転の24時間ベゼルのリングは、セラミック製。これは同じスウォッチグループ傘下にセラミック技術に優れたコマデュール社がある恩恵であろう。

Cal.NN20/2はノルケインとケニッシ社のパートナーシップによって誕生したGMT機構搭載ムーブメント。基本設計はケニッシ社が担い、仕上げと装飾など細部をノルケインが担当した同社のエクスクルーシブ仕様だ。COSCクロノメーター認定を受けている。
 一方ノルケインはフリーダム 60 GMTが搭載するCal.NN20/2を“マニュファクチュールムーブメント”だと謳う。その開発・製造は長期パートナーシップを締結したムーブメント会社、ケニッシ社と行っている。同社のバックボーンや成り立ちを、多くの読者はご存じのことであろう。そこが製造する“GMT一体型キャリバー”の実績がすでにあり、信頼性が確認されていることも。Cal.NN20/2は、ローターにダブルNのロゴを刻んだノルケイン専用仕様。ノルケイン独自の生産体制によって、価格を抑えることができたのだ。

ノルケイン フリーダム 60 GMT、61万6000円(左)。ロンジン スピリット Zulu Time、47万1900円(右)
スーパーコピーのケニッシ社は、他社に供給ができる汎用Flyer GMTキャリバーの、現況では唯一の作り手である。供給先をかなり限定しているが、現在建設が進む新ファクトリー完成の暁には増産が望める。ETAとセリタの汎用ムーブメントによって、Caller GMTウォッチは広く普及した。そのFlyer GMTウォッチにおける役割をケニッシ社が果たしてくれることを期待したい。また既存ムーブメントの時針を24時間運針に改良することは比較的容易だ。ローカルジャンピングアワーモジュールの設計もさほど複雑ではない。新たな量産型汎用Flyer GMTキャリバーの誕生は夢物語ではなさそうだ。エントリー価格のFlyer GMTウォッチが、近い将来登場するかもしれない。

ジュルヌの日本ブティック20周年を記念して、

今年の初め、F.P.ジュルヌは最後のひと花を咲かせたあと、静かに限定版のリリースを終了すると発表した。ブランドは年間約1000本の機械式時計と500本のクォーツウォッチのみ製造しているため、“限定版”というラベルはすでに希少性を持っている。19年間製造が続いた“東京ブティック アニバーサリーシリーズ”はその限定エディションのひとつだ。そして今回、東京ブティックの20周年を記念して発表された新しい手巻きフライバッククロノグラフ FBは、限定版ジュルヌへの壮大な別れを告げるモデルとなる。

クロノグラフ FBは、フランソワ・ポール・ジュルヌが毎年新しいキャリバーを発表するという実績を引き継いでいる。搭載される18Kローズゴールド製のCal.1518.2は、ブランド初となる手巻きの単一(スプリットセコンドではない)クロノグラフだ。このキャリバーはフライバック機能と6時位置にビッグデイト表示を備える。ほかの東京シリーズと同様に、オメガ スーパーコピー優良サイト同ムーブメントはポリッシュ仕上げのチタンケースに収められ、18K6Nゴールド製リューズとプッシュボタンが付いており、全体のサイズは40mm×10.4mmである。また東京シリーズと一致するのは、ルテニウムコーティングされたギヨシェシルバーダイヤルに、オレンジのパッドプリントアラビア数字が配されていることだ。ダイヤル9時位置には60秒計(スモールセコンド)、3時位置には60分積算計を備え、どちらもムーブメントが見えるように少し開口部が設けられている。なおパワーリザーブは約80時間だ。

新しいクロノグラフ FBにはもうひとつ特徴がある。通常のクロノグラフ秒針は1分で1回転するが、このモデルは2分で1回転する(そのために60秒計が必要)。その結果、タキメータースケールは1000mを基準に、300から30までの目盛りを表示した。本モデルは200本限定で製造され、価格は9万スイスフラン(日本円で約1573万8000円)である。

我々の考え
今年の初めにF.P.ジュルヌの製造工房を訪れたあと、私はブランドに対する新たな感謝の気持ちが芽生えた。新しいクロノグラフ FBを初めて見たとき、複雑な感情を抱いたのだ。東京ブティック アニバーサリーシリーズは、ジュルヌ初となるブティックのふさわしいトリビュートであり、レッド、グレー、ゴールド、ホワイトの組み合わせで、ブランドの象徴的な作品がいくつも発表されてきた。このシリーズは2005年にクロノメーター・ スヴラン(20本)から始まり、2006年にはクロノメーター・レゾナンス(12本)が続いた。次に2007年にトゥールビヨン・スヴラン(20本)、2009年にはオクタ・ パーペチュアル(99本)がリリース。さらに、2016年には各ブティックの10周年を記念したサンティグラフ・スヴラン(合計80本)が発表された。私にとって何が問題かというと、色が好きではないということだ。

まあ、それは大したことではない。何人かのジュルヌコレクターから聞いた話だが、彼らはこの東京セットをコンプリートさせるために、同モデルを手に入れようとしていた(世界で12セットしか完全なコレクションが完成しない可能性がある)。彼らのみならず、多くの人々がF.P.ジュルヌ初の手巻き単一クロノグラフを手に入れたいと考えるだろう。正直なところ、手巻きクロノグラフは、多くの高級マニュファクチュールにとって標準的な(そしてしばしば称賛される)モデルであるため、ジュルヌがこれまでこのような時計をつくっていなかったことに驚く人もいたはずだ。
とはいえ、ジュルヌはクロノグラフ分野の経験が豊富だ。オクタ・クロノグラフは2001年にリリースされたが、自動巻きムーブメントを搭載していた。そのあと登場したサンティグラフ・スヴランや、ラインスポーツ・コレクションのクロノグラフ・モノプッシャーラトラパンテは、いまでも私のお気に入りのスプリットセコンドクロノグラフのひとつである。ただこの新しいフライバッククロノグラフは、F.P.ジュルヌ初の伝統的な手巻きクロノグラフなのだ。200本あるうちのひとつを手に入れられなかった人々にとっては残念だが、このキャリバーは今後どの時計にも再び使われることはないだろう。

基本情報
ブランド: F.P.ジュルヌ(F.P.Journe)
モデル名: クロノグラフ FB(Chronographe FB)

直径: 40mm
厚さ: 10.4mm
ケース素材: ポリッシュ仕上げのチタン(18K6Nゴールド製リューズとプッシャー)
文字盤: ルテニウムコーティングのシルバーギヨシェ
インデックス: オレンジのパッドプリントアラビア数字、セミオープンカウンター、ホワイトのタキメータースケール、5Nゴールドメッキ、レッドラッカーとアイボリーのスティール針
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: バーガンディアリゲーターレザー、18K6Nゴールド製フォールディングクラスプ

ムーブメント情報
キャリバー: 1518.2(18Kローズゴールド製)
機能: 時・分・スモールセコンド、ビッグデイト表示、フライバッククロノグラフ(9時位置に60秒計、3時位置に60分積算計)
直径: 34.2mm
厚さ: 5.9mm
パワーリザーブ: 約80時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 25
クロノメーター: なし

価格 & 発売時期
価格: 9万スイスフラン(日本円で約1573万8000円)
発売時期: 発売中
限定: あり、世界限定200本。ブランド最後の限定シリーズ

同ブランドは特に人気の高いふたつのコレクションを融合させ、

ローラン・フェリエ クラシック オート サンドストーンでふたつのコレクションが融合。

ローラン・フェリエほど、クラシカルでありながらモダンなテイストをあわせ持つブランドはほかにない。同ブランドは特に人気の高いふたつのコレクションを融合させ、ブランドらしさを余すところなく表現した新モデルをGeneva Watch Days 2024を皮切りに発表した。ローラン・フェリエを知っている人ならクラシック マイクロローターもよくご存じのはずだ。これは革新的な時計技術と最高級の仕上げを兼ね備えている。過去数年間におけるブランドのリリースを振り返ると、一体型ブレスレットを備えたスポーツ オートに明確な重点が置かれており、ブランドのデザイン言語を新たな時計カテゴリーへと見事に拡大している。

本日発表されたローラン・フェリエのクラシック オートは、クラシック マイクロローターとスポーツ オートを見事に融合させたモデルだ。人気のスーパーコピー時計 代引き専門店その結果は驚くほど調和している。ケースのシェイプ、針、ダイヤルのインデックスはクラシック マイクロローターからインスピレーションを受けており、一方でムーブメントや十字ダイヤルのディテール、そして日付表示窓はスポーツ オートから受け継がれている。すべてが一体となって、ブランドが理想とする日常使いに最適な時計が完成したのだ。


初代クラシック オートにおいて、ローラン・フェリエはヴィンテージウォッチの温かみあるトーンを意識したサーモンカラーダイヤルを採用した。中央部分はバーティカルサテン仕上げが施され、外周のミニッツトラックには円形のサテン仕上げを採用。絶妙なツートンの外観が特徴だ。細長く緩やかに傾斜した日付表示窓は、視線を自然に引き寄せるとともに、細長いインデックスとの対称性を保つ役割を果たしている。アセガイ型の針とドロップ型のインデックスはどちらも18Kホワイトゴールドで仕上げられ、手首の印象を引き締めてくれる。ケースはステンレススティール製で、直径40mm、厚さ11.94mmとバランスの取れたプロポーションを持つ。

クラシック オートにはローラン・フェリエの自動巻きCal.LF270.01が搭載されている。同ムーブメントは以前スポーツケースにのみ搭載されていたもので、設計、装飾、組み立て、調整はすべてブランドの工房で行われている。なおローラン・フェリエの特徴であるナチュラル脱進機ではなく、耐衝撃性を考慮してスイスレバー脱進機が採用。Cal.LF270.01は、139もの手作業による仕上げ工程を経てひとつのムーブメントが完成する。これらの精緻な仕上げはシースルーバック越しに鑑賞可能だ。プラチナ製のマイクロローターは、フルに巻き上げると約72時間のパワーリザーブを確保できる。


クラシック オート サンドストーンは、ローラン・フェリエの“セリエ アトリエ”プログラムの一環として提供されている。このプログラムは限定20本のナンバリングされたモデルが、5万スイスフラン(日本円で約855万円)の価格でブランドから直接販売される。これにより、コレクターは通常よりも短い納期で手に入れることができるのだ。このセリエ アトリエプログラムは2020年から実施されており、これまでの限定生産品はすべて完売している。

我々の考え
2009年の創業直後、ローラン・フェリエは時計業界の寵児となった。若いブランドでありながら、2010年にはクラシック トゥールビヨン ダブルスパイラルでGPHG(ジュネーブ時計グランプリ)のベストメンズウォッチ賞を受賞し、一躍注目を浴びた。その後、ローラン・フェリエはクラシックなシェイプをもとに、さまざまな複雑機構やダイヤルカラーを取り入れたモデルを発表し、ファンを獲得していった。しかしある時期から時計業界はほかに目を向けるようになり、ローラン・フェリエにスポットライトが当たることはなくなった。それでもローラン・フェリエは歩みを止めなかった。ブランドは卓越した仕上げと伝統的なデザインを追求し続けたのである。

現実として、クラシックなデザインと仕上げを持つ腕時計がこの価格帯で提供されると、やがて飽和状態に達することがある。ローラン・フェリエにも同様の状況が起きたのだ。洗練されたクラシックなデザインを守り続ける姿勢は、一体型ブレスレットのスポーツウォッチといったトレンドへの挑戦に際して、注目を集めることもあれば逆に関心が薄れることもある。コレクターの好みがそのブランドのデザインに合っているときは順調だが、スポーツウォッチが流行しているときにはローラン・フェリエのようなブランドが優先されないこともある。これは当然のことだ。
 私はこのブランドの大ファンであり、ローラン・フェリエへの注目が再び高まっているのを実感している。全体的な流れで見ると、時代の流れがローラン・フェリエに向かっており、タイムレスなデザインや全体的な“ドレス”の美学に焦点が当たっているようだ。もしブランドが今日のクラシック オート サンドストーンやWatches & Wonders 2024で発表したクラシック ムーンのような素晴らしい製品を作り続けることができれば、ローラン・フェリエは“復活”への道を順調に進むだろう。新作は美しく魅力的であり、ローラン・フェリエのデザインを少しアレンジしながらも、コレクターが期待する要素をしっかりと提供している。


現在のローラン・フェリエにはまさに、“まず先につくれば、そのあとで客が来るだろう”という状況が訪れている。注目に値する瞬間だ。

基本情報
ブランド: ローラン・フェリエ(Laurent Ferrier)
モデル名: クラシック オート サンドストーン(Classic Auto Sandstone)
型番: LCF046.AC.B2G1

直径: 40mm
厚さ: 11.94mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: 銅色調のラッカー仕上げ
インデックス: 18Kホワイトゴールド
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ダークブラウンのカーフレザー、同色系のアルカンターラライニング


ムーブメント情報
キャリバー: LF270.01
機能: 時・分・スモールセコンド、日付表示
直径: 31.6mm
厚さ: 4.85mm
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 31
部品点数: 215

価格 & 発売時期
価格: 5万スイスフラン(日本円で約855万円)
発売時期: すぐに
限定: あり、世界限定20本

オメガ スピードマスター X-33 レガッタ

  • 2025/05/07 09:56

第35回アメリカズカップとエミレーツ・チーム・ニュージーランド(ETNZ)のために特別に作られたオメガ スピードマスター X-33 レガッタは、オメガの革新的なスピードマスター X-33の進化版にあたるモデルだ。専門性の高い特殊進化は昆虫に特徴的なものだといわれているが、それが真実ならばX-33 レガッタはスピードマスターにおけるカマキリにほかならない。高度に専門化された、比較的異質な存在だ。特に神聖な“ムーンウォッチ”ラインナップのなかではひと際異彩を放っている。

オメガスーパーコピー代引き 激安の僕はスピーディのファンのなかでもはみ出し者に違いないが、現在のX-33を理解するにはその歴史を簡潔に振り返ることが重要だと考えている。オリジナルのスピードマスター プロフェッショナル X-33は1998年3月、ヒューストンのジョンソン宇宙センターで多くの観客を前に発表され、そのイベントではミール宇宙ステーションからの初の公開テレビ生中継も行われた。X-33はとにかく大胆なデザインだったが、その機能性の基礎は1980年代半ばのオメガ シーマスター マルチファンクションに見られる。

(左)1986年製のオメガ シーマスター マルチファンクション。Photo: Omega Museum、(右)2016年にクリスティーズのオークションに出品された初期のスピードマスターX-33。Photo: Christies
 1998年にこの斬新なミッションタイマーが一般に公開されたころには、同モデルはすでに軍用や宇宙空間での使用が進んでいた。1990年代半ばにフライトマスター X-33として初登場したこの時計は、いくつかの試作機やプレプロダクションモデルがオメガによって製作されており、その開発には数名の宇宙飛行士やブルーエンジェルス、サンダーバーズといったジェットチームの選抜パイロットたちが関与していた。一般販売される前にこれらの試作機は国際宇宙ステーション(ISS)やミール、さらには航空分野でも使用され、ある個体はMiG-15の墜落事故においてもパイロットとともに生還したというエピソードもある。
 
 当初からX-33はミッションでの使用を想定したツールとして設計されており、ケースはアラーム音ができる限り大きく響くように設計されていた。オメガはそのアラーム音の出力が80dBに達すると主張している。またこの時計は999日までの“ミッションタイム”を計測でき、その値をカウントダウンまたは経過時間として表示することが可能であった。

X-33はその外観や触り心地からして、まさに高級技術の結晶のように感じられる。
 2001年にはサテン仕上げのベゼルと新しいリューズが追加され、X-33はその後2006年に一般向けの販売が終了した。時は進み、2014年12月にオメガは第3世代のX-33、オメガ スピードマスター スカイウォーカー X-33を発表する。この新しいモデルは前世代の円形ディスプレイを廃止し、3つのセグメントを持ったよりシンプルな横型ディスプレイを採用していた。基本的に上部に追加データ、文字盤の9時位置にモードや機能、下部に時間やアクティブな計測データが表示されている。X-33の細かい仕様についてはジャックが2015年に類似したモデルのHands-On記事を書いているのでここでは詳述しない。

X-33はほとんどの状況で非常に高い視認性を約束しているが、さらに針を“隠す”機能も備えている。バックライトボタンを2回押すと、針がデジタル表示を遮らない位置に回転する仕組みになっている。
 3世代のX-33すべてに共通するように、レガッタモデルも直径45mm、厚さ15.1mmというサイズで、グレード2のチタンを使用した精巧なケースとセラミックベゼル、サファイアクリスタル風防、そして30mの防水性能を備えている。防水性能の上限に対して疑問を持つ人がいるのも理解できるが、X-33はこの深さまでのテストがしっかり行われておる。それに航行や航空、宇宙飛行といった活動は基本的に水面やそれ以上の高度で行われることが多い。
 X-33 レガッタは2017本限定生産で、エミレーツ・チーム・ニュージーランドのセーリングチームとの関係を示す青と赤のカラーが施されている点や、アメリカズカップレースのためにオメガが機能を巧妙にカスタマイズした点が標準的なX-33との主な違いとなっている。既存のX-33はミッション経過タイマーや、特定のミッションステージを知らせるための経過時間に基づくカスタマイズ可能なアラームシステム(フェーズ経過時間)を提供していたが、X-33 レガッタはレガッタのさまざまなステージを特定して計測し、記録できる。

カウントダウンが終わると、自動的にレースモードに切り替わる。

“A06”はレースの第6ステージを示しており、ボートが各ブイを通過する際にスプリットタイムを計測するために使用される。
 10時位置の“レース”ボタンを押すとX-33 レガッタはカウントダウン(CTD)モードに切り替わり、あらかじめ設定されたカウントダウン時間(最大1時間)でレースの開始時間を知らせる。レガッタではスタートの段階で勝敗が決まることが多く、ボートはレース開始までの正確な時間を示す音声信号と同期させるために、何らかのタイマー(時計など)を使用する。ボートは単に列を作ってスタートを待つわけではなく、レースが始まる瞬間に速度を落とさずスタートラインを超えるために、動きのパターンや位置を調整する必要がある。

X-33は非常に軽快で、快適に着用できる。
 
 カウントダウンモードではアナログの分針が秒を刻み、カウントダウンの進行に合わせて反時計回りに進む。同様に時針はレース開始までの残りの分数(12分から0分まで)を知らせ、下部のディスプレイには全体の計測時間が表示される。セイラーが途中で音声信号と同期させたい場合は、レースボタンを押すだけで30秒単位で最も近い時間に同期する(45秒なら繰り上げ、15秒なら繰り下げ)。毎分の経過ごとにX-33が大きなチャイムを鳴らし、最後の1分間は15秒ごとに、そして最後の10秒間にアラームが鳴る。

X-33の裏蓋は、アラーム音ができる限り大きく響くように設計されている。
 カウントダウンが終了してレースが始まると、X-33 レガッタは自動的にレース(RAC)モードに切り替わり、時計はレースの各ステージを計測して記録する。セイラーはボタンを押すだけで最大12ステージまでのレースのフェーズ(各ブイ間のスプリットタイムなど)を簡単に切り替えることができる。ブイを通過するたびにレースボタンを1回押して時間を記録し、次の計測に移行する(9時位置の円形ディスプレイにA01〜A12として記録が表示される)。レース終了時にはレースボタンを2回押して計測を終了し、さらにボタンを押し続けるとデータがX-33のログブックに保存される。視覚的に理解したい人のために、オメガはX-33 レガッタのユーザーマニュアルにわかりやすい図解を記している。

オメガのユーザーマニュアルに記載されている、X-33 レガッタの活用方法を示すレースの図解。
 既存のX-33には温度補正型クォーツキャリバーである5619が搭載されていたが、X-33 レガッタにはレガッタ計時専用のプログラムを備えてさらに特化したCal.5620が使用された。また同機能に加えて、UTC、T1(ホームタイム)、T2という3つのタイムゾーン、さらにタイマー、クロノグラフ、アラーム、そして永久カレンダーを搭載。これらすべてが標準的な3針のアナログ表示と、明るく視認性が高くバックライト付きの3つのデジタルディスプレイで表示される。正確な計測はしていないがアラーム音は非常に大きく、もしコーヒーショップの列に並んでいるときに鳴らせば、周囲の注目を集めることは間違いないだろう。
 
 レガッタ計時は時計の機能のなかでもとりわけ特殊な部類に入るだろう。この機能の有用性はボートレースに参加する人々に限定され、特にアメリカズカップやそれに近い形式のレースでないとX-33の真価は発揮されない。それを踏まえても、X-33全体を俯瞰して見るとこの時計に対する愛着が湧いてくる。軽量なチタンケースと厚みのあるデザインのおかげで、X-33は45mmというサイズにもかかわらず、実際には小振りに感じられる。付属するチタン製フォールディングバックル搭載のナイロンコーティングストラップを装着した状態でわずか78gしかなく、45mm径のスポーツウォッチとしては特に快適な装着感を有しているといえる。

アナログ表示とデジタル表示の両方が光る。デジタル表示のバックライトは、8時位置のボタンで作動する。
 90万2000円(税込)という価格のX-33 レガッタは、オメガのラインナップのなかでもとりわけ興味深く、奇妙な存在だ。お買い得感があるわけでも大衆向けの時計というでもなく、レガッタレースに必須のツールというわけでもない。ETNZ(エミレーツ・チーム・ニュージーランド)と第35回アメリカズカップとの協力で製作されたこの限定モデルはチームへのスポンサーシップを促進するための特別なエディションであり、クルーも着用していたが購入するのはETNZの熱烈なファンに限られるだろう。
 これほどニッチな存在であるにもかかわらずオメガがX-33を製作し、さらにレガッタに特化した限定版のためにムーブメントをカスタマイズしてより高い専門性を追求したことは非常に注目に値し、かつクールだと思う。僕はアナログとデジタルを組み合わせた時計に対する興味が高まってきているところで、X-33(レガッタモデルであろうとなかろうと)はそのスタイルのなかでも楽しく素晴らしい専門性を体現しているように感じられる。
オメガ X-33 レガッタの詳細については、オメガのウェブサイトをチェック。

日本と時計をテーマにした史上初めてのテーマオークション“TOKI(刻)”が

  • 2025/05/05 10:22
  • カテゴリー:ROLEX

世界的に見てもユニークなインディペンデントブランドが花開き始めた日本のマーケット。その中心にいる作り手たちはどのような思いを持ち、時計づくりに向き合っているのだろうか。今回のテーマオークション開催に伴い、彼らの声を聞くことができた。
佐藤杏輔
時計づくりを始めようと思ったきっかけは何ですか?
中島正晴
私は1990年の創業以来、アンティーク時計のレストアに携わってきました。部品供給の閉ざされたアンティークウォッチのレストアにおいては当時と同じ手法、質で部品を製作することが求められ、気がつけば、ほぼすべての部品を作るようになっていました。この技術を活かして、私たち独自の時計製作に着手しはじめたのが2013年ごろ、しかし紆余曲折ののち、最初の時計が完成したのは2024年の4月でした。
佐藤杏輔
口コミ第1位のロレックススーパーコピー代引き専門店!時計づくりを始めた当時と現在の時計市場を比べて、大きく変わったところ、変わらないところは何ですか?
中島正晴
時計の製作に着手し始めた2013年当時は、完成した時計のリリースにはバーゼルワールドなど世界的な展示会への出品が必要で、業界に新規に参入するのにはかなりのハードルがありました。しかし現在はこうした展示会へ出品しなくともInstagramなどのSNSを使い、独自に商品をリリースして受注することが可能になっており、この点が一番大きな違いだと思います。一方で、時計自体の独自性や質が大事である点においては、今も昔も変わりがないと考えています。

マサズパスタイムが手がけるカスタムウォッチの最初の1本(自社製ムーブメントを搭載するオリジナルウォッチではない)。

シルバー製ケースにレディスの懐中時計ムーブメントが採用されている。
佐藤杏輔
日本の時計師として、あるいは日本の時計ブランドとして、時計づくりで大切にしていることは何ですか?
中島正晴
ご存じのとおり、機械式時計の歴史はヨーロッパや英国が中心になっており、我が国発祥ではありませんでした。そういう意味では時計の構造や形態は必然的に西洋的なものにならざるを得ませんが、内外装の仕上げやデザイン、商品的なコンセプトといった部分には日本的な文化をフィードバックすることができます。一方で、安易に日本的なモチーフを導入すると“外国人向けのお土産時計”になる懸念がありますが、私のところではその点に留意しながら、時計の設計から製造に至るまですべて自社内の工房で完結させ、設計概念のブレない時計づくりを目指しています。

佐藤杏輔
海外の時計市場と比べて、日本の市場ならではの特徴や強みはなんですか?
中島正晴
現在のところ、弊社の顧客は海外のコレクターが中心です。そのため“日本の市場ならではの強み”とは少し違いますが、日本の市場ならではの特徴は総じて商品に対する要求が非常に細かい点だと感じます。
佐藤杏輔
日本の時計や時計ブランドが、今後世界でさらなるプレゼンスを発揮するには何が大切になると考えていますか?
中島正晴
現在、ヨーロッパをはじめ北米からも多くの独立時計師、インディペンデントメーカーが登場し、非常にユニークな時計、完成度の高い時計をリリースして市場で鎬を削っています。そうした状況において、決して奇をてらわず、奥ゆかしくも質の高い独自のコンセプトを持った時計づくりへのこだわりは、今後さらに大切になってくると感じています。

TOKI(刻)ウォッチオークション出品作品
BY MASAHARU WADA
オークションに出品されるマサズパスタイムの時計は2本あります。ひとつは同社が販売するオリジナルウォッチ、そしてもうひとつは19世紀後半の懐中時計のムーブメントをベースに腕時計化したリピーターウォッチです。
那由他モデル A 刻
マサズパスタイムでは、懐中時計のムーブメントを腕時計のケースに収めたカスタムウォッチを製作している一方、正真正銘のオリジナルウォッチも手がけています。現在、5種類のオリジナルウォッチがあり、那由他モデルA(スモールセコンド)と那由他モデルB-1(2針)、那由多モデルB-2(スモールセコンド)、そして完全自社ムーブメントを搭載する凪(なぎ)と蒼黒(そうこく)です。今回オークションのために製作されたのは那由他モデル Aをベースに特別な仕様が盛り込まれたものです。

那由他モデルは、時計師である篠原那由他氏を中心に、チームで製作された時計です。篠原氏は東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジ在籍中、第10回ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワードで最優秀賞を受賞した人物としても知られています。2021年からマサズパスタイムに所属する彼について、店主の中島氏はこう振り返ります。「3年前のある朝、スタッフが集まって賑やかに話していたので、何事かと思ったら、時計の雑誌にヒコ・みづのの研究生が自身で作った時計を出品し、ランゲ主催のコンクールで金賞を取ったというニュースだったんです。日本にこんな若者がいるんだと驚き、うちに来てくれたらおもしろいことができるかもね、なんて話していました」。

当時、篠原氏はマサズパスタイムでオリジナルの時計を作っていることは知らなかったそうですが、「一般的な会社では(自分の進路として)違うのかもしれないと感じ、マサズパスタイムなら自身の時計をつくる力を身につけられるのではないか」と考え、入社を決意したと語っています。入社後の篠原氏に対して、中島氏は「もちろんほかのスタッフの協力も必要ですが、彼には自由に時計をつくらせようと考えました。私が口を出すのは費用や完成品が使い捨てのような時計になることを避ける点だけで、それ以外は一切干渉しませんでした」と、その方針を述べています。こうして完成し、2023年に発表されたのが、2種類の那由他モデルなのです。モデル名のロゴは12時位置に配置され、“10^60”(10の60乗)と記された文字が那由他を象徴しています。

TOKI(刻)オークションに登場する那由他モデル A 刻は、38.6mmのステンレススティール製ケースを採用している点は通常生産モデルと共通ですが、ダイヤルの装飾が異なります。中央部分は、通常生産モデルに見られるストレートエンジンで彫られたギヨシェ装飾ではなく、彫金師の辻本啓氏によるハンドエングレービングの唐草模様に置き換えられています。また、アワーサークルの書体もヒゲが足され、全体的により華やかな印象を与えます。ブルースティールの針は篠原氏自身のオリジナルデザインです。

ケースバックからは、篠原氏が設計と製造を手がけたムーブメントを鑑賞することができます。ムーブメントの装飾も通常生産モデルに見られるより伝統的なコート・ド・ジュネーブやペルラージュではなく、奥の位置にエングレービングが施されているなど、その特別さが際立ちます。また、本オークションのために作られたユニークピースであることを示す“Nayuta A 刻 1/1”の刻印も確認できます。本作について篠原氏は「従来のものよりもブリッジによってエングレービングなどの装飾が異なるため、より歯車やテンプが浮き上がったような立体感のあるデザインにできた点が気に入っています」と語ってくれました。「ドレスウォッチなので剛性が高いわけではないですが、長く使える腕時計としてつくったものなので、ぜひたくさん使っていただけたらうれしいですね」

本作は、通常の那由他モデル同様に篠原氏という新時代の時計師の感性とマサズパスタイムのチームワークによって誕生しました。同モデル初のユニークピースであるという点が日本の時計界において極めて重要な時計であることを際立たせます。


LOT 112: Nayuta Model A 刻のエスティメートは、15万〜30万香港ドル(約290万〜589万円)。そのほかの詳細はこちらから。
マサズパスタイム カスタムリピーターウォッチ by マーク・チョー

Photo Courtesy: Phillips
今回のオークションで販売されるマサズパスタイムのもうひとつの作品は、マーク・チョー(Mark Cho)氏が特注したリピーターウォッチです。チョー氏は、クラシックメンズウェアショップ アーモリー(The Armoury)の共同設立者であり、英国のタイメーカー ドレイクス(Drake's)の共同オーナーとしても知られる人物で、熱心な時計愛好家でもあります。幸運にも僕はこのプロジェクトの進行中にチョー氏とともにマサズ パスタイムを訪れ、彼に話を聞くことができました。

チョー氏はこのプロジェクトの始まりについてこう述べています。「いつもリピーターウォッチが欲しいと思っていました。リピーターというのはすべての時計コレクターの夢です。でも腕時計サイズのものだと、なかなか理想の音を見つけられませんでした。マサ(中島正晴氏)はその夢を実現する最初の時計師でした」

チョー氏と中島氏によって、100年以上前の“A. Golay Leresche & Fils”の婦人用の懐中時計に使用されていたファイブミニッツ・リピータームーブメントが特別に選ばれました。「懐中時計として完璧な状態で残っていたムーブメントは、その音色の素晴らしさが際立っていました」と彼は語ります。本プロジェクトにおける最大のチャレンジは、現代の腕時計のサイズに合わせてスライダーを90°調整することだったと言います。ケースサイズは37mmで、新たに真鍮で作られました。真鍮製のケースはマサズパスタイムでしばしばプロトタイプに使われるものですが、驚くほどよい音色を奏でるという理由で採用されました。

 「私たちは数カ月かけて一緒にケースをデザインして、懐中時計のようなボリューム感と小石のような丸みのある形状に辿り着きました」とチョー氏は語ります。実際、最終的な製品として完成する前に別のケースも設計・製作されましたが、彼がベゼルプロポーションの変更を求めたことで、より丸みを帯びたデザインに仕上げられたのです。本モデルに名前があるか質問したところ「この時計には名前がありません。でも、もし名付けるとしたらリバーペブル・リピーター(川の小石)と名付けると思います(チョー氏)」と答えてくれました。

今回のオークションで販売される際には、オリジナルの18Kピンクゴールド製の懐中時計ケースと、当初デザインされた真鍮製のケースも付属します。さらにオリジナルの注文書、手書きのメモやスケッチも含まれており、マーク・チョー氏とマサズパスタイムがどのようにこの時計を作り上げていったかを物語る貴重な証となっています。

マサズパスタイムに向かうマーク・チョー氏。
 「実を言うとこのケースは真鍮製ですが、最終的にはホワイトゴールド製にし、ベゼルにシェブロン装飾をエングレーブした形で完成させることを望んでいました。もし未来の所有者が興味を持ってくれたら、私のもともとの計画に基づき、完成形に導くお手伝いを喜んでさせていただきたいと思います」。この作品は、時計コレクターであるマーク・チョー氏とマサズパスタイムの特別な作品を手に入れる機会となるだけでなく、彼らが思い描いた理想の形へと仕上げるためのバトンを次の所有者へ託すような意味も含まれているのかもしれません。
 LOT 113: ミニッツリピーターウォッチのエスティメートは、20万〜40万香港ドル(約390万〜785万円)。そのほかの詳細はこちらから。マサズパスタイムの詳細は公式サイトへ。

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