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カテゴリー: スーパーコピー時計

オリスがダイバーズ 65を“ダイバーズ デイト”へ刷新

オリスは、同社の代表的かつコアなリリースのひとつであるダイバーズ 65の60周年を迎えようとしている。そこでいくつかの微妙なアップデートを施し、オリス ダイバーズ デイトとしてリブランディングを行っている。ダイバーズ 65を知っているなら、新しいモデルにもすぐになじむだろう。

 新しいオリス ダイバーズ デイトはクラシックなスティール製のダイバーズウォッチで、ダイヤルカラーはブルー、ブラック、ベージュの3色が用意されており、6時位置に日付が配置され、インデックスと針にはスーパールミノバが塗布されている。ケースサイズは39mm、厚さ12.1mmで、ラグからラグまでの長さは46.5mmだ。さらに、わずかにドーム型のサファイア風防が採用されており、ダイヤルに対して立体的な効果をもたらしている(下の写真で確認できる)。インデックスには面取りが施されているが、これこそさりげなく手を加えた点のひとつだ。またレトロな雰囲気を維持するために、やや幅を詰めた新しいダイバーズコレクション専用のフォントが開発された。

 ケース形状もわずかに変更されており、時計はよりコンパクトになった。さらに防水性能は以前の100mから200mに向上し、ケースは若干重くより頑丈になっている。またヴィンテージの雰囲気を醸すフェイクリベット付きブレスレットも特徴的だ。加えてさりげない変更ではあるが、ベゼルがマット仕上げのセラミック製になっている点にも注目だ。

 内部にはセリタをベースとした、オリスのCal.733を搭載。約41時間のパワーリザーブと自動巻き機能を備えている。信じられない? 今ではシースルーケースバックが採用されているため、自分の目で確かめることができる。さらに付属のブレスレットやラバーストラップにはクイックリリースシステムが採用されているため、ムーブメントの撮影も非常に簡単だった。



 さまざまな調整と改良が加えられているものの、Cal.733ムーブメントを搭載した新しいダイバーズ デイトは手ごろな価格を維持している。価格は41万8000円(税込)で、非常に魅力的な価格帯だ。なおすでに発売されている本作は限定モデルではない。


我々の考え
今回のアップデートは控えめではあるものの非常に魅力的だ。防水性能の向上、より優れたベゼル素材、そして快適なケースシェイプ。これ以上何を求めるだろうか?


 ひとつ気づいたのは、ブラックダイヤルがあまり黒く感じられなかったことだ。立体的な風防のおかげでさまざまな光が入り込み、まるでブルーダイヤルの端が明るくなる逆フュメのような効果を生み出していた。このダイヤルカラーは個人的には気に入っており、人気が出そうだとも思う。しかしもっと際立ったブラックダイヤルを期待している人には、このような効果はマイナスに感じられるかもしれない。


 ベージュダイヤルはとても印象的で、おそらくこの3本のなかでは一番好きなカラーだ。ホワイトのデイト表示は見た目として完璧ではないものの、ブルーダイヤルほど強調されてはいない。またホワイトダイヤルのダイバーズウォッチはもっと増えてもいいとも思う。ブラックダイヤルが多すぎる現状に対するひとつの対策かもしれないし、ベージュはホワイトのよい代替案となるだろう。またクイックチェンジシステムも大きな魅力だ。ムーブメントは毎日見るほど特別なものではないかもしれないが、このクイックリリースのおかげでムーブメントを簡単に確認したり、レザーストラップへの交換が容易にできるのはうれしい点だ。



 よいものがあるとき、必要なのは少しの調整で大きく改善することだ。Cal.400ムーブメントを使った新たな展開が始まるのか、個人的には気になるところだが、手ごろなエントリーモデルとしてはこれは非常にいいスタートだ。

基本情報
ブランド: オリス(Oris)
モデル名: ダイバーズ デイト(Divers Date)
型番: 01 733 7795 4054-Set(ブラック)、01 733 7795 4055-Set(ブルー)、01 733 7795 4051-Set(ベージュ)

直径: 39mm
厚さ: 12.1mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: ブラック、ブルー、ベージュ
インデックス: アプライド
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 200m
ストラップ/ブレスレット: フォールディングクラスプとクイックストラップチェンジシステムを備えたマルチピースステンレススティールブレスレット


ムーブメント情報
キャリバー: 733-1
機能: 時・分表示、センターセコンド、日付表示、ファインタイムチューニング、ストップセコンド
直径: 25.6mm
パワーリザーブ: 約41時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時

時間を告げるというのは単純明快な機能であり、時計にとって最高の基本的役割で、

時計は人々が現実世界で生きる手助けをし、待ち合わせの相手と約束した時間に現れることをサポートするという非常に重要な機能に長けている必要がある。
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 私がおもしろい時計を好きになることはあるかもしれないが、愛せるかどうかはわからない。
 この辛辣でユーモアのない宣言について、私はいつでも撤回できる権利を持っており(実際撤回することになると確信している)、それはアシンメトリーの時計も大いに含まれる。ヴァシュロン・コンスタンタンのヒストリーク・アメリカン 1921は好きではない。バケットハットを少し斜めにかぶったナンパ師を連想させ、背筋を伸ばして帽子を直すように怒鳴るか、あるいは帽子を捨ててしまえばいいとさえ思う。カルティエのクラッシュはませた13歳の子どもが考えた独創的な時計のようだ。とはいえ、もし私が大金持ちになることがあれば、その時計を猛烈に欲しがっている友人トムのためにためらうことなく何本か調達するだろう。彼の魂に神の慈悲があることを祈る。ハミルトンのベンチュラはほぼ許容範囲だが、なぜ普通のハミルトンにしないのか。そちらのほうがずっとよい。
 少し前のある日、HODINKEEの時計リストに目をとおしながら、お偉いさんを説得して試させてもらえそうなものを考えていたとき、私の欲にまみれた目が上記のカテゴリーに入る時計、つまりおもしろい時計に止まったので驚いた。確かに、フォレストグリーンの文字盤を持つグラスヒュッテ・オリジナルのパノマティックルナは、きわめて斬新と言えるものではないし、ウルベルクのような時計でもない。40mmのケース自体は落ち着きのある正しいラウンドで、12時位置は真北を指していたが、それを除けばこの時計は間違いなくカオスと戯れていた。

なぜすべてが横にずれているのだろう? 真ん中の何が悪いのか。
 時・分表示、いわば論旨の中心はオフセンターにあり、メインの時刻表示の下部にはスモールセコンドのインダイヤルが重なっている。特大サイズの日付窓は、この大混乱が起きていなければ4時があったであろう位置にある。ムーンフェイズに関しては比較的クラシックな三日月型の開口部で、通常は2時と3時があるはずの場所のあいだに位置している。
 グリーンは今、流行の文字盤のカラーであろう。“グリーンウォッチ”とGoogleで検索すれば、たくさんの素敵な時計がアピールしてくる。たとえば、ブライトリングのクールなピスタチオ(“マンザニータ”とするほうがより的確だと思うが、誰も私に相談してきていない)グリーンのプレミエ ヘリテージや、オレンジとハンターグリーンの組み合わせで、ウェス・アンダーソン(Wes Anderson)氏の映画や歴史の授業で目にしそうな雰囲気を持つシャイノラ ランウェル オートマティックなどである。このグラスヒュッテによく似たグリーンのIWCもあるが、もちろん私は実物を見たことがないので、このグラスヒュッテのグリーンが際立っていると感じるのは個人的見解だ。それでも言及しておきたい。
 これはホビットのような夢のグリーンであり、ウェールズで行われる春の洗礼式のグリーンであり、文句を言わずにホイール・オブ・フォーチュン(Wheel of Fortune)を見ていられるように、おばあちゃんがバニラアイスクリームにかけてくれたクリーム・デ・メント(ミント味)のグリーンである。

雨上がりのニュージーランド上空を飛んでいるかのよう。
 この時計を入手した。発泡スチロールのセキュリティが何重にも施されて、この時計は届いた。そして宣伝どおり、とてつもなくグリーンだった。私は時計をつけてみた。いや、つけようとした。私は小柄な女性ではないが、手首は細い。この時計のストラップは手首が細い人向けにつくられていなかった。ストラップの両側のラグから1.5インチ(約3.8cm)はまるで死後硬直しているかのような硬さであった。また関係はないが、“実際に身につける”という点では、デプロワイヤントクラスプが満足にカチッとならず、まったく閉まらないのである。
 “私のせいか、それともお前か”という瞬間は多くの買い物で経験するものだが、私はその最中にいた。しかし高級品となると、いつも“この場に存在する低俗なやつは私ひとりだけだから、きっと私のせいだ”という気持ちが湧いてくるせいで、さらに気恥ずかしいものとなる。“この小さなピンは穴にはまるようになっているのですか?”と、この時計の販売店に問い合わせると、担当者はそうだと答えた。この厄介なクラスプを懸命に押し、埒があかないとき、私はどれも私のせいではないことに気づき、気にしすぎるのをやめた。つまり、もし本当にこの時計が欲しくて、とてもクールな時計に思えたのなら、きっと誰かがこれを解明できるはずだ。だが念のために言っておくと、デプロワイヤントクラスプはとてつもなくばかげたもので、誰であれ、これを発明した人はサディストである。普通の時計ストラップのどこが悪いのか、何でもかんでもより不便なものに変える必要があるのかと筆者は嘆いた。
 とはいえ1度装着してしまえば、大きく、硬く、重くはあるものの、この時計は多少なりとも私の手首になじんだ。ブラウンのストラップはこのグリーンカラーにぴったりで、木の葉と樹皮のごとく自然かつ間違いない組み合わせである。
 実際に見てみると、アシンメトリーとこのグリーンの色味だけがこの時計の派手な要素であることがわかり、うれしくなった。この時計はほかのすべてのディテールが控えめなものであるため、上品さを保っている。ケースのサテン仕上げのステンレススティール製サイドや、ポリッシュ仕上げでしっかりとしたラグ、そしてシンプルなスティックインデックスが生み出す落ち着いたコントラストが気に入った。これらの要素は、私にとって理想的で、魅力的に感じられた。
 針の先が尖っていて、ムーンフェイズと同じ色の白いエナメルが少しはめ込まれていることに気づくまで、使い始めてから1週間以上かかった。気づいてからは大いに気に入っている。
 40mmのこの時計は女性向けというよりは男性向けの時計かもしれないが、私が好きなタイプの男っぽさである。少し男性的で美しいスタイルが私の唯一の好みというわけではないが、私のなかで主流となっている美的感覚だ。たとえばチェルシーブーツ、シャネルのメンズコロン、ボデガグラスの冷えたバルベーラが好きだ。この時計はそれらすべてが私に合うのと同じように私にマッチした。

腕時計とプラスチックカップの白ワインを満喫する私...冷えたバルベーラではない。
 ロレックスの時計を持っている人は、自分の手首を見下ろし、その非常に象徴的なロレックスの文字を読むときの感覚はほかにないものだと言う。私にはそれを疑う理由はない。しかしグラスヒュッテの物語にどっぷり浸かったあとでは、グリーンのグラデーション文字盤に無造作なHが入った白い文字を見下ろし、このブランド独自の素晴らしい系譜を思い浮かべて胸が膨らむのは、非常にワクワクする感覚だったと言わざるを得ない。
 “グラスヒュッテへの道は長く、曲がりくねっていて、美しい”と、HODINKEEのニコラス・マヌーソスは、2015年のグラスヒュッテの歴史について深く掘り下げた記事で書いている。ここでは簡単に紹介しよう。1800年代半ばからドレスデン近郊のオア・バレーのような場所で時計や時計部品がつくられており、A.ランゲ&ゾーネのフェルディナント・アドルフ・ランゲ(Ferdinand Adolph Lange)がそのパイオニアだった。グラスヒュッテの時計は非常によくできていて人気があったためコピーされるようになり、それがグラスヒュッテ・オリジナルというブランド名につながったのである。第2次世界大戦後、グラスヒュッテ(町)は東ドイツ(GDR、ドイツ民主共和国)に編入され、4つの主要な時計会社がVEBグラスヒュッテ・ウーレンベトリーベ(GUB)に合併された。GUBは、非常に正確で非常に薄いムーブメントを作ることで定評があった。外界から隔絶された会社であったため、すべての部品を自社でつくらなければならなかったのだ。こだわりでそうしていたのではなく、そうせざるを得なかったのである。GDRが再びドイツとなったとき、グラスヒュッテ・オリジナルはGUBを継承し、その伝統は今も続いている。
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 さて、私はチュートン式ムーブメント(ドイツの高級時計ブランドによる堅牢で精度の高いムーブメント)がほかのものより優れている点について詳しく知っているわけではないが、自分が自社製のものに引かれることは認識している。私はケーキミックスでケーキをつくったり、マルガリータミックスを使ったりはしないし、もしアート作品を買うとしたら、コストコで買う前に10歳の子どもから買うだろう。ETAムーブメントには独自の存在意義があるとは思うが、私には少し“悲しいトロンボーン”のように見える。
 私はこの時計のスケルトンになっている、オフセンターのローターの存在に気づいた(ある記事でその存在を知った)。このローターは、オフセンターの文字盤と一致している。この緩急針は2羽の白鳥の首に似ていると言われている。正直に言うと、シンメトリーが取り入れられると、アシンメトリーがより魅力的に感じられる。確かに白鳥の首のようなものが見え、悲しいトロンボーンとは正反対の印象だ。

スワンネック緩急針。
 このパノマティックルナ(英名はPanoMaticLunar。編集者はきちんと表記チェックをしたのだろうか?)は2020年に発売されたもので、このモデルで新しくなっているのは色だけである。2003年に発表されて以来、時計の中身はほとんど変わっていない。パノシリーズの最初の時計は、2001年に発表されたパノレトログラフ(英名はPanoRetroGraph。同じコピーライターによる表記であるのは明らかだ)で、アラーム付きの30秒フライホイールを備えていた。私は(そしておそらく多くの人も)自分の人生全体を30分間隔で区切ることができると感じているので、このようなものは本当に便利だと感じる。それがあればこの時計はもっとクールになっていたはずだが、今のモデルがクールでないとは言っていない。
 私はムーンフェイズ付きの時計を所有したことがなかった。触ったことさえなかったかもしれない。この時計のムーンフェイズは、鉛筆のような柔らかいプッシャーで調整するもので、十分にシンプルに見えた。現在の月の満ち欠けの状態(欠けていく三日月)を調べるだけでよいと思い、23回も押さなければならなかった。おそらく現在の月の満ち欠け具合を正確に時計と合わせる方法があるはずで、のちほど試みる予定であるが、それはニックと昇給について話をしたあとにするつもりだ。
 この時計はとても分厚く感じた。あまりの分厚さに調べてみたところ、12.7mmあることがわかった。文字盤も巨大に見えた。しかしこの時計にはベゼルがほとんど存在しないため、その大きさの一部は目の錯覚であることに気づく。薄皮のピザが厚皮のものより大きく見えることがあるのと同じようなことだ。この時計はすべてにおいて非常に均整が取れている。ただしとても大きいため、これをつけたまま何杯もお酒を飲んで議論をしながらドアをとおり抜けようとするのはおすすめしない。ほぼ毎日そのようなことが起きていたにもかかわらず、この時計は我が家では無事であった。
 おそらく、この時計の最もマイナスな点は、ランゲ1に似すぎていると主張する不平家がいるかもしれないことだろう。しかしそれが欠点になるのは、そのような批判が問題になる場合だけである。私にとってはあまり問題ではなかった。少なくとも、私はそうは思わなかったのだ。
 その後、ジュネーブの店でランゲ1をいくつか見てみた。ランゲ1・ムーンフェイズは動揺するほど素晴らしい。しかし、ランゲの4万8400ドル(掲載当時の価格。現在はピンクゴールド製で税込748万円)という価格は、たとえるなら私の体から血を抜くだけに飽き足らず、引きずって四つ裂きにし、海に置き去りにしてサメの餌にするようなものだ。だから、アシンメトリーでありながらクラシカルで素敵な時計が欲しいなら、これに違いない。それもグリーンでなくてはならない。ランゲはグリーンのモデルをつくっていないからだ。もしランゲがグリーンをつくったとしたら、きっと素晴らしいものになるだろう。たとえネオンピンクで作ったとしても、グラスヒュッテ・オリジナルのパノマティックルナより素敵なものになるかもしれない。
 しかし価格が4倍するだけの価値があるだろうか? 私はそうは思わない。このグリーンのグラデーション文字盤はかなり魅力的だ。昼下がりのさまざまな色合いの松林を見渡した様子を思い起こさせる。サビンマツの長い針が日光を反射する部分では明るく輝くグリーンになり、杉が日光を吸収する場所ではほとんど黒に近い濃いグリーンに見える。心地よく、前向きで、自由な気分にさせてくれる色なのだ。

リシャール・ミルからRM 032 アルティメット エディションが新登場

リシャール・ミルのRM 032 オートマティック フライバッククロノグラフ アルティメット エディションは、RM 032シリーズの最終章を飾るモデルである。このモデルは圧倒的な存在感を備えたテクニカルなダイバーズウォッチだ。ケースサイズは50mm(50!)×17.8mmと堂々たるもので、グレード5チタンとカーボンTPT®を組み合わせることで、頑丈ながらも軽量な構造を実現している。“本格的な水中利用”を念頭に設計されたRM 032は300mの防水性能を備えており、逆回転防止ベゼルは8ポイントスター型のネジでしっかりと固定されている。

 本作にはCal.RMAC2を搭載し、フライバッククロノグラフ、オーバーサイズの日付表示、月表示といった多彩な機能を備えている。3時位置にはランニングインジケーターが配置されており、回転するスーパールミノバディスクを採用することで低照度の環境でも視認性を確保している。ムーブメントには可変慣性モーメントローターと二重香箱システムが組み込まれ、約50時間のパワーリザーブを実現。また特筆すべき特徴として、特許取得済みのロッキングリューズ機構があり、これは水中での誤操作を防止する。この機構ではリューズのリングを回転させることでプッシャーとリューズをロックし、ダイビング中の安全性を向上させている。

 2011年のデビュー以来、RM 032シリーズはリシャール・ミルが水中探検の世界へと誘うモデルとして位置づけられてきた。最新モデルもその伝統を受け継ぎ、フリーダイビングのチャンピオンであり8度の世界記録を打ち立てたアルノー・ジェラルド(Arnaud Jerald)氏の手首でその存在感を発揮している。彼の記録的なダイビングでもこの時計が使用されている。

 “アルティメット エディション”と名付けられたこの堂々たるRM 032は、わずか80本限定での販売となる。またその価格も堂々たる値段(21万スイスフラン、日本円で約3560万円)に設定されている。

我々の考え
2018年、コメント欄常連のBSideがRM 032の過去モデルを“ダイバーズウォッチ界のハマー”と評したことがあった。まさに的を射た表現だと感じる。さらに言えばこのRM 032は巨大すぎて、もはやグロテスクな域に達しているともいえる。思い出されるのは、2004年のリュダクリス(Ludacris)氏の”Get Back”のミュージックビデオだ。彼のコミカルに誇張された巨大な腕と時計がこの時計の存在感と重なる(巨大な腕と時計はぜひこちらで確認して欲しい)。今年発表されたイエローゴールドのロレックス ディープシー(参考までに、サイズは44mm×17.7mm)ですら、このRM 032の横では細身に見えてしまうほどだ。
 2000年代初期の大きくて派手な時計が大好きだということは、念のために改めて伝えておく。この手の時計こそが私の好みだ。たとえば初期のビッグ・バンやオフショア、5タイムゾーンなどはまったくもって素晴らしい。ただし美的感覚で言えば、このRM 032はリシャール・ミルのスタローンやオーデマ ピゲのロイヤル オーク オフショア サバイバーほど心引かれるものではない。RM 032のデザインはRMのほかのモデルに比べるとやや飾り気が少なく、そこが私にとって少しワクワクするポイントでもある(参考までにRM ボンボンコレクションやRM 88 スマイリーを見て欲しい)。確かに、この時計は技術的には申し分ない性能を誇っているが、実際に着用するのはダイビングスポットではなくセーリングスポットを好む人々のほうが多いだろう。


 リシャール・ミルを語るうえで、その唯一無二のブランドアイデンティティを否定することは決してできない。ダイバーズウォッチであるがゆえに、伝統的なラウンドケースが採用されているものの(当たり前だが)、それでもなおブランドらしさは健在だ。素材、タイポグラフィ、そして遠慮のない派手さ。そのどれもが“これぞリシャール・ミル”と言わんばかりだ。さてここで直径50mmという“誰もが目を引く存在感”について触れてみよう。ラウンドのリシャール・ミルは果たしてリシャール・ミルといえるのか? 私はイエスと断言したい。

基本情報
ブランド: リシャール・ミル(Richard Mille)
モデル名: RM 032 オートマティック フライバッククロノグラフ アルティメット エディション(RM 032 Automatic Flyback Chronograph Ultimate Edition)

直径: 50mm
厚さ: 17.8mm
ケース素材: グレード5チタンとカーボンTPT®
夜光: あり、スーパールミノバ
防水性能: 300m
ストラップ/ブレスレット: ブラック&イエローラバーストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: RMAC2
機能: 時・分表示、オーバーサイズデイト表示、月表示、フライバッククロノグラフ(センターミニッツ&セコンドカウンター)、12時間積算計、ランニングインジケーター
直径: 39.15mm
パワーリザーブ: 約50時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 62

オリス ダイバーズ 65に別れを告げる時計。

オリスは(2024年の)10月に、新しいダイバーズ デイトシリーズを発表した。これは同ブランドのアイコニックなダイバーズ 65コレクションが60周年を迎えるのを記念して、デザインを現代風にブラッシュアップしたものだ。10年前に登場したダイバーズ 65を受け継ぐ、よりモダンな後継モデルとして企画されたようだが、正直なところこれでダイバーズ 65のオリジナルモデルはもう見られないのかもしれないと思っていた。
どうやら私の予想は外れていたらしい。ダイバーズ 65が終わったという噂は、だいぶ誇張されていたようである。まあ、そんな感じだ。オリス初のダイバーズウォッチが誕生した1965年から数えて60年を祝うアニバーサリーモデルとして、ダイバーズ 65から60周年アニバーサリーエディションが登場したのだ。このモデルは懐かしいデザインやヴィンテージ感のあるディテールが満載で、いわばブランドの集大成のような時計だ。
オリススーパーコピー時計n級品 代引きの過去10年のラインナップに詳しい人なら、少し混乱するかもしれない。これは前からラインナップにあったのでは? と思う人もいるだろう。ある意味ではそのとおりだ。しかし少し違う。2015年、オリスは初代ダイバーズウォッチの50周年を記念して、モダンなダイバーズ 65を初めて発表した。これはオリジナルのデザインに非常に近いものだった。サイズは少し異なるものの、オリジナルのなかで最も印象的だった特徴、つまり文字盤を囲むように配置された3・6・9・12時の大きな逆夜光数字はそのまま引き継がれていた。

今回の60周年アニバーサリーエディションでは、あの大胆でアール・デコ風ともいえる大きな夜光数字が新たな形で復活している。文字盤にはオリジナルをさらにほうふつとさせるいくつかのディテールが加えられた。2015年モデルで見られた、モダンな“WATER RESISTANT”や防水性能の記載は、オリジナルと同じく“ANTI-SHOCK”や石数の表記に置き換えられている。そしてオリスの現代史では初めて、ヴィンテージ感漂うオリスのロゴとその下に“WATERPROOF”と記載されたデザインが復活した。インデックスはヴィンテージモデルのバランスに合わせて短く調整されている。また、2015年版のベゼル上部にあった三角マークは、よりオリジナルに忠実な、ベージュのスーパールミノバが塗られた夜光ドットに変更された。皮肉なことに、この60周年アニバーサリーエディションでは2015年版にあった日付窓が廃止されている。とはいえ実は日付窓があるほうが、1965年のオリジナルにはより忠実だったりするのだが。
光沢のあるブラックダイヤルは、現代的な40mmサイズのダイバーズ 65のケースに収まっている。ケースの厚みは12.8mm、ラグからラグまでの長さは46mmだ。防水性能は100mで、アルミニウム製インサートが付いた双方向回転式ベゼルが、大きくカーブしたドーム型のサファイアクリスタルを囲んでいる。ねじ込み式のスティール製ケースバックのなかにはセリタをベースにしたオリス製Cal.733を搭載し、この60周年アニバーサリーエディションがオリスのなかでも手の届きやすい価格帯に属していることが分かる。SSブレスレットに加えてレザーストラップも付属しており、価格は38万2800円(税込)だ。

2015年版がオリスのカタログから徐々に消えていったときは少しがっかりしていた。あの時計が本当に好きだったし、あのデザインがなくなるとオリスの歴史の一部が欠けてしまうような気がした。ただ時計の開発には時間がかかるのは分かっているし、60周年に向けて意図的にフェードアウトさせていたとしても不思議ではない。今はただ、戻ってきてくれて本当に嬉しいと思う。たとえこれが最後だとしても。

オリジナルに忠実な36mmサイズでの復刻はもう諦めているが、せめて38mmのダイバーズ 65が出てくれたらと思っていた。38mmというサイズは、ヴィンテージっぽさと現代的なダイバーズウォッチの絶妙なバランスを持つちょうどいいサイズだし、ほかのブランドがヘリテージ系でこのサイズを使うことはあまりないぶん、余計にその魅力が際立つ気がする。だが40mmのケースも実際につけてみるとすごくいい感じだ。ミドルケースのデザインがボリュームを抑えており、見た目以上にスリムに感じる仕上がりになっている。
実物を見ると、この時計は本当に素晴らしい。スタイリッシュな数字が好きな人にはたまらないデザインだし、文字盤に施された小さな変更がしっかりと存在感を放っている。この60周年アニバーサリーエディションは、時計好きやコレクターのためにつくられたモデルという感じが強い。しかもオリスがこのスペシャルモデルを、セリタをベースとしたラインに収めて高価格帯になりすぎないようにしたのは見事だと思う。

もしこれを手に入れたら、ブレスレットをつけたままで使い続けたいと思う。それくらいブレスレットとの相性が抜群だ。ダイバーズウォッチにレザーストラップをつけるのもおもしろいし、ラバーストラップのほうがもっとしっくりきたかもしれない。いや、いっそのことレザーもラバーも両方付けて、全部盛りでセットにしてくれたら最高だっただろう!
とはいえ、このダイバーズ 65 60周年アニバーサリーエディションは、オリスのなかでも特にユニークなデザインをもういちど蘇らせた素晴らしいモデルだと思う。ラインナップがどんどんモダンになっていくなかで、オリスが豊かで魅力的な歴史を持ったブランドだということを改めて感じさせてくれる。

基本情報
ブランド: オリス(Oris)
モデル名: ダイバーズ 65 60周年アニバーサリーエディション(Divers Sixty-Five 60th Anniversary Edition)
型番: 01 733 7772 4034-Set

直径: 40mm
厚さ: 12.8mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: ブラック
インデックス: スーパールミノバをプリント
夜光: あり
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: SSブレスレットおよびブラックレザーストラップ

タイメックス ジョルジオ・ガリ S2Tiが登場

ジョルジオ・ガリ(Giorgio Galli)氏は時計業界においてレジェンドに数えられる人物だ。イタリア出身のデザイナーである彼はこの業界において何十年にもわたる経験を持ち、特に1990年代にミラノにあるスウォッチのデザイン本部を率いたことや、シチズン、エベル、モバードといったブランドのプロジェクトに携わったことで知られている。しかし私にとって、ガリ氏はタイメックスという歴史あるブランドを再定義した人物である。かつては飾らないアメリカブランドだったタイメックスは現在国際的な大企業の一部となっており、その製品ラインには膨大な数のモデルが揃っている。ガリ氏はこのタイメックスのブランドにデザインを主軸とした感性を注入することで、幅広い顧客層を対象に商品群をよりブラッシュアップした立役者なのである。

タイメックスはその商品ラインナップにおいて、時計の心臓部である“脱進機”や“テンプ”という言葉を知らないような世界のマス市場にアピールする必要がある。その一方でガリ氏には、HODINKEEの読者のような時計愛好家にとっての“タイメックスのフラッグシップモデル”を定義するという使命も課されているのだ。
 数年前、タイメックスが“コンセプトカー”的な存在として世に送り出したのがジョルジオ・ガリ S1であった。この製品はガリ氏自身の名前がケースバックに堂々と刻まれていることからも明らかなように、彼の功績を象徴するものである。S1は6万6000円(税込)という価格帯でありながら自動巻き機構を搭載し、金属射出成形(MIM)技術を用いてまるで彫刻のような精緻なケースデザインを実現した。この価格帯ではほかに類を見ないディテールを持つ時計であり、この時点でタイメックスとしては驚くべき成果であったといえる。しかし、それでもガリ氏は満足しなかったのだ。

 “スイスメイド”の次のステップとして、ジョルジオ・ガリ S2が誕生した。これはタイメックス グループのアトリエを通じて発表された、タイメックス初のモダンなスイス製時計である。価格は15万9500円(税込)で、この値段に対しては当時多くの議論が巻き起こった。「タイメックスに1000ドル(日本円で約15万円)も払うなんてあり得ない」と即座に否定する声もあれば、一方で「タイメックスがこれほど斬新な時計を作るとは」と興奮する声も多かった。いずれにせよ、このモデルは非常によく売れた。そして今回、このジョルジオ・ガリブランドによる試みの集大成として“スイス製S2”の集大成が登場した。それがS2Tiである。チタンにフォージドカーボンを組み合わせ、今回初めてブレスレットが採用された点が特徴だ(のちほど詳しく述べる)。新しいS2Tiはスティール製モデルとの共通点を持ちながらいくつかの改良点が加わっており、さらに洗練された仕上がりとなっている。
 2024年の夏にニューヨークでガリ氏と昼食をともにした際、彼が最新版のプロトタイプを持参していたことに私は気づかなかった。彼が革製のケースを取り出したとき私はそれが単なる彼の私物だと思っていたが、実際のところはS2Tiが収められていたのだ。そして現在手にしている製品版を見て、それが見間違いではなかったことを理解した。(HODINKEEに)送られてきた外箱を開けると、そのなかにはS2Tiが革製トラベルケースに収められていた。時計を目にした瞬間、まず目を引いたのは文字盤だ。スティールモデルの初代S2とは大きな対比を成している。前作では光沢のある黒い文字盤にスティール製のアワーマーカーが組み合わされていたが、今回のモデルはチタンを文字盤に採用することで全体の質感を統一している。

さらに詳しく観察してみると、変更点はほかにもいくつか見受けられる。初代モデルの黒い文字盤には見返し部分と時表示リングのあいだに光沢のある黒いリングが配置されていたが、今回のモデルではその空間を滑らかな曲線状の見返しが完璧に埋めている。これにより時計全体がより丸みを帯びた印象になり、計算されたバランスのいいデザインとなった。この変更こそが、“Swiss Made”の文字が6時位置のアワーマーカーの上に印刷される理由だと考えている。以前はこのパーツの外周に配置されていたが、今回はそのための余白がないのだ。この傾斜した見返しに合わせて今回のチタン製S2ではスティール製モデルにあったベゼルを排除し、その代わりにドーム型のサファイアクリスタルによってケースの端まで覆っている。このデザインは、ガリ氏が楽しみながら取り入れたものに違いない。昨年発表されたアクリル風防のマーリンジェットでも、似たようなデザインが見られる。これにより時計全体がより滑らかで柔らかな印象となっており、S2に採用されたフルチタン製ブレスレットとのバランスを取るのに貢献している。


金属射出成形(MIM)による38mm径のケースには、ジョルジオ・ガリ氏がてがけたタイメックスライン全体を象徴する中空のラグデザインが引き続き採用されている。ラグの縁やケース上部、および下部のチタンセクションには非常にていねいなポリッシュが施されており、光を劇的に反射する。一方でその部位には、肉眼でも見える機械加工の痕跡も残っていた。文字盤からは以前のバージョンにあったコントラストが失われているが、その代わりにミドルケースにアクセントが取り入れられた。今回はフォージドカーボンが採用されており、これが視覚的な変化をもたらしている。フォージドカーボンのランダムなパターンは、ストイックな全体のデザインに面白いニュアンスを与えている。これはとてもいい選択だと思う。

このモデルではフルチタン製ブレスレットは18mm幅のラグによって接続されている。ブレスレットのエンドリンク(ケースとの接合部)はやや外側に張り出しているものの下方向に曲がる形状になっており、ラグトゥラグは46mmに抑えられている。また、このブレスレットにも特徴的な中空のモチーフが引き継がれており、各コマの側面には微妙にくぼんだデザインが施されている。その内部はサテン仕上げとなっており、視覚的には非常に魅力的に映る。ただし、これらの隙間に汚れが溜まるのではないかという若干の懸念もある。ブレスレット自体は精密に加工されており、快適なつけ心地を提供してくれる。さらに、特注のダブルバタフライクラスプを採用。しかしクラスプに接続されるリンクには中空デザインが施されておらず、統一感を欠いている点だけは少し残念だ。
 注目すべきは、このブレスレットに新たに採用された“I-Size”システムだ。昨年ガリ氏がこのサイズ調整方法を見せてくれたとき、実際に製品化される日を心待ちにしていた。各コマの側面にはネジやピンが一切見当たらない。それもそのはず、そういった要素はサイズ調整においてまったく使用されていないのだ。実はコマの左部分が引き出せるようになっており、弾性のあるパーツによってほかの部分と固定されている。このパーツを引き出して回転させるだけで、簡単にブレスレットから取り外すことができる。私はこのS2Tiのサイズ調整を1分もかからずに行うことができた。内部構造の耐久性に対する若干の不安はよぎったものの、このブレスレットの手軽さや使い勝手のよさがあまりに素晴らしく気にならなかった。

ケースを裏返すと、シースルーバックからセリタのSW-200ムーブメントの全貌が見える。このムーブメントには、ミドルケースに合わせてブラックPVDが施されたローターが搭載されている。ムーブメントの装飾は非常に手の込んだもので、ペルラージュやストライプがふんだんにあしらわれている。この価格帯では、おそらく最適かつ一般的な選択だろう。ただしSW-200は“ゴーストデイト(機能しない日付表示機能)”を残しており、私が触ったモデルでは日付が深夜ではなく6時に切り替わったのが少し気になった。これは、レフトハンド用のセリタムーブメントが採用されているということなのだろうか。
 価格について触れると、このジョルジオ・ガリ S2Tiは限定500本で1950ドル(日本円で約30万円)という設定になっている。タイメックスが税込みで約2000ドルもの価格をつけたモデルを発表するというのは、大きな挑戦といえるだろう。映画のシーンでレコードが止まり、画面がフリーズする(予想外の事態に驚きや困惑を感じる)瞬間のような感覚を覚える。「タイメックスで2000ドルだって⁉︎」と思う人もいるかもしれない。しかしこのS2シリーズはガリ氏のクリエイティブを存分に表現したフラッグシップであり、このレンジで製造技術やそのプロセスを挑戦的に追求するためのモデルでもある。妥協を一切しないタイメックスを作り上げた結果、こうした価格になったのだろう。少し冷静に考えてみれば、この時計はチタン(しかもフォージドカーボンを部分的に使用)製で、新しいサイズ調整システムを備えたブレスレットを搭載し、さらにこの価格帯では類を見ない複雑なケースデザインを実現している。多くのセリタベースの競合製品と比較しても、この時計が市場でユニークなポジションにあることを考えれば価格は妥当といえる。

個人的に最も興味深いのは、本作の後に何が続くのかという点だ。このモデルはジョルジオ・ガリ Sシリーズの締めくくりを意味するが、タイメックスは“次の章を用意している”と示唆している。これはタイメックスがスイス製時計のラインを拡大することを意味するのだろうか? スイスにあるタイメックス グループのアトリエは、ヴェルサーチやフェラガモといったファッションブランドのスイス製時計もてがけている。そのため、タイメックス自身がこれらのメーカーを活用し、時計愛好家向けの製品をこれまで以上に製造しようと考えるのは理にかなっている。生産数が拡大すれば、価格は下がる可能性がある。いつかS1の価格でS2に相当する時計が登場する日が来るかもしれない。それまでのあいだ、この時計はガリシリーズの華やかなフィナーレを飾る素晴らしい存在として君臨するだろう。
タイメックス ジョルジオ・ガリ S2Ti、Ref.TW2Y27500。直径38mm、厚さ12.2mm、ラグトゥラグ46mm。チタン製ケース、フォージドカーボン製ミドルケース、50m防水。チタン製ダイヤル、ステンレススティール製アワーリング、無反射コーティングを施したドーム型サファイアクリスタル風防。サファイアクリスタル製スケルトンケースバック。ムーブメントはセリタ製SW-200、パワーリザーブ50時間。チタン製ブレスレット、“I-Size”システム、特注デザインのクラスプ。価格: 1950ドル(日本円で約30万円)、限定500本。

ベル&ロスに、BR-03シリーズから限定モデル“アストロ”を発表した。

人工衛星が秒、月が分、そして火星が時間表示を担っており、「計器時計の技術的な解釈ではなく、想像的なアプローチを取り入れることで、新しい次元への挑戦を行いました」とブランドの共同創業者兼クリエイティブディレクターであるブルーノ・ベラミッシュ氏が語るように、時刻を知るためのツールというよりは限定にふさわしいコンセプチュアルなモデルに仕上がっている。

ベースとなるケースはBR-03のものを踏襲しており、径は41mm、厚さは11.5mmとなっている。素材はブラックセラミックで、付属するブラックラバーストラップ、合成ファブリックストラップとともに宇宙の闇を表現しているようだ。ダイヤル上に輝く星々は、ブルーアベンチュリンによるもの。その上に火星をプリントした透明なプレートが回転し、地球の下部で針が隠された人工衛星と月がセットされている。

この地球は、サファイアクリスタルの内側に直接プリントされている。写真ではわかりにくいが、正面から見るとまるで本物の地球のように丸みを帯びて見える。これはサファイアクリスタルをすり鉢状に削ったのちに地球をあしらっているためだ。サイドからは地球はフラットに見え、その下に針やプレートがある様子がわかる。

ムーブメントには約54時間のパワーリザーブを備え、2万8800振動/時で駆動するBR-CAL.327を搭載。ケースバックにはスペックに加えてシリアルも刻印されている。防水性能は100m。価格は73万7000円(税込)で、999本限定での販売となる。
ファースト・インプレッション
2日前の2月13日、この日は新作が見られるとのことで銀座のベル&ロスブティックを訪れた。ベル&ロス ジャパン マネージング・ディレクターのフランク・ダルデン氏に促されて時計が入った箱の蓋を開いた瞬間、僕たちは思わず「おおっ!」と驚きの声をあげてしまった。その時計がベル&ロスのものであると、ひと目では理解できなかったのだ。聞くと、この時計を目にした人々は大体、同じような反応を見せていたという。

ベル&ロスは1994年創業とまだ若いブランドながら、アイコニックかつ機能美を備えた時計製造により確かなファンを獲得してきた。その設計のベースにあるのは「視認性」「機能性」「高精度」「信頼性」の4つの基本原理であり、“どんなディテールもそれぞれの意味があり、機能がある”と謳っている。それだけに、タイムキーピングよりもクリエイティブな表現を前面に打ち出したこの“アストロ”は少し異質に見えたのだ。僕らはこの時計を手に取って眺め、アベンチュリンダイヤルの輝きや手の込んだ地球の表現の説明に唸りながら、リューズを回してしばし見入っていた。
しかし、いざ手首に巻いて銀座の路上でシューティングを行っていると、この時計がベル&ロス以外の何ものでもないことがわかってきた。それは、これまでベル&ロスがBRコレクションで築き上げてきた確固たるデザインコードが根底にあるからにほかならない。コクピット内の計器をモチーフとしたマッシブなスクエアのケースに、それをきっちりと締め上げる4本のビス、そしてそこから力強く盛り上がった円形のベゼル。僕たちはこのフォルムを目にすると自然と「あ、ベル&ロスの時計だな」と認識することができる。ブランドこそ違うが、2023年に“立体商標”に登録されたG-SHOCKを思い出した。自らのアイデンティティに誇りを持ち、一貫したウォッチメイキングを続けてきた結果、ベル&ロスらしさを損なわずに大胆なクリエイティブに挑戦できる土壌が整ったと考えるべきなのかもしれないと撮影をしていて思った。
ムーブメントは、すでに2024年のBR-03 HORIZONで使用されている伝統的な計時機能を備えたものだ。“アストロ”のダイヤル上で繰り広げられる創造的なアプローチは、ブランドを象徴するアイコニックなフォルムと実績のあるムーブメントによって支えられている。どちらもブランドが時間をかけて培ってきた資産であり、突拍子もなく見えるクリエイションだが確かにベル&ロスにおいてスタンダードなウォッチメイキングと地続きに存在しているのだ。

しかし“アストロ”の登場によって、BRコレクション、ひいてはブランド全体のデザインの幅が大きく広がったことは事実だろう。これまでアビエーションの世界に強く傾倒していたベル&ロスが、文字通り大気圏を突き抜けて宇宙へ飛び出そうとしている印象を受けた。このスクエアシルエットをパレットとして、次はどのような表現が行われるのか、今から期待が膨らむ。
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基本情報
ブランド: ベル&ロス(Bell&Ross)
モデル名: BR-03 アストロ

直径: 41mm
厚さ: 11.5mm
ケース素材: マイクロブラスト加工を施したブラックセラミック
文字盤色: アベンチュリン
インデックス: プレートによる時刻表示、メタルパーツによる秒・分表示
夜光:  なし
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット:ブラックラバーストラップとブラックの合成ファブリックストラップ

グランドセイコーの人気の桜ダイヤルをクリーミーな色合いに仕上げた、新作のSBGH368である。

今日発表された時計は見逃せなかった。グランドセイコーのゴールドケースモデルのなかで、これが個人的に最も気に入っているかもしれない。62GSケースのリファインモデルにローズゴールドを採用し。

セイコー グランドセイコー ステンレス SBGX053 9F62-0AA1 ホワイト

2023年、グランドセイコーは手巻きスプリングドライブのCal.9R31を搭載した100本限定のSBGY026を発表した。そして今回、62GSケースに18KRGを採用した初のレギュラーモデルが登場。クラシックなデザインを継承しつつ、より力強く存在感のあるケースデザインとなっている。

ムーブメントには約55時間のパワーリザーブを備える自動巻きのCal.9S85、通称“ハイビート36000”を搭載。ケースサイズは38mm×12.9mmで、シースルーバック仕様ながら100mの防水性能も確保している。ドレスウォッチとしては少しタフすぎるかもしれないが、個人的にはむしろうれしいポイントだ。

グランドセイコー SBGH368は、4月1日より発売を予定しており、希望小売価格は440万円(税込)だ。

我々の考え
昨年日本を訪れた際にこの時計のプレビューを見る機会があり、その素晴らしさに圧倒された。確かに、手巻きムーブメントでデイト表示のないSBGY026のほうが好みかもしれないが、RGと淡いクリームピンクのダイヤルの組み合わせは、間違いなく最高クラスの美しさだった。62GSケースは一般的なドレスウォッチよりも少し大胆なデザインではある(正直、“ドレスウォッチ”と断言すると議論が起きそうで少し怖い)。とはいえ、これが人生最後のゴールドウォッチになるかもしれないと思えるような1本であることは間違いない。

ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: ヘリテージコレクション メカニカルハイビート 36000 桜隠し(Heritage CollectionMechanical Hi-Beat 36000 sakura-kakushi)
型番: SBGH368

直径: 38mm(ラグ・トゥ・ラグは44.7mm)
厚さ: 12.9mm
ケース素材: 18Kローズゴールド
文字盤: カッパーピンク
インデックス: 18KRG製アプライド
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: クロコダイルレザーストラップ、3つ折りクラスプ付き

ライカが腕時計を作る理由、そしてどこを目指しているのか。

カメラブランドとして確固たる地位を築いてきたライカ。その一方で、2021年に時計市場へ参入し、多くの時計愛好家の注目を集めました。なぜライカは時計を作るのでしょうか? その背景には、ブランドの長い歴史と精密機械への揺るぎないこだわりがあります。ライカ時計部門のマネージングディレクターであるヘンリック・エクダール氏に、時計事業の成り立ちと今後の展望についてお話を伺いました。

ヘンリック・エクダール氏の経歴とライカへの復帰
ヘンリック・エクダール氏はスウェーデンとドイツのハーフで、1996年にライカに入社しました。当初は国際営業部門で東欧地域を担当し、その後、BMWやロールス・ロイスなどのロレックススーパーコピー 代引き自動車ブランドを経てIWCに移籍。IWCでは17年間にわたり、中央・東欧地域のマネージングディレクターを務めました。

 「時計業界に長く関わってきましたが、ライカには特別な愛着があります。カメラと時計はどちらも精密機械であり、ライカの時計プロジェクトに参加することは自然な流れでした」とエクダール氏は語ります。

新作ライカZM 12の発表イベントに登壇するエクダール氏。
IWCでは、ドイツサッカー協会(DFB)とのパートナーシップを通じて、ドイツ代表チームのための特別モデルを開発。ビッグ・パイロット・ウォッチやダブルクロノグラフなど、現在ではコレクターズアイテムとなる時計を手掛けた経験を持ちます。こうした企画力とマーケティング戦略のノウハウを活かし、ライカの時計事業を新たなステージへと導こうとしています。2023年、ライカの時計部門を率いることとなったエクダール氏は、ブランドの歴史を尊重しつつ、新たな挑戦を推し進めています。
時計が正確な時間を計測するツールであるように、

カメラもまた瞬間を正確に記録するツールです

– ヘンリック・エクダール氏、ライカ時計部門 マネージングディレクター

ライカと時計製造の意外な関係
ライカの時計事業は、突発的に生まれたものではありません。そのルーツは、創業者であるエルンスト・ライツ1世にさかのぼります。「ライツ1世は若い頃、スイス・ヌーシャテルで時計製造を学んでいました。そこで培われた時計づくりのノウハウは、後のライカカメラの精密機械技術にも生かされています」とエクダール氏は語ります。

特別仕様のブラックカラーのライカ・ミニルクス、ボックスには腕時計もセットになっていた。 Photo Courtesy: Leitz Photographica Auction
時計製造の技術には、ライカが誇る光学技術や精密な機械加工との共通点が多くあります。素材の選定、細部へのこだわり、そして職人技。これらの要素が融合し、ライカの時計が誕生しました。「時計市場参入に対する批判もありますが、私たちは単なるブランド拡張ではなくライカの本質に根ざした時計づくりを行っています。時計が正確な時間を計測するツールであるように、カメラもまた瞬間を正確に記録するツールです。ライカの時計作りには、カメラ製造で培った精密な機械技術と、時を捉えるという共通の哲学が生かされています」とエクダール氏は強調します。

実は、ライカは過去にも時計を販売していました。1990年代にはライカ・ミニルクスというコンパクトカメラとセットになった時計を展開。こうした歴史を踏まえつつ、より本格的な時計製造へと踏み込んだのが、現在のZMシリーズなのです。

ライカの時計コレクションとその特徴

ライカ ZM 1 ゴールド リミテッドエディション
ライカは、2022年にはライカZM 1とライカZM 2(旧ライカL1・ライカL2)を発表。2023年には一体型ブレスレットデザインを採用したライカZM 11がリリースされ、後継モデルとなる直径39mmのスモールセコンドを備えたライカZM 12が2025年に発表されました。

ZM 1とZM 2は、カメラの操作系を時計に落とし込んだモデルで、プッシュボタンやパワーリザーブ表示は、カメラのシャッターや絞りの動きを彷彿とさせます。スティールモデルに続いてフルブラックのモノクロームや18Kレッドゴールド製ケースが採用された50本限定モデルも展開されました。

一方、ZM 11とZM 12は、光と影の表現に着目し、ライカのレンズが生み出す美しい陰影をダイヤルデザインに映し出したモデルとなっています。ダイヤルの製造には約30の工程を要し、完成までに最大3週間かかるなど、細部へのこだわりが際立っています。また、ZM 12は直径41mmのZM 11よりも小型化され、39mmというサイズは現在の時計マーケットのトレンドにも合致した、バランスの取れたサイジング。さらに、ライカM6でレンズを着脱する際に使用する赤いデザインのボタンがラグ裏に配されており、工具不要でストラップ交換が可能な仕組みも取り入れられています。

センターセコンドと日付表示を備えたライカ ZM 11。Photo by James Stacey

日付表示が取り除かれ、スモールセコンドとなったライカ ZM 12。
ムーブメントは、かつてGPHG(ジュネーブ・ウォッチ・グランプリ)で最優秀独立時計師の栄誉に輝いたこともあるジャン・フランソワ・モジョン氏が率いるスイスのムーブメントメーカー・クロノード社によるもの。現在はタイムオンリーモデルのみの展開ですが、モジュラー構造が採用されたムーブメントであるため、今後のカスタマイズ性にも優れています。
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ライカ時計の戦略と市場の反応

個人的にお気に入りのオリーブブラックモデル。ラバーストラップと組み合わせると非常に軽快なつけ心地。
現在、ライカの時計は主にライカストアで販売されています。「ライカストアでは、時計だけでなくブランドの哲学を体験できます。そのため、時計専門店への展開は慎重に進めています。しかし、2023年12月には初めての外部販売店として、ライカ本社があるヴェッツラーの時計店で販売を開始しました」。

 ライカの時計はストラップとブレスレットが別売りとなっている点も特徴的です。初めてライカのオンライン販売サイトをスクロールしていたときは違和感を覚えましたが、これはカメラメーカーらしい考え方に基づいていることがわかりました。「カメラボディを選んでからレンズを選択するように時計を選んでからストラップを選べるようにしています。時計の印象はストラップ次第で大きく変わるため、ユーザーが自分好みにカスタマイズできるようにしました。また、生産本数は限られるため、ストラップを個別販売することで在庫管理の柔軟性を高め、顧客のニーズに対応しやすくしているのです」。

新作発表イベントでリストショットを撮影する参加者。

手首にあったのは、スティール製ケースにブルーオレンジのダイヤルを配したライカZM 12。このモデルのみ発売は4月予定。
新作発表イベントには、時計とカメラのジャーナリストだけでなくライカの顧客や時計愛好家たちも招待されていました。小径化されたZM 12は好意的に受け入れられている印象で、特に他の時計ブランドでは見られない独特な構造のダイヤルに注目が集まりました。

レクチャーをするクリスチャン・ダウリング氏(左端)。

イベントではさらにフォトグラファーで時計部門のトレーニングマネージャーや戦略コンサルタントを務めるクリスチャン・ダウリング氏による時計撮影のデモンストレーションも開催され、彼がセッティングしたテーブルの周りには人だかりができていました。僕は常々、時計とカメラは極めて相性の良いプロダクトだと考えています。どちらも精密なメカニズムを愛する者にとって魅力的な要素が詰まっているのはもちろんですが、それだけではありません。カメラを通してお気に入りの腕時計を撮影すると、肉眼では気づかなかった繊細な仕上げやディテールが浮かび上がり、その時計の新たな表情に出会うことができます。

クリスチャン・ダウリング氏がレクチャーで撮影した1枚。
また、カメラを手に旅へ出るとき、そこで見た景色や感じた空気を写真として記録できるのは言うまでもありません。しかし、手首に時計をつけていれば、旅を終えた後、ふと時計に目を落とした瞬間に、その旅の記憶が鮮やかに蘇るのです。時計とカメラは、単なる道具ではなく、時と記憶を刻む存在として、互いに響き合う関係にあるのだと思います。

エクダール氏はインタビューの最後にライカWatchのこれからについてこう締めくくりました。「私たちは、単なる時計ブランドになりたいわけではありません。ライカのアイデンティティを反映し、技術とデザインが融合した独自の価値を持つ時計を作り続けます。大手時計ブランドと同じ土俵で競争するつもりはなく、むしろライカならではの視点を活かし、時計愛好家やライカファンにとって特別な存在となる時計を提供していくことを目指しているのです」

カルティエ プリヴェの一部としてタンク ア ギシェを復刻する。

このモデルは、アイコニックなタンクシリーズのなかでも滅多に見られない、1928年に初めて登場したモデルで熱烈に愛されてきたバリエーションである。1919年、タンク ノルマルが正式に発表されてからわずか7年後、小窓をとおして時刻をデジタル表示するという、当時としてはまさに未来的な腕時計が存在していたことを想像してみて欲しい。今回、タフで武骨なこのデザインが、オリジナルの意匠に忠実なモデルと限定のリミテッドエディションによる再解釈モデルという、ふたつのスタイルでよみがえる。

© Cartier
カルティエ時計コピー 優良サイト上のモデルは限定リリースとなるもので、ケース素材はプラチナでサイズは37.6 × 24.8mm、厚さはわずか6mm。リューズは1928年のオリジナルと同様、12時位置に配されており、この点は今年のほかのア ギシェとも共通している。しかし私が“タンク ア ギシェ オブリーク(傾斜)”または“タンク ア ギシェ ドライバー”と勝手に呼んでいるこのモデルは200本限定で、ジャンピングアワーの表示窓は10時位置に配され、文字盤全体が反時計回りに90°回転。従来の分表示(ワンダリングアワー)は4時位置に配され、ドライバーズウォッチ的なレイアウトを実現している。

© Cartier
上記以外のモデル群(イエローゴールド、ピンクゴールド、そしてプラチナ製)もムーブメントとサイズは同じで、搭載されるのは新しい手巻きのジャンピングアワーCal.9755 MC。レイアウトはより伝統的なタンク ア ギシェに倣い、時表示は12時位置、分表示は6時位置に配されている。イエローゴールド製のモデルには数字と目盛りがグリーン、ピンクゴールドのものはグレーで、プラチナ製(限定および通常モデルともに)にはボルドーカラーで施される。これらのモデルについて、カルティエは限定本数を明記していないがおそらく生産数は限られるだろう。価格はゴールド製モデル(YG、PGともに)が759万円、プラチナの通常モデルが884万4000円、プラチナの限定モデルが970万2000円(すべて税込予価)だ。

我々の考え
多くのカルティエ タンク愛好家にとってタンク ア ギシェは、ユニークピースを除けば、コレクションの最終段階そして最も到達困難な領域と言えるだろう。現存する個体は非常に希少であり、オリジナルは1930年代にかけて一点物として製作されていた。1996年にはオークションハウスアンティコルムのMagical Art of Cartierセールに向けて、イエロー、ピンク、プラチナの3種類が製造された。いずれもオリジナル同様にリューズは12時位置にあり、ケースにはラグのラインに沿ってカットが施され、ブランカード(仏語で担架の意)のフォルムを構成していた。その翌年、1997年にはカルティエの創業150周年を記念してプラチナ製の150本限定エディションが発売されたが、このときはリューズの位置が3時に移されてスリムなデザインが一新された。この新たなデザインは2005年、コレクション プリヴェ カルティエ パリ(CPCP)の一部として復活。ローズゴールド製で100本限定のシリーズとして展開された。

© Cartier
オリジナルに立ち返った“12時位置のリューズデザイン”の復活は、このモデルを再び見直すにふさわしい理由である。3時位置に付けられたゴツいリューズはあまり好みではなかったし、1997年のArt of Cartierバージョンを狙っているのでなければ、基本的にこれまで選択肢はこの後者のデザインしかなかったのだ。オブリークについては、正直なところ複雑な気持ちだ。自分にとって特別な魅力は感じないが、1920年代のカルティエが体現していたアヴァンギャルドな精神の進化形と見なすならば、カルティエコレクターたちがすぐに手を伸ばすのも当然だろう。一方で新作のサイズ感については、まったくもって素晴らしいと言わざるを得ない。


また今回のケースデザインについても納得しきれていない。ブランカードに沿った切れ込みがなくなって全面がヘアライン仕上げとなり、面取り部分のみがポリッシュ仕上げになっている点は、1928年のオリジナルを忠実に再現しているとは言いがたい。もしかすると元々の仕様がそうであった可能性もあるが、カルティエの所蔵コレクションにある個体が何らかの時点でポリッシュや再仕上げを施され、ディテールが失われた結果、現在のようなデザインになっているのではないか...そんな気がしてならない。願わくばカルティエがその実機を見せてくれて、自分の目で確かめられるとよいのだが。

© Cartier
基本情報
ブランド: カルティエ(Cartier)
モデル名: タンク ア ギシェ(Tank à Guichets)
型番: WGTA0234(イエローゴールド)/WGTA0235(ピンクゴールド)/WGTA0236(プラチナ)/WGTA0237(プラチナ限定モデル)

直径: 37.6×24.8mm
厚さ: 6mm
ケース素材: イエローゴールド、ピンクゴールド、プラチナ
文字盤: 小窓越しに見えるホワイトディスク
インデックス: デジタル表示
夜光: なし
防水性能: なし
ストラップ/ブレスレット: グリーン、ダークグレー、バーガンディ、ブラックのアリゲーターストラップ(上記モデル順に対応)

© Cartier
ムーブメント情報
キャリバー: 9755 MC
機能: 時・分のデジタル表示
直径: 21.5mm
厚さ: 6mm
パワーリザーブ: 約42時間
巻き上げ方式: 手巻き(12時位置リューズ)
石数: 17
振動数: 2万8800振動/時

価格 & 発売時期
価格: 970万2000円(プラチナ限定モデル)/884万4000円(プラチナ)/759万円(18KYG、PG)すべて税込予価
発売時期: 詳細届き次第アップデート
限定: あり、オブリークモデルは世界限定200本

カルティエはその節目を記念して、新たなモデルをコレクションに加えた。

長い歴史を誇るタンク LC(ルイ カルティエ)の新作で時計界を驚かせるのは容易ではないが、今回のタンク LC オートマティックは、その難題を見事にクリアしてみせた。

© Cartier
昨年発表されたミニモデルによって、タンク LCコレクションはすでに完成の域に達したようにも見えた。だが予想を裏切るかたちで、カルティエはこの最もコピーされたデザインをサイズアップし、自動巻きキャリバーの搭載を実現した。私の記憶が正しければ、タンク LCに自動巻きムーブメントが搭載されるのは、1974年に登場し、いまや高いコレクターズバリューを誇るオートマティック“ジャンボ”のデュオ以来、初めてのことである。
2025年、新たに登場するタンク LC オートマティックは、縦38.1mm×横27.75mm、厚さ8.18mmのケースサイズ。ローズゴールドとイエローゴールドの2種展開で、ダイヤルにはサンバーストにも似た独特の表情が与えられている。
カルティエはタンク LCの美学に対して非常に慎重であり、そのデザインから大きく逸脱することは滅多にない。現在のラインナップではクォーツモデルにグレイン仕上げのダイヤルが採用され、手巻き式のタンク LCにはカルティエのクラシックなギヨシェ模様を模したビーズ仕上げのダイヤルが用いられている。ただ今回の新作では、針の軸を中心として放射状に広がる、いわばサンバースト仕上げ風のダイヤルパターンが採用されており、その模様はダイヤルの縁にまで達している。この仕上げは、私たちがこれまで見てきたカルティエのダイヤルとは明らかに異なっており、フルローターの自動巻きキャリバーをさりげなく想起させる、隠れたオマージュとも受け取れる表現である。

© Cartier
外観のディテールにおいて、新作タンク LC オートマティックはこれまで親しまれてきた従来のタンク LCにほぼ準じている。ブルースティール製のソード型時・分針、タンク LCらしく秒針は非搭載、そしてセミマット仕上げのクラシックなアリゲーターレザーストラップが組み合わされる。ケースと同色のビーズ装飾付きリューズには、サファイアカボションがあしらわれている。
 搭載されるCal.1899 MCは、2023年に刷新されたタンク アメリカンで初登場したもの。当時カルティエは、この新しい自動巻きムーブメントが従来のものより薄型であり、新モデルを以前よりもおよそ1mm薄くすることを可能にしたと説明していた。

我々の考え
タンク LCを語るうえで、サイズは非常に重要な要素である。世紀にわたるデザインに幾度となく手を加えてきたカルティエは、常にあらゆる好みや手首のサイズに応える多彩なバリエーションを展開してきた。タンク LCのサイズを拡大するという試みもひとつの進化だが、今回の新作で特筆すべきはラインナップの拡充と同時に、自動巻きの復活を果たしたことだ。

© Cartier
1974年に発表されたオートマティック仕様のタンク LC“ジャンボ”は、ここ数年で一層注目を集めており、ヴィンテージカルティエ全体への関心の高まりを差し引いてもその人気ぶりは際立っている。“ジャンボ”と呼ばれるモデルは実は2種類存在し、小さいほうは33.5mm×25.5mm、大きいほうは34.5mm×28mmのケースサイズとなっている。これに対して、今回のタンク LC オートマティックは38.1mm×27.75mmと、両者よりも大きいものの、カルティエ現行のタンク マスト XLが41mm×31mmであることを考えると、極端な大型化とはいえない。このような背景を踏まえると新作タンク LC オートマティックにふさわしいサイズ呼称を与えるとすれば、ジャンボが適切だろう。LMの呼称は、ルイ カルティエには似合わない。


時計メディアや“インフルエンサー”たちがこぞって小径時計回帰を叫ぶなかで、今回の新作はその潮流に逆らうかのようにも見える。あるいはカルティエがトレンドを読み違えたのでは...そんな辛口の見方もできるだろう。だが、ここでリー・コルソ(Lee Corso)氏の言葉を借りよう。“ちょっと待った、友よ”。私の見解だとカルティエは今回、現代的な過剰サイズに陥ることなく、タンク LCにおける大きめの選択肢を見事に提示してみせた。正直、プレスリリースを開いたとき、ケース径の数値が4で始まっているのではと身構えたものだ。

© Cartier
このリリース自体にはもちろん驚かされたが、そのサイズ感がXLに走らず、抑制の効いたものであったことにも意外性を感じた。ただ振り返ってみると2023年のタンク アメリカン ラージと、それに搭載された新型の薄型自動巻きキャリバーを経て、この展開は予兆として存在していたのかもしれない。昨年のタンク ミニで巧妙に煙に巻かれた感はあるが、このムーブメントがタンク アメリカンに適しているのであれば、いずれタンク LCにも搭載されることは予見できたはずなのだ。

基本情報
ブランド: カルティエ(Cartier)
モデル名: タンク LC LM オートマティック(Tank Louis Cartier Automatic)
型番: CRWGTA0346(RG)/CRWGTA0357(YG)

直径: 38.1mm×27.75mm
厚さ: 8.18mm
ケース素材: ローズゴールドまたはイエローゴールド
文字盤: シルバー(サンレイ風仕上げ)
インデックス: ローマ数字
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: セミマット仕上げのアリゲーターレザーストラップ

© Cartier

ムーブメント情報
キャリバー: 1899 MC
機能: 時・分表示
巻き上げ方式: 自動巻き
パワーリザーブ: 約38時間
振動数: 2万8800振動/時

価格 & 発売時期
価格: 236万2800円(税込予価)
限定: なし

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