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オメガ「プラネットオーシャン」第4世代を発表~

新たなプラネットオーシャンの誕生

オメガは「プラネットオーシャン」第4世代を発表。コレクションを全体的に刷新し、3種類のウォッチヘッドと、それぞれに組み合わせ可能なブレスレットやストラップを備えた、全7モデルの新作が登場します。

 

プラネットオーシャンの進化
初代プラネットオーシャンの登場からちょうど20年。オメガの時計職人たちは、この象徴的なコレクションに再び立ち返り、現代にふさわしい全面的な刷新を施しました。
第4世代となる今回のモデルでは、ケースとブレスレットの構造に目を引く変化が加えられ、外観のデザインも一新されました。さらに、技術面でもアップデートが施され、性能と品質は最高水準に引き上げられています。

 

一方でプラネットオーシャン本来の魅力は失われていません。オメガと”オーシャン”との歴史的繋がりというDNAを受け継ぎ、ダイバーズウォッチのアイコンとなった数々の特徴的な要素も健在です。
今回の新章は、オメガのダイビングの歴史を象徴するオレンジカラーを含む、7種類の新しいコーアクシャル マスター クロノメーターモデルの発表とともに幕を開けます。

 

オレンジモデル– ダイアルには、マットオレンジのアラビア数字がニス仕上げで施され、新しいオレンジセラミックベゼル(ZrO2)リングには、ホワイトのハイブリッドセラミックで施されたダイビングスケールが。 ステンレススティール製ブレスレット、ブラックラバーストラップもしくは、オレンジラバーストラップバリエーション。

 

ブルーモデル– ダイアルには、マットホワイトのアラビア数字がニス仕上げで施され、ブルーセラミックベゼル(ZrO2)リングにはホワイトエナメルのダイビングスケールが。ステンレススティール製ブレスレットまたはブラックラバーストラップのバリエーション。

 

ブラックモデル– ダイアルには、ロジウム仕上げのアラビア数字が配され、ブラックセラミックベゼル(ZrO2)リングにはホワイトエナメルのダイビングスケールが。ステンレスティール製ブレスレットまたはブラックラバーストラップのバリエーション。

 

パイオニアとしての歴史
初代「シーマスター プラネットオーシャン」が誕生したのは2005年。
それから20年にわたり、このコレクションはラグジュアリー ダイバーズウォッチの象徴として、スタイルと機能性の完璧なバランスを体現し、進化するアートとパイオニア精神を示し続けてきました。


プラネットオーシャン誕生前 1932
オメガのダイビングにおける伝統は、1932年に発表された“マリーン”から始まりました。世界初の民間ダイバー向け腕時計として知られる“マリーン”は、オメガの水中での伝説の幕開けとなり、1950年代、60年代、70年代へと続いていきます。
その間に登場した「シーマスター300」、「シーマスター1000」、「プロプロフ」などの革新的なモデルは、いずれも深海での技術革新と信頼性において高く評価されました。

 

マリーンの広告(1937年)

1990年代もオメガは、ダイバーズウォッチの限界に挑み続け、「シーマスター ダイバー300M」を発表します。このモデルは、今なおブランドを代表するコレクションのひとつとして愛されています。新たなモデルを生み出すた
びに、オメガはダイビングウォッチの“マスター”としての評価を高め、世代を超えた海洋探検家、開拓者、科学者たちの信頼を獲得してきました。

左から、オメガ シーマスター(1932)、マリーン(1936)


インスピレーション  S I N C E 1957
初代プラネットオーシャンは、1950年代後半から1960年代初頭の「シーマスター300」にインスピレーションを得て誕生しました。



上からシーマスター(1963)とシーマスター広告(1965)

これにより、オメガの特徴であるダイバーズウォッチのDNAを2005年のデザインの中心に残すことができました。視認性の高いブラックダイアル、15分ごとのアラビア数字、アロー針、そしてインナーリングを備えたダイビングスケールベゼルなど、オメガならではの特徴がいかされています。


オメガ シーマスター(1976)


オメガ オートマチック シーマスター(1978)


THE 1st GENERAT ION  2005
深海での卓越性
プラネットオーシャンは、オメガのダイバーズウォッチの歴史において、もうひとつの重要な節目となりました。最大600mの深海に対応する設計は、「シーマスター ダイバー 300M」の2倍の防水性能を誇り、過酷な水中探査にも応える革新性を備えています。

リキッドメタルTMの革新
2009年、スイス製腕時計として初めてリキッドメタル™が採用されました。ブラックセラミックベゼルのダイビングスケールに使用されたこの技術は、美しさに加え、優れた耐傷性と長期的な安定性をもたらしました。長年にわたる試行錯誤の末に実現したこの革新的なアップデートは、ケースのデザインの新時代を告げるものでした。


リキッドメタル


THE 2nd GENERAT ION  2011
2011年には、プラネットオーシャン第2世代が登場します。セラミックベゼル、光沢のあるダイアル、サファイアクリスタルケースバック、そしてキャリバー8500など、注目すべきアップデートが続々と加えられました。キャリバー8500自体数年前から製造されていましたが、2011年のプラネットオーシャンに搭載されたものには、革新的なシリコン製Si14ヒゲゼンマイが採用され、耐磁性が向上しました。


オレンジセラミックの実現  2014
セラミックで理想的なオレンジ色を再現することは、技術的に非常に困難だったため、2014年まで、プラネットオーシャンのオレンジベゼルはすべてアルミニウム製でした。しかしオメガは2014年、プラチナ製「プラネットオーシャン GMT」において、ついにオレンジ セラミックベゼルの採用に成功しました。
ケースバックには“World Premiere“の文字が刻まれ、つねに革新を続けるオメガを体現する、象徴的な成果のひとつといえます。


THE 3rd GENERAT ION 2016
2016年に登場した第3世代は、コーアクシャル マスター クロノメータームーブメントを搭載し、精度・性能・耐磁性においてスイス時計業界の最高基準を満たすコレクションへと進化しました。新たなサイズ展開やスリムなケースに加え、18Kセドナ™ゴールドの初採用や、ラバーをあしらったダイビングスケール付きセラミックベゼルリングなど、外観面でも多くの革新が加えられました。同年には「プラネットオーシャン ディープ ブラック」も発表され、すべてセラミック製4モデルが登場。深海600m(60気圧)に耐える設計で、海の過酷な環境にも対応する性能を備えています。


THE ULTRA DEEP 2019
2019年に地球上で最も深い場所に到達した、革新的なウルトラディープは、2022年に新たな「プラネットオーシャン」コレクションとして、一般向けに再構築されました。実際の海洋環境でテストされたこの驚異的なダイバーズウォッチは、6,000メートルの防水性能を備え、飽和潜水用のISO 6425基準を満たしています。
また、オメガの革新精神を象徴する本モデル6本は、新素材である「O-MEGAスティール」使用しています。これは高性能なステンレススティール合金で、優れた強度、より白みのある色合い、比類なき光沢が特徴です。耐食性にも優れ、長期にわたり美しい外観を維持することができます。


新たなプラネットオーシャン
「プラネットオーシャン」第4世代が、独特の美的進化を遂げたことは明らかです。
ここからは、クラシックなデザインに、現代的なエッジさを加え、一部のモデルには2005年以来、コレクションに欠かせないオレンジカラーを採用するなど、アップデートされた第4世代の個性についてご紹介します。


THE  4th GENERATION  E V O L U T I ON
インスピレーション
2005年に登場した「プラネットオーシャン」は、1960年代の「シーマスター300」モデルからインスピレーションを受け継いでいます。第4世代では、オメガは再びシーマスターの歴史に立ち返り、1980年代~90年代のモデルを見直し、その構造コンセプトの一部を取り入れています。その結果、シャープで角ばった面を持つ、新しい“フィット感“のあるデザインに生まれ変わりました。

サイズ
新しい「プラネットオーシャン」はすべて42mmで、これは2005年の初代モデルと同じサイズです。
ケースはよりスリムになり、前面のフラットなサファイアクリスタルや、ケース全体とベゼルの洗練された設計により、従来モデルよりも平らな印象に仕上がっています。

 


第3世代の標準モデルが16.1mmの厚さだったのに対し、新モデルは13.79mmまで薄型化されています。


ブレスレット
ケース形状の変化に伴い、ブレスレットも刷新されました。ケースに美しく一体化されたデザインとなっており、フラットなリンクが連なる構造が特徴です。外側にはブラッシュ仕上げの2列、中央にはポリッシュ仕上げの1列が配置されています。

 

シーマスターの伝統を尊重しつつ、これまでよりもスリムで快適性に優れた設計となっています。6段階の調整が可能で、オメガ独自のダイバーエクステンションも搭載。ラバーストラップにはフォールディング クラスプが採用されています。

ダイアル
新しい「プラネットオーシャン」のダイアルは、すべてマットブラックとなります。アロー針や、スーパールミノヴァを充填した力強いインデックスといった象徴的な要素を継承しつつ、アラビア数字の書体に新たな変化を加えました。

 

微細な違いではありますが、数字はオープンワークで角ばった形状となり、ケースやブレスレットのシャープな印象と調和しています。これは、初代「プラネットオーシャン」にも見られたインデックスへのオマージュでもあります。
また、ダイアル上のオメガロゴはロジウム仕上げで、転写された文字はすべてホワイトです。

ケースデザイン
第4世代「プラネットオーシャン」は、構造的な視点から見ても劇的な変化を遂げています。
メインボディと内側のチタンリングからなる2パーツ構造で、全体のラインはよりシャープに、エッジはより明確に表現されています。また、新しいデザインに合わせて、20年間コレクションの特徴だったヘリウムエスケープバルブが廃止されました。

 


チタン製ケースバック
新しい「プラネットオーシャン」は、サファイアクリスタルの代わりにグレード5チタン製のねじ込み式ケースバックを採用。これにより、時計のサイズ感が洗練され、軽量化と強度向上も実現しています。ケースバックには波模様の縁取りが施され、“PLANET OCEAN” と “SEAMASTER”の刻印、防水性能の表記、そして中央にはオメガの象徴であるシーホースのエンブレムがエングレーブされています。

技術的な成功
革新とパイオニア精神を受け継ぐプラネットオーシャンの伝統は、第4世代においても揺るぎなく息づいています。随所に、オメガの先進的なデザイン哲学を物語る新たなディテールが散りばめられています。



チタン製インナー リング
2019年に「プラネットオーシャン ウルトラディープ」を発表した際、オメガはダイバーズウォッチ技術に関する理解を大きく深めました。
この知見は、今年の新しい「プラネットオーシャン」を含む、今後のタイムピース設計にも活かされます。
すべてのモデルのケース内側には、チタン製インナーリングが備わっており、深海での使用に耐えるために必要な素材強度を確保しています。

 

オメガは、2005年の初代「プラネットオーシャン」(および1960年代の「シーマスター300」) と同じ美的スタイルを再現したいと考えていました。これらのモデルには、ケースデザインの一部としてインナーリングが採用されていたのです。今回の技術的なデザインは、初代と同じ外観を保ちつつ、600mの防水性能に対応する機能的な役割も持たせることに成功しています。


アイコニックなオレンジカラー
オレンジは「プラネットオーシャン」のコレクションにおいて初期から象徴的なカラーとして親しまれてきました。オメガは、今年の新作を開発するにあたり、この鮮やかな色合いを引き続き、提供したいと考えました。
しかし、セラミック製ベゼルリングにオレンジを再現するのは特に難しく、化学的な特性や製造工程の複雑さから、美しく映えるオレンジを作りだすことは容易ではありませんでした。

 

オメガは特にこのコレクションのために、セラミック加工技術の完成度を高めるために時間を費やし、最終的にいくつかのモデルのベゼルに、鮮やかなオレンジの新色を施すことに成功しました。

 


マスター クロノメーター キャリバー 8912
すべてのモデルには、ウルトラディープにも搭載されているオメガ コーアクシャル マスター クロノメーター キャリバー8912が採用されています。この自動巻きムーブメントは、60時間のパワーリザーブを備え、スイス連邦計量研究所(METAS)が 認定する、精度、性能、耐磁性の最高基準を満たしています。

 

新しいシーマスター プラネットオーシャン コレクションの発売を記念し、オメガは、グレン・パウエルとアーロン・テイラー=ジョンソンをキャンペーンアンバサダーとして起用し、グローバルで展開します。

カルティエの「タンク アメリカン」が登場した。

カルティエは、1917年に誕生した同社の代表的な時計をよりモダンに、さらに斬新にアレンジさせた「タンク アメリカン」を、1988年に発表している。そして2023年、カルティエは「タンク アメリカン」にさらにアップデートを加え、少し薄く、よりスリムで曲線的なデザインとした。カルティエの多くのデザインアップデートと同様、これらの小さな変更はクラシカルなデザインに若干の、そして際立った改良をもたらすものだ。 それが「タンク」を「タンク」たらしめているのであり、1世紀以上も同じ姿であり続けている理由なのだ。

 新しい「タンク アメリカン」は、ミニ、スモール、ラージの3サイズ、素材はピンクゴールドとスティール、ダイヤモンドをあしらったホワイトゴールドの3つの金属で展開する。お好みであれば、ミニとスモールのPG製「タンク アメリカン」には、ダイヤモンド入りやブレスレットタイプもある。なお同僚のマライカがすでに取材した、ブレスレットとたくさんのダイヤモンドをあしらったミニのWGもある。

カルティエ「タンク アメリカン」のRGモデルとSSモデル
 私は44.4×24.4mm(ほかのサイズはスモールが35.4×19.4mm、ミニが28×15.2mmだ)という大きさの、SS製とPG製の「タンク アメリカン」にたくさんの時間を費やした。スモールとミニの小振りサイズはクォーツとなるが、カルティエはラージモデルに自動巻きムーブメントを搭載している。従来のアメリカンと比較した際、最も異なる違いは厚みである。新しいラージモデルの厚みは8.6mmと、先代モデルから1mm以上薄くなっている。80年代に登場したアメリカンは「タンク サントレ」を参考にしており、新しいアメリカンを薄くすることで、この歴史的なリファレンスにより寄せているのだ(たとえ100周年記念のサントレが厚さわずか6.4mmだったとしても)。

 カルティエが「タンク アメリカン」のラージモデルに自動巻きムーブメントを搭載しているのは素晴らしいことだが(そしてターゲットとなる消費者は、おそらく自動巻きの実用性を重視しているだろう)、私は手巻きの「タンク」についロマンを感じてしまうため、「実用性なんて二の次でいいからラージとスモールどちらのアメリカンにも手巻きムーブメントを搭載しよう」とカルティエに言われたら最高だっただろう。これが実現したらケースもさらに薄くなったかもしれないが、今となっては「タンク アメリカン」の服を着た「タンク サントレ」を求めるだけになってしまうかもしれない。

 そのほか、ケースやブランカード(フランス語で“担架”を意味し、タンクのケース側面が担架のハンドルに似ていることからその名がついた)の変更により、新しい「タンク アメリカン」のすべてがわずかにスリムで薄く、洗練されたものとなっている。そしてこれにより、「タンク アメリカン」は「タンク サントレ」にほんの少し近づきつつも、独自のアイデンティティを保っているのだ。以前のラージモデルは私の手首には少し大きかったのだが、今回ケースが変更されたことでより着用しやすくなった。スモールも手首にフィットしたが、ラージで「タンク アメリカン」があるべき付け方、すなわち、大き目でフィットしつつも手首もたれかかるような付け方しか考えられなかったのだ。

カルティエ「タンク アメリカン」のRGモデル
カルティエ「タンク アメリカン」のケースサイド
カルティエ「タンク アメリカン」のバックル
 新しいラージ「タンク アメリカン」のもうひとつの特筆すべき変更点は、縦にブラッシュ仕上げされた文字盤だ。スモールバージョンにはサンレイ仕上げを施しているのだが、カルティエはラージバージョンに別の文字盤処理を選んでいる。これはカルティエが今年アップデートした「タンク フランセーズ」にも取り入れたものなのだが、アメリカンの大きく長い面のほうがより効果的に表れている。時計のフォルムを際立たせる仕上げは、ここ数年のカルティエ限定モデル(例えばシンガポール ウォッチ クラブのためのコレクションのように)を彷彿とさせるようなとても素敵なデザインだ。

2019年に登場した、カルティエ「タンク サントレ」
「タンク アメリカン」のフラットな裏蓋に対し、2019年の「タンク サントレ」のケースサイドはラグが裏蓋からはみ出るように薄く、曲線的になっている

 奇しくもカルティエは今回、2017年の発売当時にA Week on the Wristの記事でも取り上げた、ミディアムモデルを展開から外している。ミディアムの縦サイズは41.6mmで、現在は35.4mm(スモール)から44mm(ラージ)までの差があり、多くの人にとってのゴルディロックス(黄金比)に当たる時計に、ちょっとした穴が空いてしまったのだ。少なくとも私はそのあいだに、少し引っかかるような感覚が残った。私の場合スモールのほうが快適で、ラージは少し手首に大きすぎるものの、「タンク アメリカン」のイメージにはぴったりだったのだ。とはいえケースがスリムになったことで、ラージサイズの「タンク アメリカン」は、従来のものよりもずっと身につけやすくなっている。それでもその中間的なサイズが欲しいという思いが残っていた。しかし多くの人にとって、ラージサイズはとても素晴らしいものであることには違いない。

 またサイジングに歴史的な正当性がないとも言い切れない。「タンク アメリカン」のラージサイズは、同じくラージのヴィンテージ「タンク サントレ」に相当し、小振りなスモールはミディアムのヴィンテージモデルとほぼ同じ大きさである。もし「タンク アメリカン」がヴィンテージの「タンク サントレ」を意識しているのであれば、カルティエのサイジングも文字どおりの意味を持たせているようで、その点についてはあまり非難はできない。

カルティエ「タンク アメリカン」のリストショット
 1921年、カルティエは「タンク」初のカーブしたケースとなる「タンク サントレ」(フランス語で曲がったという意)を発表。これは1920年代らしい時計で、その後このスタイルはすぐに廃れるもののやがて復活し、それ以来カルティエのカタログの主役として君臨し続けている。現在では記念モデルや限定モデルといった、入手困難なほどに美しいモデルとして登場を果たしており、「タンク」コレクションの最高級品のような存在になっている。その大きさゆえに、現代の嗜好に最も適切な「タンク」でもあるのだ。

カルティエ「タンク アメリカン」のRGモデルのイメージ
 しかし「タンク サントレ」は、我々がInstagramを通じて垂涎するようなコレクションとしてほぼ限定しており、そのほかの人たちにとって、湾曲した「タンク」は「タンク アメリカン」なのだ。1988年にYGのみで登場したが、2017年にSS製が発表されると、“入門用”タンクとしてのベストセラーのひとつとなった。SS製ラージ「タンク アメリカン」は90万7500円(税込予価)で販売される。ロレックス オイスターパーペチュアル 36と基本的に同じ価格のため、すぐにわかるデザインでありながら素敵でスタイリッシュな時計が欲しい、また毎日でも身につけられる時計が欲しいという人は、自然と買いに赴くかもしれない(なお「タンク アメリカン」は30m防水仕様)。「タンク アメリカン」はアリゲーターストラップがセットになっているが、もっとカジュアルなタイプでも違和感はないと思う。

 今年行われた「タンク アメリカン」のアップデートは、そのすべてがカルティエらしくなった。ほんの少しスリムかつエレガントであり、そしてつけやすくなったが、多くの人にとってその変化はほとんど感じられないだろう。そしてそれこそが重要なポイントなのだ。

今年最も話題になった時計にビバーウォッチ カリヨン トゥールビヨン ビバー。

「どうぞ撮ってください。私たちは準備ができていますから」

第1弾となるビバーウォッチの発表からちょうど1週間半が経過したとき、同ブランドの共同創設者のひとりであるピエール・ビバー(Pierre Biver)氏と、3度目となる対面で話をしたときのことだ。1年あまり前にローンチしたこのブランドが入門機として選んだのは、ポリッシュ仕上げを施したチタン製のカリヨン・トゥールビヨンだ。それはとてつもなく複雑で鮮烈な印象を放ちつつも、優美でモダンな存在感を示している。スーパーコピー時計代引き直前、スイス・ジヴランにある、ファームハウスの本社で行われた発売記念パーティには、業界のトッププレーヤーらが参列した。しかしイベント外にいた多くの(ネット上の)ウォッチコミュニティからの反応は、まるで報復を考えているような殺伐としたものだった。わずか23歳にして、これまで以上にいろいろなスポットライトを浴びることになったピエール・ビバー氏は、その事実から逃げなかった。

Pierre and Jean-Claude Biver on stage at the announcement of their watch.
時計の発表会に登壇した、ピエール&ジャン-クロード・ビバー親子。

 ピエールは「人々が批判していることはよく理解していますし、私たちもそれに値すると思っています」と言う。「例えば、短期間のスケジュールとプレスからの画像の期待に応えて、3Dレンダリング画像を多用しましたが、これは時計を正当に評価するものではありません。また必ずしも時計についてきちんと時間をかけて伝えていたわけではなく、言いっぱなしにしていて、説明不足な部分もありました。もっと違ったやり方があっただろうと思うことはいくつかありますし、正直なところ、私たちが受けている批判や論評のなかには、実際には非常に建設的なものもあると思います。しかしノイズが多いのも事実です」

 57万ドル(日本円で約7665万円)の腕時計を購入する対象ではなかったと思われる視聴者たちから、すぐさまInstagramにミームや苦情が流れてきた(そのうちの何人かは認めるだろう)。その議論の中心はまさにこれだった。高価な時計はどうあるべきなのか? 新ブランドがその価格でスタートするということは、どういうことなのだろうか? このブランドは時計業界で最も重要な人物であり、このブランドを支えるもうひとりの共同創業者でもあるレジェンド、ジャン-クロード・ビバーという名に便乗しただけなのだろうか? この時計を実際に買う人はいるのだろうか?

The Biver Carillon Tourbillon
 私は少し機転を利かせて、ふたりにこんな質問を投げかけてみた。彼らは動じず、すんなりとそれを受け入れてくれた。特に、かつてはブランパン、オメガ、タグ・ホイヤー、ウブロ、そして最終的にはLVMHのすべての時計を率いたマーケティングの天才と呼ばれる人物として、またトップブランドのCEOとして、ときに“やあ”と言うだけでインタビューとして成立するこの世界において、ジャン-クロード・ビバー氏はとても率直な意見を述べてくれた。

Jean-Claude Biver and Pierre Biver
フォーシーズンズ内にて、ジャン-クロード&ピエール・ビバー。

「もし私が疑問に思うことがあるとすれば、最も複雑な時計を最初に発売するという判断が正しかったのかどうかということです」。2週間前、ニューヨークで開催されたアメリカのリテーラー、マテリアル・グッド(Material Good)のイベントで年配のほうのビバー氏は私にこう言った。「今後、3針時計とクロノグラフモデルの両方が数カ月のうちに登場しますが、こちらはきっと感動してもらえると思います。ですがみなさんは私たちが何をできるか、実力を見たかったのでしょう。1年経って最初にやったことがシンプルなことでしたから、がっかりしてしまったんだと思うんです」

 この時計に対する衝撃的な反応は、私を含めて少なからず多くの人が予想外の決断をしたことに原因があると思われる。ハイパーモダンなデザイン(極限まで磨き上げられたチタンにストーンダイヤル、鋭い角度、驚くほどユニークなファセットを施したブレスレットなど)は私をはじめ、おそらく多くの人が伝統的なブランパンらしいデザインを期待していたために驚きを隠せなかったのだろう。

The Biver Carillon Tourbillon
The Biver Carillon Tourbillon
The Biver Carillon Tourbillon
 その代わりにビバー氏たちは、2008年のジャガー・ルクルト レベルソ・ジャイロトゥールビヨン2や最近のハイブリス・メカニカのように複雑機構を組み合わせることにこだわった、ある種グランドコンプリケーションのウブロ(ほかのハイパーモダンな印象とは異なり、フューチャリスティックでありながら、ひと目で時計とわかるデザイン)に近い雰囲気のものをつくりあげた。複雑機構を実現する能力は確かに重要でありトレンドでもあるが、一方市場では、リーズナブルな価格に抑えつつも、ひとつの優れた複雑機構を備えたものを求める需要に落ち着いたようである。このように市場があっちこっちに動くなか、彼らもあっちこっちに動いたのだ。

 これは若いピエール氏が描く現代に沿ったビジョンなのか、はたまたアートディレクターが自分(とそのブランド)を軌道に乗せようとする“ガードレール”からようやく脱却するように、ジャン-クロード氏の個人的な好みの奥底にあるものがようやく表に出てきたのか、ずっと気になっていた。これは彼自身が言うようにジャン-クロード・ビバー氏による“最後の作品”である。

The Biver Carillon Tourbillon
「それは、私の父について本当に理解している人があまりいないということです。彼をコントロールすることはできません」とピエール・ビバー氏。「彼がこれまで働いてきたブランドでも、安全策を取ってきたと思われたかもしれないですが、いつもそうでした。彼はどのブランドでも自分の気持ちをたくさん注ぎ込んでいたのです。彼がいた頃のゼニス、あるいはタグ・ホイヤーを例にとれば、彼の役割を感じることができるはずです」

「彼はそれを持ち込んで、そして今、私たちは人々の予想や期待とあまりにも違うことをしています」と彼は認めている。「みなさんは非常にクラシックか、あるいは非常にモダンなもののどちらかを期待していたと思います。父と一緒に仕事をしたり、私の父との関係や仕事のやり方では区別をするのが難しいですね。誰のアイデアがどうだったかは、もう言えません。しかし今日、私たちはシンボリックかつ伝統的な時計が、今の時代でつくられたらどのように見えるかという最高の状況のなかに実際いるのです」

The Biver Carillon Tourbillon movement
 理論上このムーブメントは、ジャン-クロード・ビバー氏がキャリア初期に受けたジャック・ピゲによる助言からインスピレーションを得たものである。ジャック・ピゲの始祖、ルイ=エリゼ・ピゲは歴史上最も偉大な時計職人のひとりであり、複雑時計の名手でもあった人物だ。実際、ブランパンは後にL.E.ピゲの屋根裏部屋でミニッツリピーター用のベルを見つけている。ビバーウォッチは“音・記憶・動き”の3つの項目こそ実現したいことの本質であるといっている。カリヨン・トゥールビヨンは“音”をチェックし、今後は日付を“記憶”する永久カレンダーや、“動き”を追いかけるクロノグラフというのを計画してるようだ。またプレス資料のなかには、相互のつながりや文字盤に選んだストーンの魅力について語っているなど、非常に“ニューエイジ”的な表現が数多く見受けられる。

The Biver Carillon Tourbillon
The Biver Carillon Tourbillon
 実際にこのムーブメントはヌーシャテル近郊のレ・ゾー=ジュヌヴェにあるセルクル・デ・オルロジェ(Cercle des Horloger)とデュボア・デプラ(Dubois Dépraz)が開発、そこから発展したほかのムーブメントを使用している。さらにミオドラグ・ミヤトヴィッチ(Miodrag Mijatovic)氏が設立したM-Design社および、ジャン-クロード氏がブランパン時代から一緒に仕事をしてきたプロダクトデザインマネージャーのフィリップ・ジラール(Philippe Girard)氏との共同によりデザインは誕生した。

The Biver Carillon Tourbillon
 しかし発表されたとはいえ、これらの要素は決まっているわけではなかった。ピエール・ビバー氏によると、最高の音色を奏でるためにリピーターに最適なゴングを調達して、ハンマーとその軌道を微調整している最中だという。5月中旬にはこの調整を終えて、9月にはフル稼働で生産にこぎつけたいとのことだった(当初は年産12本だけだが、人員を増やせば20本まで増やせるそう)。

 カリヨンリピーター“のみ”ならず(ゴングがふたつしかない“シンプルな”リピーターより1歩前進しているのだ)チタンを使ったトゥールビヨン(この機構は時計を複雑化させるためだけの単なる付属品と化している)を搭載しており、巻き上げ用のマイクロローターの搭載を差し引いても、今日でほとんどのブランドが行っていない複雑機構の組み合わせを実現している。これに対しカール F. ブヘラは、38万スイスフラン(日本円で約5740万円)でトリプルペリフェラル・トゥールビヨン・ミニッツリピーター(カリヨンは搭載していない)を製造している。さらにパテックも60万スイスフラン(日本円で約9070万円)を超えるRef.3939や5303J(これもカリヨンの搭載はなし)のように、長年にわたっていくつかのモデルを製造している。

 “音、記憶、動き”とともに、ビバー氏たちはプレス資料で“愛、記憶、進化”も伝え、加えてこの時計のシンボリズムについても語り尽くしている。実際、ジャン-クロード氏はこの時計の核を伝えるプレゼンテーションの冒頭で、業界における自分の過去を振り返り、これまで築いてきた50年のキャリアのうち、このブランドが“最後の5分間”になることを述べたのである。

The Biver Carillon Tourbillon
ジャン-クロード・ビバー所有のプロトタイプモデル。

 もう少し温かみのある時計がいいだとか、難解な哲学的思考を重視した時計がいいだとかそういう好みの問題は、この時計が目指しているものを実現できているかどうかには関係ないのだ。あくまでもこれはビバー家の時計づくりに対する愛情とそれを推し進めるビジョンを超絶技術で表現したものに過ぎない。マイクロローターの搭載によって、彼らが約束する“日常使い”を想像するのは少し極端だとは思うが、私はその可能性はあると想定している。そのため、私はこの時計のどこが優れているのかについて反論することも、この時計が目的を達成できていない点を指摘することもできなかった。

 またこの時点で私が何を伝えたとしても、これは嫌だと決めつけている人たちの心を変えることはできないと理解しているが、この時計を何度も(本当に何度も何度も複数の場面で)見たり身につけてみてほしい。そして、ネット上の感想や個人的な会話から切り離された状態で考えるのに十分な時間があるのであれば、実際の着用感のよさや仕上げについて、手に取って正直に考えてみる価値があると思うのだ。

The Biver Carillon Tourbillon
 実際に時計を装着してみると着用感のよさは否定できない。ピエール・ビバー氏はパテックのヴィンテージモデル、Ref.2499のラグからインスピレーションを得たと語ってくれた。ラグを下側に設けていることで、13.7mmという厚さにもかかわらず、フラットなサファイアケースバックとともに手首をより包み込むようになっているのだ。しかも50m防水を実現しながらも、一般的に市販されているクロノグラフと比較しても、それほど厚いわけではない。また裏蓋、ベゼル、ケースの側面が凹んでいるため、少し時計のテーパーが効いた仕様に仕上がっている。このブレスレットを構成する5つのリンクは、それぞれファセットカットで傾斜したおもしろいデザインで、長辺が次のリンクに接続するより前に急な傾斜があるような、一種の不等辺三角形のようなものだ。これらの計算されたデザインにより、視覚的なおもしろさと快適なつけ心地を兼ね備えた時計に仕上がっている。

The Biver Carillon Tourbillon
The Biver Carillon Tourbillon
 光による視覚的な演出もデザインのカギを握っている。ケース表面は、ハイポリッシュのチタン(ツートーンのピンクゴールドと)からサテンポリッシュへと移行して、視覚的なコントラストを強調している。決して中途半端な時計ではない。特にケースから放たれる光は議論にすらならない。

The Biver Carillon Tourbillon
The Biver Carillon Tourbillon
 また完璧に仕上がっていないことを、真面目に議論することもできないのだ。裏側にはホワイトゴールドのブリッジにブラックポリッシュとグレイン加工を施し、その下にブラスト加工を施したものがある。ローズゴールドとチタンのツートンカラーの時計はムーブメントの動きの一部をよりハッキリと見ることができ、そこから見えない部分を含むすべてのパーツが信じられないほどに完成されていることがわかる。ストーンダイヤルは厚さ0.6mmのソーダライトや銀黒曜石が層でできた硬質石でできている。またヴィンテージのボンベ(ドーム型)ダイヤルからインスピレーションを受けており、同モデルもボンベダイヤルを採用。文字盤の裏側まで丁寧に仕上げている。

The Biver Carillon Tourbillon dial
 文字盤に配されたロゴは“ブランパン”ぽいフォントであり、ひとつのグループとしてではなく一文字一文字を手作業で植字している。カーブしたインデックスと鋭いドフィーヌ針もモダンな印象で、さらに頂上部を削り、エッジな斜面にはポリッシュ仕上げ、サテン仕上げを施しているのもポイントだ。今回撮影はかなわなかったが宝石をセットしたモデルもあり、それはミニッツリピーターのスライド下部も含めて、ほぼ全体がダイヤモンドで覆われている。131万5000ドル(日本円で約1億7700万円)の時計で、カリヨンのチャイムを聞くときにダイヤモンドがなくても困らないということだ。

The Biver Carillon Tourbillon
フィリップスのオークションに出品される、ビバー プロトタイプ。

 ジャン-クロード・ビバー氏による個人的なプロトタイプはチタン製でダークストーンの文字盤を備えているが、こちらはフィリップス・オークションに出品される予定となっている(微調整をしたあと)。フィリップスアメリカ地区の時計部門責任者であるポール・ブトロス(Paul Boutros)氏も、オフィスで1時間以上かけてこの時計の仕上げを吟味したあと、その仕上げを高く評価している。ジャン-クロード氏は、今後ローンチされるビバーウォッチでも、このレベルの仕上げをを期待すべきだと発言している。しかしもし誰かが彼らはフィードバックに耳を傾けていないと思っているとしたら、それは大きな間違いだ。

The Biver Carillon Tourbillon
The Biver Carillon Tourbillon
“プロトタイプ プール JCB“

「時計の分野で多くの経験を積み、実際に時計を手にした人たちから素晴らしい建設的なフィードバックが得られたからこそ、それをもとに実際に改善していくことができるのです」とピエール氏は話す。「実際にすでに取り組んでいる意見として、地板をサンドブラストから手作業による梨地加工に変更したことで、もう少し輝きを演出すことができました。アンクルではアングラージュ(面取り)をもっと頑張ります。そしてガンギ車では同様に角度をつけてみます。また今後もブレスレットの一体感やケースのシャープさなどを改良していく予定です。ただ全体的に見ると、私たちはクライアントの評判に大変満足していますし、そのフィードバックを参考にすることで最高の時計をつくりあげることができるのです」

 とはいえ、ピエール氏が価格に対して気にしているというわけではない。

 ピエール氏は、「理由を説明せずに価格を批判することはできません」と言う。「もしも“ムーブメントのつくりが甘くて、文字盤の出来が求める価格の水準に合っていない”という声があれば、そう、それはすでに実際会話で貢献したことになるのです。もしかしたらそのなかには、不当なものもあればすべて正しいものもあるかもしれない。私たちはそれも踏まえているのです」

 しかし実際に購入した人からの評判では、価格は気にならないということを証明している。私は確かに50万ドルの時計を買う気はないが、そういう人たちは確実に存在する。実際その数は十分で、最初のビバーウォッチが発表された4日後には、年間わずか12本の生産にもかかわらず2年分の生産量を売り切ってしまったのだ。マテリアル・グッドの時計部門責任者であるヨニ・ベン・ヤフダ(Yoni Ben Yahuda)氏によると、割り当てた分のかなりの部分が売れてしまったいうのだ。

エルメスが新しくエルメスH08 コレクションを初めて発表すると、それはたちまちヒットした。

確かにスティール製スポーツウォッチであり、ほかのブランドに挑んだものだったが、それは非常に真摯で、完璧にエルメスのものであると感じられた。形状は異なり、(インデックスの)数字は社内でデザイン、さらにエルメスが(株式を)一部保有するフルリエのメーカー、ヴォーシェ社の自動巻きムーブメントを搭載していた。

エルメスはこのコレクション初のコンプリケーションモデルである、エルメスH08 クロノグラフ モノプッシャーを発表した。新作はエルメスH08の3針で確立されたデザインコードを巧みに取り入れて、より複雑な時計へとうまく統合している。ケースにはカーボンファイバーと熱硬化性エポキシ樹脂、グラフェンパウダーという新しい複合素材を採用。41mmの形状に多層状の質感を与え、また軽量で手首に快適にフィットするよう仕上げている。ワイドなベゼルはサンバーストパターンにサテン仕上げを施したチタン製だ。ベゼルとミドルケースを区切るよう、わずかに磨かれた面取りがあるのがわかる。100mの防水性能を備え、スポーツウォッチとしての機能も健在である。

モノプッシャーのクロノを見るのはいつも楽しいが、エルメスのようなデザイン重視のブランドでは特に効果的だ。エルメスH08の基本設計はほとんどそのままに、クロノグラフのスタート、ストップ、リセット3つの機能をすべて3時位置にあるリューズに組み込んでいる。またリューズも細部にまでこだわっており、PVD加工のオレンジ色のリングが機能性をアピールしている。
ほんの少し押すだけでクロノグラフが作動し、ギアなどがうまく噛み合っていて感触は良好だ。これはエルメスの自動巻きムーブメントH1837(ヴォーシェ製)の上に、デュボア・デプラ製の垂直クラッチクロノグラフモジュールを搭載しているためである。サファイア製のシースルーバックからは、ブリッジとローターにエルメスの“H”モチーフが繰り返し装飾されているのがわかる。私はいつもこのディテールが少し陳腐だと感じている。ムーブメントは2万8800振動/時(4Hz)で、約46時間のパワーリザーブを確保している。

今となってはモノプッシャークロノグラフは時代錯誤であり、(現代にあると)意図的に採用していることになる。ただ繰り返しになるが、それは機械式時計全体に当てはまることだ。しかし1934年に、ウィリー・ブライトリング(Willy Breitling)が2ボタン機構を発明するまではモノプッシャーが唯一の選択肢だった。今ではどちらが使いやすいかというと、ある事象のタイミングを止めてから再開することができる2ボタン機構のほうが、モノプッシャーのそれを大きく上回っている。それでもモノプッシャーは楽観的に物事を考える私たちにとって、ある種古めかしい魅力を持っていると思う。エルメスH08クロノグラフのモノプッシャーはデザインのシンメトリーを維持したいという願望によってそれを選択したように感じられる。しかしこの時計はモダンでありながら、ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。

ダイヤルは既存のエルメスH08コレクションから多くのヒントを得ているが、30分積算計を9時位置に配置することでクロノグラフに応用しているようだ。現在は文字盤のアワートラックとインダイヤルのみに、よりインダストリアルな外観にしたグレイン仕上げが残っている。またフォントもおなじみのもので、0と8はエルメスH08のケースそのものからインスピレーションを得たものだ。また4時30分位置の日付窓は常に論争の的だが、文字盤と同じマットなグレーで描かれた日付窓にはエルメスのフォントを使用し、違和感なく溶け込んでいる。常に色使いで遊ぶエルメスは、針とアワーマーカーのアクセントにエルメスのシグネチャーであるオレンジを採用し、快適なラバーストラップとマッチ。そのストラップの真ん中には風合いのあるテクスチャーが入っており、エルメスのクラフトマンシップの歴史に思いを馳せることができる。高級ラバーストラップはそれだけで世界が広がるが、エルメスH08ストラップはアクアノートのグレネードストラップを除けば、おそらく最高の出来栄えだと思う。

さらにエルメスはクロノグラフと並行して、グラスファイバー複合素材の新型ケースを採用した3針の4色(ブルー、オレンジ、グリーン、イエロー)も新たに発表している。クロノグラフと比較すると、これらの39mmの時計はサイズや機能、装着感においてより私のスタイルに合っていたと思う(新しい複合素材は既存モデルよりもさらに軽く感じられたのだ)。私の場合、エルメスH08ケースの形状は39mmサイズのほうが効果的で、クロノグラフでは少し幅が広く感じられた。またクロノグラフのモジュール構造により、厳密にこれは薄い時計ではない。エルメスから測定値を聞いたわけではないが、少し装着してみると13mm前後ぐらいだったように思う(標準モデルは10.6mm)。しかし軽量なケース素材とラバーストラップの組み合わせのため非常につけやすい。エルメスがスポーツウォッチのコレクションを充実させたことには感謝しているし、よくできたクロノグラフから始めるのは確かに理にかなっていると思う。

残念ながら新しいエルメスH08クロノグラフを手に入れたい方に、2024年のある時期でなければ入手できないことをお伝えしておこう。希望小売価格は214万5000円(税込、予価)前後になる予定だ。新型デイトナと同じぐらいパンチの効いた価格だが、内部はヴォーシェ社、外部はエルメスと個性がはっきりと分かれており、ほかの市場との違和感は感じられない。またトレンドに敏感でファッション性の高いメゾンであることを考えると、これが従来のクロノグラフと競合しているかといわれれば、必ずしも掛け合わされているとは思えない。それでもオリジナルのエルメスH08コレクションはスポーツウォッチと比較したときに独自の価値の提案があったから支持されたのだと思う。(オリジナルが)80万円弱、しかもチタン製で気軽に手に入る? すぐ売れてしまうわけだ。
新しいエルメスH08 クロノグラフは、まったく同じ価値提案をしているとはいえないかもしれないが、過去数年のなかでも数少ない純粋な新しいスポーツウォッチコレクションのひとつとして加える価値はある。

タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ スケルトンのさりげない魅力

モナコ市で開催されるモナコF1グランプリで、タグ・ホイヤーのモナコを身につける。


モータースポーツを(少しは)評価するという新しい時代を迎えようとしている。というのも生活のために時計の記事を書いている人間は、いつかクルマの話をしなければならない可能性があるからだ。自分の強みはわかっているし、何にでも興味を持つふりをするのは得意ではない。だから、タグ・ホイヤーのモナコを着用して、モナコで開催されたF1を観戦したことは、この10年間で一番楽しかったかもしれないという私の気持ちを、どうか信じてほしい。


タグ・ホイヤーは、2011年からモナコGPのオフィシャルウォッチパートナーを務めるほか、2016年からはF1チームであるオラクル・レッドブル・レーシングのパートナーもしている。タグ・ホイヤー(ルビ:ヴィンテージ・ホイヤー)は、間違いなくモータースポーツウォッチとクロスオーバーしたい愛好家のためのブランドである。

タグ・ホイヤーのモナコウォッチは、その誕生以来、いや、実際にはスティーブ・マックイーンがル・マンで着用して以来、“時計愛好家が選ぶアイコニックな時計”の定番となっている。ル・マンのスティーブ・マックイーンに夢中になっていた私でさえそう感じている。

モナコは決して簡単に線引きできるモデルではない。正方形で、大きく、少し派手な面があり(これは否定ではなく、大胆なデザインこそが美学の進化を衰えさせないのだ)、そして現在、この新しいオープンワークという文字盤デザインで、より視認性の高い先代モデルよりもさらに存在感を示している。

厳密には、実はタグ・ホイヤーがスケルトン仕様のモナコを製作したのはこれが初めてではない。

私が選んだスケルトンクロノグラフは、ブラックDLCのサンドブラスト仕上げのダイヤルと、同じくブラックDLCサンドブラストを施したチタンにターコイズのアクセントを加えたもの。この時計は私が普段買うような時計であると見栄を張るつもりはない。本当のことを言うと、角型の黒いオープンワークなんて私の琴線からはほど遠い場所にあるように思うだろう。でも何度でも話すが、私は変わったデザインと、リシャール・ミルに好意を抱いているので、自分自身と時計に身を任せて楽しんでいるに過ぎない。

39mmのケースは、(化粧品ブランドの)メイベリンがマスカラの最も濃い色を“ブラッケスト ブラック”と呼ぶような真のブラックで、さらに針、インデックス、日付表示窓にはスーパールミノバを塗布。ブラックとターコイズブルーのカラーリングが非常にクールで、スケルトナイズによってタグが目指している近未来的な雰囲気をさらに高めている。この時計の文字盤ではいろんなことが起きているが、配色されたサブダイヤルや針のコントラストは、不思議なほどにすべてを見やすくしている。右側のケースサイドにDLCブラックコーティングのリューズとプッシャーを備えたモダンなモナコは、ケーシングが非常に滑らかでコンパクトにも感じるし、若干カオスな内部にある種穏やかな境界線を与えているとも感じる。

オープンケースバックからは、合金製のレーシング・ホイールを模したローターが付いたムーブメントが鑑賞できる。そして従来のレザーに必要なアップデートが施された、ラバーとレザーのハイブリッドストラップを採用している。

新しいモナコ クロノグラフは、シースルーバックから覗くCal.ホイヤー02 自動巻きムーブメントを搭載し、約80時間のパワーリザーブと100mの防水性を確保。141万3500円(税込)の価格で提供される。

今回のモナコ・イン・モナコは、本当につけ心地がよく、なぜか私の手首にしっくりとなじんだ。いつもブレスレットで覆われている私の右腕と対をなすにふさわしい。私のワードローブのスローガンである“more-is-more(多ければ多いほどいい)”にぴったりだ。

モナコでモナコをつけることは、まるで秘密結社の一員になるような感覚だ。実際、切り札を手にしたようなものである。なぜならモナコGPで繰り広げられる本物の狂気と優雅なお祭りは、凡人の選択肢に入らないからだ。ロロピアーナを着用してチップは100ドル札のみ用意している味方がいない限り、これはクローズドサーキットでのイベントに過ぎない。

だが私は傍観者の立場であること以上に楽しいことはない。動物学者のジェーン・グドール(Jane Goodall)が野生の動物を観察するように、私もモナコに実際に赴いて、サーキットやパドック、そしてジミーズ(知っている人は知っている)で実際に何が起こっているのかを見に行った。ボートで泊まったまま練習用のラップ音で目を覚ますような環境、かつマックス・フェルスタッペン(Max Verstappen)から数メートルしか離れていないことを知ったら、イエス以外の選択肢はないだろう?

1日目は、真っ黒なDLCコーティングをした四角いモナコを装着していた。ちなみにこれは時間が経つにつれてとても気に入ってしまった。最初はケース形状に違和感を覚えたが、やがて目が慣れてきて、最終的には地中海フューチャリズムを感じさせるターコイズブルーのアクセントが効いた黒い四角形が好きになりそうになった。非常に狭く、急な曲がり角が多い、地球上で最も過酷なサーキットとして知られるコースを、ホット・ラップ(F1ドライバーが運転するその隣に乗ることができる体験)で周った。その日の朝、私は朝食を食べるという非常に重大なミスを犯した。

吐き気を催す前の私に割り当てられた2023年型ポルシェ911 GT3 RSに、私は無邪気にも乗り込み、比較的中年でとても純真そうなフランス人のコ・パイロットの隣でシートベルトを締めた。この紳士は物理的に可能だと思っていたよりも速いスピードで運転してくれた。そのとき、私がいかに世間知らずであったかを思い知らされた。なんて街の見せ方だ! それが実際に楽しいかどうかの目印は、スマートフォンでビデオを撮らないことである。だから証拠はないが、当時のスリルと強く握りしめた白い拳の記憶はずっと残っている。

ガタガタと手足が浮きながらも予選の様子を見たり、人々のボートにテンダーを運んだり、シャンパンを飲んだりと、その日の活動を進めた。もちろん、すべてはリサーチの名の下に行ったことだ。

そして、タグ・ホイヤーのサタデーナイト・ソワレが始まった。巨大なタグ・ホイヤーの風船、汗だくの人々の顔に光が反射するなど、夢のようなダンスフロアでカイリー・ミノーグ(Kylie Minogue)のパフォーマンスを見たり、またモナコをつけたコナー・マクレガー(Connor Mcgreggor)が予告なしにボートに現れるなどメンタルの準備ができない場面もあった。母のために(カイリーの)ビデオも撮った。

レースの日は予想以上に早くやってきた。それも、私が地球上で最も好きなナイトクラブである、前述したジミーズでの一夜のあとに。内装はフィリップ・プレインとの共同デザインで(ジミーズをよく利用する人たちが、この皮肉を完全に理解しているかはわからないが、私はとても楽しめた)、水場と壁画はアレック・モノポリー(申し訳ないけど超おもしろい)がデザインしている。ドンペリニヨンのボトルをライトアップするには最適かつ唯一の会場かもしれない。私は誇らしげにモナコを身につけ、壁画の前で何枚も写真を撮影した。その写真は決して日の目を見ることはないが。

私は継父が、テレビでF1を観戦しているような穏やかでない雰囲気のなか育った。『Formula 1: 栄光のグランプリ(原題:Drive to Survive)』やクリス・ジェンナー(Kris Jenner)がパドックを練り歩くのが流行る前のヨーロッパで育った人間にとっては、ごく普通のことだ。でも実際にレースを見ていると、少なくとも最後の数周まではなんだか拍子抜けしてしまった。テレビ観戦のようにコース全体を見ることはできないからだ。でも会場の雰囲気は漂っていて、タグ・ホイヤーのロッジでトム・ホランド(Tom Holland)が隣に立っているときや、純粋に優勝チームを応援しているときのほうが楽しいことは、誰もが知っている。


モナコに72時間滞在し、そしてモナコを身につけていた私は、この時計がレースのスリルとクルマ文化の真の象徴であることを確信した。マルジェラのTabiが本当にファッションを愛し、理解している人のためのものであるのと同じように、クルマのことが本当に好きでなければこれをつけることはないだろうし、そのほうがクールだと思う。


新しいスケルトンは、元のオリジナルデザインと比べると逸脱しているかもしれない。しかし、私は革新と進化を求めている。安全策をとるのは、サーキット内外を問わず敗者のすることだ。

あなたが時計を買うとき、何を重視するだろうか? 

確かに全体に漂う美しさは、ほとんどの購入者を引きつける。ブランド名もそうだ。そしてもちろん、市場にあるすべての選択肢と比較しなければならないだろう。しかしあなたがコレクションを作るにせよレビューをするために時計を見るにせよ、 ほとんどの人はある時点で、自分が買うかもしれないひとつの時計がそのブランドについて何を物語っているのかを考えるようになると思う。私はその時計が優れているかどうかだけでなく、そのラインナップ全体がまとまりを持っているかどうかも気になる。その時計は果たして、そのラインナップを象徴するものなのだろうか? これらの要素を満たすものが、私にとっては少なくとも検討する価値のある時計といえる。
カール F. ブヘラが本当に得意とするものがあるとすれば、それはラインナップの統一感だ。同ブランドは、私が挙げたようなちょっとマニアックなウォッチメイキング、ペリフェラルローターによる巻き上げ方式にずいぶん前から取り組んできた。巻き上げローターをムーブメントの端(外周)に配置するという、時計学的に巧妙なトリックを発明したわけでもなく、それを行う唯一のブランドでもない。だが、それをラインナップに統合し、製造本数と価格の両方で大衆に提供することに最も優れた仕事をしたブランドであることは間違いない。その一例が、今年初めに発表されたマネロ ペリフェラルの最新モデルである。
この時計は基本的に既存のラインナップに新しい文字盤バリエーションを加えるものだが、さらなる特徴を秘めている。実はCal.A2050ムーブメントの導入については2016年に記事として取り上げているが、このときは伝統的なケース素材と文字盤の組み合わせによるドレッシーな時計という位置付けだった。
このとき用いられた伝統的なアプローチは理にかなっていた。ペリフェラルローターの利点は、中央で回転するローターに邪魔されることなくムーブメントの仕上げを鑑賞できること、そしてマイクロローターよりも効率的な巻き上げができることだ。だが、スモールセコンドの採用はこのムーブメントに単にドレッシーさを与えただけのように見えた。そして市場に溢れるその他多くのセミドレスウォッチの波に飲まれていってしまった。
COSC認定クロノメーターを取得しており、2万8800振動/時で駆動し、55時間のパワーリザーブを有するムーブメントに変わりはない。しかし今作においてカール F. ブヘラは、マネロ ペリフェラルが今日のシーンでより大きな存在感を示すことができるような、視覚的な衝撃を与える方法をついに見つけたのだと思う。
私のほかの記事を読んでくれている方ならすでにご存じだと思うが、私は色彩が時計に与える影響に魅せられ、すっかり抗えなくなっている。また過去10年間にHODINKEEで取り上げた時計を振り返ってみると、現在私たちはカラー・ルネッサンスの渦中にいるのではないだろうかと思う。というのも、ここ最近で特に膨大な量のカラーウォッチが市場に登場しているように思えるからだ。そして6色(もしくは芸術、物理学の観点から黒をどう見るかによって変わってくるが)からなるカラーバリエーションは、この時計をもう1度見直すに十分な動機となるだろう。
ペリフェラルローターのデザインにはいくつかの欠点があり、その主なものとしては時計の文字盤のバランスがしばしば崩れてしまうことが挙げられる。ローターがムーブメントの端を占めるため、時計の直径を大きくするか、輪列のレイアウトに変更を加える必要があるのだ。センターセコンドの場合は、まあ、4番車はしばしば文字盤の端ではなく中央寄りに配置されることになる。これは1度気づいてしまうと無視できない問題だ。ヴィンテージウォッチも現行モデルもその多くがバランスを微妙に崩してしまっていて、購入を検討するほど気に入っていたとしても私がなんとなく踏み切れない原因となっている。
カール F. ブヘラは、このアンバランスなデザインから目をそらさせるか、あるいはデザイン上の特徴に変えるために、いくつかのスマートな工夫を凝らした。シリーズの大半は円形のヘアライン仕上げが施されたカラフルな文字盤を持ち、光の加減で輝きや色の移り変わりが楽しめるようになっている。また6時位置のスモールセコンドは文字盤の表面からややくぼんでいるが、それを隠すのではなくデイト窓とマッチするブラック仕上げにすることでコントラストを演出した。これによりスモールセコンドの配置に注意を向けるのではなく、視線を前後に移動させるような形でふたつの要素のあいだに絶妙な緊張感を与えている。


そして楔形のインデックス(大半の文字盤にロジウムメッキが施されている)はほとんどのブランドが採用するよりも少し長く、あるいは少し太く感じられる。これはスモールセコンドとのコントラストも要因としてあるかもしれない。このインデックスは視線を文字盤の中心に集め、うまくバランスを整えるのにひと役買っている。これは文字盤のデザインとしてただ数色を用意しただけではないことを示す巧妙な手法だ。

ケースはこれまでと大きく変わっていない。全体はステンレススティール(SS)製で直径は40.6mm、厚さは11.2mmとなっている。私の感覚だと、このような時計はもう少し厚くあるべきだと思う。この点ではやや優雅さに欠けており、ほか部分の塾考されたデザインとは噛み合っていないように見える。しかしケースはよくデザインされており、美しいシェイプ、ラグの繊細な面取り、ハイポリッシュ仕上げとサテン仕上げの組み合わせ、さらにはリューズ周辺のケースにはわずかな隆起まで施されている。リューズガードというには少しもの足りないが、デザイナーが少なくとも何か違うことをしようとしていたことを示し、デザイン全体にアクセントを加えている。

サファイアクリスタルのケースバックでムーブメントの技術を見せたいというカール F. ブヘラの意向は理解できるが、この時計の新しいデザイン言語はスポーティであり、30m防水という数字には首をかしげざるを得ない。この時計からはスポーツウォッチではないにしても、スポーティに使って欲しいというメッセージが読み取れる。それは文字盤とケースの比率によって実寸の40.6mmより大きく見えるせいかもしれないし、 ブランドが掲げるカラフルなラインナップのせいかもしれない。だが私は30m防水は失敗だと強く感じている。

よりスポーティな時計やドレッシーな時計が欲しい場合、カール F. ブヘラのラインナップにはほかにも選択肢があるのは確かだ。しかし、あと20mでも防水性が高ければ、この時計は同ブランドの隙間を埋めるほぼ完璧な選択肢になるだけに、この問題は悔やまれる。そしてマネロ ペリフェラルのなかでさえもこの時計がすべての役割を果たせるわけではないことは承知したうえで、可能な限りのものをカバーしていることをカール F. ブヘラがほのめかしているかのように思える。
 “タキシード・ツインズ(タキシードの双子)”と呼ぶことにした時計は、その一例だ。パンダ文字盤とリバースパンダ文字盤(ともに針とインデックスにローズゴールドを使用する)のこの2本は、2016年に発表されたマネロ ペリフェラルのドレッシーなバージョンを懐かしむ人々のために用意された答えのようである。SS製で、前回のローズゴールド製よりも手に取りやすい価格(ほかのモデル同様に税込119万9000円)であり、特にカフスに少し余裕のあるシャツを着ている人ならタキシードウォッチとしても使えるだろう。しかし私は、カール F. ブヘラがこの時計を必ずしも何かに偏ることのないバランスの取れた立ち位置に置いていることの表れだと考えた。

アイスクリームも一緒に食べられますよ、なーんてね!

僕が帆船やヨットに乗ったり、ボートを漕いだりするのにいちばん近い活動といえば、近所のジムでローイングマシンを使って1週間分のファーストフードのカロリーを消費することくらいです。では、ボートに乗らない僕が、なぜボートのスタートタイムを測ることに特化したレガッタタイマー付きの腕時計が好きなのでしょうか? それはティソ シデラルのように楽しくてカラフルな時計なら、それだけで楽しめるからです。
ティソ シデラル S(レッド)
僕が今回取り上げる新生シデラルは、実はティソが1969年に発表したオリジナルモデルの後継モデル(1971年登場)、シデラル Sの現代解釈モデルです。オリジナルモデルはグラスファイバー製でカラフルなケースでしたが、この新バージョンはカーボンとステンレススティール製のケースです。ケースは主にブラックですが、ダイヤルにはオリジナルモデルよりも多くのカラーが使われています。全体的にかなりニッチな外観ですが、腕時計の世界では、多くの色が使われることに抵抗はない人も多いのではないでしょうか。
色使いといえば、シデラルには3種類のカラーバリエーション(レッド、ブルー、イエロー)があり、いずれもダイヤルカラーに合わせたラバーストラップが付属します。この猛暑続きの夏には、3色ともよく似合うと思いますよ。シデラルの水上競技の出自に興味がなくても、この派手な色使いは身につけていて実に楽しいと思います。屋外での料理やプールパーティにこの時計をつけていく自分が目に浮かびますが、毎日つけたい場合もぜひ試してみてほしいですね。もちろん、押し付けませんよ。
ティソ シデラルの詳細については冒頭の解説動画をご覧ください。撮影ではこの時計でボートレースのタイムを測ることはありませんでしたが、この時計ですることになっているアイスクリームを楽しむ映像を差し込んでいます。え、冗談だって? では、ティソの広告をご覧ください。
このモデルのように、僕もシデラルを着用しながらアイスクリームを楽しみました。

ベル&ロス BR-03コレクションの新作“BR-03 GMT コンパス”が登場した。

世界限定500本【探検家仕様“GMT×コンパス”ツールウオッチ】ベル&ロスの人気モデル“BR-03”コレクション新機軸。

ツートーンベゼルと方位計目盛り付き文字盤によって方位を示すことが可能。コンパスの馴染み深いデザインとGMT機能の実用性を兼ね備えた、これまでにない革新的なモデルと言えるだろう。

Ref.BR0393-COM-ST/SRB。SS(42mmサイズ)。100m防水。自動巻き(Cal.BR-CAL.303)。世界限定500本。67万1000円

新作の“BR-03 GMT コンパス”は、ナビゲーション計器に着想を得て、ブランドの探求心をさらに深めた新機軸と言える数量限定モデルだ。

コンパスをモチーフとした文字盤、ツートン仕様の24時間表示ベゼルを備え、GMT機能を応用することで簡易方位計としても使用可能。

文字盤にはコンパスの針を模したダイヤモンド型のGMT針が装備され、24時間表記のベゼルと組み合わせることで第2時間帯を読み取ることができる。

【画像6枚】コンパス文字盤が存在感抜群、“BR-03 GMT コンパス”を別アングルから見る

“BR-03 GMT コンパス”のアイコンとなっている文字盤に施された方位計のモチーフは、単なる装飾でなく、実際のナビゲーション機能を備えている。晴れた日には、コンパスローズの目盛りと第2時間帯を示す24時間表示のGMT針を用いることで、方位を簡単に知ることが可能だ。

GMT針は、伝統的な磁気コンパスの針と同様にダイヤモンド型をしており、文字盤のフランジには、6時、12時、18時、24時の位置に東西南北の4方位が記されている。

太陽の位置を利用して方位を確認する場合は、時計を地面と平行に水平に保った状態で、まず、GMT針を太陽時に合わせる。

たとえば、夏のジュネーブでは太陽時は公式時刻より2時間遅れており、午後2時の公式時刻は太陽時では正午となる。次に、赤い針を太陽の方向に向けることで、文字盤の目盛りを使って方位を読み取ることが可能だ。

ムーヴメントは、54時間パワーリザーブの自動巻きキャリバー、BR-CAL.303を搭載。ラバーベルトまたはベルクロ式ベルトが選択可能で、世界限定500本。価格は67万1000円だ。

ユリス・ナルダンの最新作となる、ブラスト フリーホイール マルケトリが発表された。

本作のベースとなったフリーホイールは2018年に発表されたシリーズ(その後2021年にもバリエーションが登場している)。スケルトナイズされたダイヤルで、宙に浮いているかのようなトゥールビヨンやパワーリザーブインジケーターが動くのを視覚的に楽しむことができるモデルだ。これらのモーションは、革新的なボックスドーム型サファイヤクリスタルの採用により、ケースサイドからも見ることができる。

 本機は香箱や減速車、中間車やパワーリザーブディファレンシャル(差動装置)といった歯車がむき出しになったとてもユニークなモデルだが、特筆すべきはいずれも“くの字”の形を持つ、4時位置の7デイズパワーリザーブインジケーターと、6時位置のフライングトゥールビヨン機構だろう。
 パワーリザーブインジケーターは、弧を描く3本の帯の上にある三角マークが役割を果たし、パワーリザーブの残量が少ないときは、そのマークが1本の帯を指し示す。またフライングトゥールビヨンには、従来のスイス製レバー脱進機に取って代わる、ユリス・アンカー・コンスタント・エスケープメントを採用。これは金属や合成ルビーの代わりに、低摩擦性と柔軟性の作用を持つシリコンブレードを取り入れた、ユリス・ナルダンならではのものである(この機構は2015年のGPHGでトゥールビヨン部門賞を受賞している)。
 ここまではブラスト フリーホイール全体の特色についてお伝えしたが、本モデルを限定たらしめるのは、その宙に浮いているかのようなムーブメントの下と(12時位置の)香箱を華やかに飾る、“マルケトリ(寄木細工)”ダイヤルだ。


 103枚のシリシウム製ブルータイルから成る寄木細工は、時計でありながらまるで芸術作品かのような印象を与える。2種類の厚み(0.30mmと0.35mm)でつくりあげた寄木細工に、マット仕上げ(濃いブルーのほう)と鏡面仕上げ(薄いブルーのほう)を施し、さらにそれをミクロン単位で精緻にセットすることで、角度によって変容する反射とコントラストを生み出し、作品の立体感を際立たせる。
 これらの作業のもと、小さくて薄いシリシウムプレートを組み立てて1枚の文字盤を完成させるには、熟練の職人が膨大な時間をかけて作業に専念しなければならない。
 ブラスト フリーホイール マルケトリの裏にはマット仕上げのブルーシリシウムプレートが収められており、それを覆うサファイアクリスタル製シースルーバックからそのシリシウムが鑑賞できる。

ファースト・インプレッション

ユリス・ナルダンと聞いたらまず、ダイバーやマリーン(マリンクロノメーターがブランドのルーツ)といった、海と関わりの深い時計を思い浮かべるかもしれない(私はそうだった)。その点ブラストシリーズに属するのは、天文時計のムーンストラックやデュアルタイム、そして今回紹介したフリーホイール(トゥールビヨン)などであり、複雑機構をメインに展開しているように見受けられる。そのバリエーションは幅広くあって、ブランドが海にまつわる時計以外にも力を入れているのがわかる。
 ただ今日発表されたブラスト フリーホイール マルケトリは、海のように真っ青だ。この青い寄木細工の仕上げをマットと鏡面にわけているため、時計を動かすたびにまるで海面で揺らめく波が光を受けたようになるのだろう。ただ、私はまだ実機を見ていないため、これはあくまでも想像に過ぎない。加えてブルーのベルベット調防水ラバーストラップのオプションが用意されている。新作の防水性は30mなので海の中に持ち込むことはおろか、手を洗うときも少し気を付けなければいけないのに、ストラップまで防水性を意識しているのだ。
 私にはこの新しいブラストコレクションが、ダイバーやマリーンのいる海のほうへと歩み寄っているように感じてならない。もちろん、ブラストには既存のブルーダイヤルはたくさんある。けどこれは裏側までもが青いのだ。私はそう思ったが、みなさんの意見はどうだろう?
 ケース径は45mmと、既存のブラスト フリーホイールより1mm大きくなっているが、そのぶんこのマルケトリダイヤルを手首の上でたっぷりと堪能できると考えれば1mmの誤差は気にならないだろう。私は、芸術的なタイムピースは大きければ大きいほうがいいという考えだ。
 まあこのマルケトリが実際どれほど綺麗な輝きを放つのか、実物を見てみなければわからないので、今度機会があれば拝見したい。

基本情報

ブランド: ユリス・ナルダン(Ulysse Nardin)
モデル名: ブラスト フリーホイール マルケトリ(Blast Free Wheel Marquetry)
型番: 1760-401-3A/3A

直径: 45mm
厚さ: 12.04mm
ケース素材: ホワイトゴールド製ブラストケース(ウルトラボックスドーム型サファイアガラス)
文字盤: メティエダール(ブルーのマット&鏡面仕上げのシリシウム製マルケトリ)
夜光: 針にスーパールミノバ
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブルーのベルベット調防水ラバーストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: UN-176
機能: 時・分、パワーリザーブインジケーター、フライングトゥールビヨン
直径: 37mm
厚み: 6.95mm
パワーリザーブ: 約7日間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時
石数: 23
追加情報: ユリス・アンカー・コンスタント・エスケープメント搭載

価格 & 発売時期
価格: 税込で1916万2000円(2023年9月からの新価格)

シチズンは、レディースウオッチブランド“CITIZEN x C(シチズン クロスシー)”から限定モデルを発売する。

光発電エコ・ドライブ搭載【“シチズン クロスシー”数量限定モデル】満開のカメリアを文字盤で表現。

シチズン クロスシー
hikari collection エコ・ドライブ電波時計 ティタニア ハッピーフライト 限定モデル

本作は、艶やかな白蝶貝の文字盤には、満開のカメリアをイメージした繊細なエッチングパターンを施し、花びらの上に光が宿るようなドットパターンが特徴。文字盤にはラボグロウン・ダイヤモンドを5ポイントあしらうほか、外周にピンクのグラデーションをプラスした。

ケースとバンドには、軽量かつ肌に優しいスーパーチタニウムを採用し、その表面にはシチズン独自のサクラピンク®のデュラテクト加工を施す。これにより、ステンレスの約5倍の硬度を誇る耐傷性を備えながらも、デザイン面では柔らかく温かみのある色合いを実現。さらに、ケース径27mm、厚み8.2mmと軽やかなサイズ感なので、腕元に自然となじんでくれる。

また、搭載ムーヴメントは、光発電エコ・ドライブ電波時計のキャリバー“H060”。フル充電時には約3年間の駆動が可能で、日本やヨーロッパなど世界4エリアで標準電波を受信。正確な時刻に自動修正する。

さらに、ワールドタイム機能や永久カレンダー、サマータイム設定など、多彩な機能を搭載し、旅行やビジネスシーンにも対応する。

このほか、5気圧防水や夜光針、1種耐磁時計など、デザイン面のみならず日常使いに求められる実用性も充実している。なお、販売価格は14万8500円。世界限定1300本となる。

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Re:ブレゲTradition後の世まで伝わるシリーズの7097が自動的に逆で秒針の腕時計を跳びます
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