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2025年09月

ブランド誕生から50周年を迎え、クレドールが新たな幕を開けた。

第1弾として選ばれしは、新しいクレドール ゴールドフェザー。かつて世界最薄を誇ったムーブメントを搭載した薄型ドレスウォッチだ。ラグジュアリースポーツが全盛のいま、新たなドレスウォッチはどこを目指すのか?

ゴールドフェザーの歴史とは、すなわちセイコーの薄型メカニカルの原点であり、いまもその象徴である。始まりは1950年代。日本の時計産業が戦後復興から再び活気を取り戻し、世界を目指した時代だ。

当時、品質と機能の実証としてまず求められたのは精度だった。国内でも国産時計品質比較審査会が開催され、さらにその先にはスイス天文台クロノメーターコンクールがあった。こうした高精度を追求したのがグランドセイコーだ。そしてその一方で対抗軸にあった薄型を追求したのが、セイコー ゴールドフェザーである。何故、薄型が重視されたのか。それは精度と同様に技術力のアピールだったから、とセイコーウオッチの商品企画、神尾知宏氏は言う。

50周年記念 ゴールドフェザー U.T.D. 限定モデル(写真右)と、そのダイヤルのモチーフになったゴールドフェザーを源流にする1970年代の「セイコー特選腕時計」の薄型ドレスウォッチ(写真中。コレクター所蔵品)。当時はこれと同じダイヤルとムーブメントを用いた提げ時計(写真左。セイコー ミュージアム 銀座所蔵)もあった。

「薄型化は、高度な設計と製造、さらに組み立てや調整の匠の技能が合わさった総合的な技術です。当時、世界に誇る製品を目指し世に送り出そうと高まる気運がグランドセイコーとセイコー ゴールドフェザーに注がれ、とくに後者が搭載したCal.60は、中3針の手巻き式で当時世界最薄の2.95mmを実現したことで、精度と並ぶセイコーの技術力の象徴となりました」

 その開発思想は継承され、1969年に2針化した1.98mm厚のCal.6800(Cal.68系)として結実した。搭載したのが名機、セイコー U.T.D.(Ultra Thin Dress)だ。このCal.68系は、その後もアップデートを重ねながら、クレドールを代表する薄型ムーブメントとして今なお進化を続ける。
 いわば精度が数値化される技術であるのに対し、薄さはよりフィジカルに即した技術といえる。前述した総合力に加え、デザインにも視覚に訴える薄さの演出がなされた。外装設計担当の石田正浩氏が解説する。

 「(オリジナルのゴールドフェザーは)薄型ムーブメントに加え、ケースをより薄く見せるため、風防を切り立てる一方で、サイドを薄く仕上げていました。さらに裏蓋をすり鉢状にして肌との接触面を減らし、薄く感じるようにしていたのです。ラグも正面は極力細くしていますが、見えない側面や根本を厚くすることで強度と耐久性を与えていました」

 新開発の薄型ムーブメントを始め、こうした細部にいたるまで多くの創意工夫を盛り込み、オリジナルのゴールドフェザーは完成した。羽根のような美しさと触れた時の軽やかさを目指した、その名にふさわしい薄型ドレスウォッチだったのだ。

ブランド創成期の薄型ドレスをオマージュした、新時代のゴールドフェザー U.T.D.

セイコー ゴールドフェザーは1960年の誕生から、その役割を1969年に登場した高級時計コレクション「セイコー特選腕時計」へと引き継いでいった。そして1974年に「セイコー特選腕時計」はセイコーの上位ブランドのひとつとして独立。それが現在のクレドールである。ブランド誕生50周年を記念して今年発表されたクレドール ゴールドフェザーU.T.D.限定モデルでは、70年代当時の薄型ドレスウォッチのダイヤルをモチーフとした。

クレドール ゴールドフェザーU.T.D.限定モデル GCBY995

1974年のオリジナル。
 限定モデルのデザインのもととなったオリジナルは、ケースとラグが一体化したシェイプの正面をフラットに仕上げ、切り立ったボックス状の風防をベゼルリングが囲む。裏蓋は縦方向の平面からサイドラインに向かって傾斜をつけ、薄さをより演出していた。これに対し、限定モデルはボンベダイヤルをケース全面に広げ、初代セイコー ゴールドフェザーを範に取る全体に柔らかで優美なフォルムだ。ラグはテーパーをつけ、面取りしたモダンなスタイル。シースルーバック仕様にも関わらず、8mmという薄さを実現したのは新開発のケース構造にある。
 「当時は非防水(編注;ゴールドフェザーのオリジナル)でしたが、日常生活防水にするためにはパッキンなどでのシーリングが必要で、そのため本来ムーブメントの周囲にある中枠をケースと一体化しました。さらにボンベダイヤルの採用には、ケース内側の底部をコンマ数ミリレベルですり鉢状にし、中枠を省いても強度を担保し、収納位置もより下げたのです」(石田氏)

50周年記念 ゴールドフェザー U.T.D. 限定モデル

GCBY995 121万円(税込)

ケースにはステンレススティールを採用する。これも1979年にクレドールがそれまでのプレシャスメタルからSSを採用し、より多様性のあるドレスウォッチとして独立ブランドになった経緯を踏まえれば、記念限定らしいオマージュなのである。世界限定100本。4月19日(金)発売予定。
 中枠のケース一体化には、加工を含め新たな作り方やプロセスも開発したという。これも手作りに近いクレドールだからこそできたといえる。

 最大の特徴であるダイヤルは、横ストライプに雪氷のようなテイストを施したオリジナルに対し、限定モデルではボンベ形状に繊細な和紙や絹糸を思わせるテクスチャー感で仕上げる。そして共通する極細のローマ数字のインデックスについて神尾氏はこう説明する。

 「これは当時の印刷技術を現代的に継承するべく復活させました。プリントは交差部分や角ほど印刷がつぶれやすく(インクが溜まりやすいため)、それを想定したセリフ(書体の端飾り)に補正してすっきりと見せるなど、これまでのデザイナーたちが培ってきた経験とノウハウを注ぎました。一方、当時に比べると現代では多版を重ねることができるようになったので、数字はより立体的になっています。繊細なインデックスに合わせて針はドーフィンにセンターラインを記し、視認性を上げました。

 手に取ったあとの気づきがあってこそ、愛着につながる。そうした思いから、クレドールは正規販売店として認定されたクレドールサロンや、クレドールショップでのみ購入が可能だ。特にブランド50周年を迎えた今年は、例年以上にその世界観の訴求に力を注ぐという。伊勢丹 新宿店のクレドールショップが、ブランドの世界観をより一層体現し体感できるクレドールサロン(3月27日より)として生まれ変わったこともその一環で、リニューアルに伴い4月4日~4月30日にかけてフェアを開催している。そこでは、本稿で紹介した50周年記念 ゴールドフェザー U.T.D. 限定モデルがサンプル展示されるほか、対象商品を購入することでビスポークストラップ(※)かオリジナルノベルティが進呈される。クレドールの世界へ没入するのに、またとない機会となるだろう。

※対象モデル購入で、好きな素材・色から選べるセミオーダーストラップをプレゼント(納品までは6カ月程度の時間を要する)。 対象モデルについては売り場スタッフまで。ゴールドフェザーSSモデルの場合は、美錠も付属。

IWCは本日、ブランド初となるセキュラーパーペチュアルカレンダーを発表し、特別な領域へと踏み入った。

この超高精度なカレンダーキャリバーは、過去に4回しか設計されていない。このカレンダーは、2400年までの、各世紀の始まりまでスキップされるうるう年までも調整する。ただそれよりもすごいのは、彼らがムーンフェイズの精度の記録を4500万年にわたって正確に表示するという新記録を打ち破ったことだろう。そして、本日発表されたほかの新しいポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダーと、基本的に同じケースサイズという次元でそれを行ったのだ。

ここで最大の功績を選ぶのは難しい。昨年まで、セキュラーパーペチュアルカレンダーモデルを作っていたのは、パテック フィリップの懐中時計Cal.89、スヴェン・アンデルセンのパーペチュアルセキュラーカレンダー、そしてフランク・ミュラーのエテルニタス メガ 4の3ブランドだけだった。4年ごとに、カレンダーに1日を追加する普通のスケジュールでは、太陽の周りを回る地球の自転の正確な偏りを考慮することができない。セキュラーパーペチュアルカレンダーは、うるう年が“00”で終わる年には1日を追加しなければならないが、400で均等に割り切れる年にはスキップされないという事実を考慮に入れている。その後、ドミニク・ルノー氏とジュリアン・ティシエ氏による新進気鋭のファーラン・マリにて、信じられないほどシンプルなセキュラーカレンダーモジュールがリリースされ、人々を驚かせた。これは普通のラ・ジュー・ペレ社製G100ムーブメントを、Only Watch 2023のために、世界で最も挑戦的なコンプリケーションのひとつへと変貌させたものだ。いまやIWCも、パーペチュアルカレンダーの精度を保証する新しい400年歯車を備えた時計を発表し、このカテゴリーに加わった。

プレビューで公開されたプロトタイプ。Photo by Mark Kauzlarich
IWCを象徴するダブルムーンディスプレイは、北半球と南半球のムーンフェイズを表示し、4500万年という精度を誇る。これは以前までの記録保持者であるアンドレアス・ストレーラー ソートレル・ア・リューン・パーペチュエル 2M(206万757年経過すると調整が必要)の精度をはるかに上回る。そして同社のムーンフェイズ表示で最も精度が高いのは、577.5年に1回の調整で済む、2003年発表のポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー(Ref.IW5021)であった。IWCはスーパーコンピューターを駆使して、22兆通りの歯車の組み合わせをシミュレートし、結果3つの中間ホイールを使った新しい減速歯車列を完成させた。
 これらはすべて、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げが混在した44.4mm径×15mm厚のプラチナケース(技術的にはほかのポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダーより0.1mm厚い)に収められている。文字盤はガラス製で、その裏面はフロスト仕上げとホワイトのラッカー仕上げが施してある。ガラス製サブダイヤルはそれぞれ文字盤に固定されてから印刷される一方、文字盤装飾は手作業で植字。またこの時計は、表と裏にダブルボックスサファイアが施されている。IWC ポルトギーゼ・エターナル・カレンダーは限定版ではないが、“価格要問合せ”となっているため、8桁はくだらないだろう。

我々の考え
IWCの歴史は、クルト・クラウス以前と以後の2つの時期にわけることができる。元主任時計師であるクルト・クラウスは、1985年、同社初のパーペチュアルカレンダーである“ダ・ヴィンチ”を開発・指揮を執り、デビューを飾った。それ以来、彼らはスプリットクロノグラフを備えたパーペチュアルカレンダー、グランドコンプリケーション(ミニッツリピーターを追加)、そして“イル・デストリエロ・スカフージア”(トゥールビヨンを追加)などを製造していった。しかしこの時計はクルト・クラウスから始まった、40年近くかかった開発の集大成である。それだけでも祝うに値する。しかし、 それを(比較的)装着可能な44.4mm径×15mm厚のケースに入れたこともまたひとつの成果だ。もしポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダーを探しており、(非常に大きな)アップグレードのための資金があるなら、この新しいエターナル・カレンダーを買わない理由はないだろう。

プロトタイプを装着。Photo by Mark Kauzlarich
私が見たプロトタイプは、ガラス製ホワイト文字盤のコントラストがほとんどなく(特にプラチナケース)、全体的なデザインにあまりメリットを与えていない。残念なことに最終的な変更がまだ加わるため、あまり撮影することができなかった(裏蓋の撮影はNGだった)。IWC側も、最終的な構造を見せるためのムーブメントイメージをまだ共有していない。


ガラス製の文字盤にもかかわらず、正面から見ると、開口部で示されない限り、興味深いものを見ることはできない。細い針も文字盤上で見失いやすく、アプライドシルバーの数字は(針と同様)青くしたほうがよかっただろう。IWCのこの大胆な成果に対しては、ほかのポルトギーゼにはないサテン仕上げやカラーエナメルを使用した、より伝統的な文字盤デザインが適していたかもしれない。そうすれば、フローティングガラスのサブダイヤルは、この時計の特別な性質を際立たせるのに十分だったかも。しかし、IWCは彼らの大きな成果をひとつの形だけで存在させるようなことはしないので、私がもっと気に入るようなバリエーションが将来出てくることを期待している。待っていても最初のモデルは手に入らないが、それは間違いなく、コレクション性の高いものになるだろう。

基本情報
ブランド: IWC
モデル名: ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー(Portugieser Eternal Calendar)
型番: IW505701

直径: 44.4mm
厚さ: 15mm
ケース素材: プラチナ
文字盤: ガラス製、ホワイトラッカー
インデックス: ロジウムメッキの針とアプライドインデックス
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: サントーニのブラックアリゲーターストラップ、プラチナ製フォールディングクラスプ


ムーブメント情報
キャリバー: 52640
機能: 時・分・スモールセコンド、セキュラーパーペチュアルカレンダー(日付、曜日、月、4桁の年表示)、4500万年精度の永久ムーンフェイズ北半球と南半球の両方に対応)、不規則なうるう年を認識する400年歯車、スモールハッキングセコンド
パワーリザーブ: 約7日間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 54
追加情報: サファイア製ダブルボックス風防(両面反射防止加工)

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